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41.人間の『絶望』の感情は悪魔にとって何よりもご馳走だもんね(side:キャロット)

絶望は悪魔だけでなく大魔王様にとってもご馳走の可能性があったりなかったり……

 SAN値が0となったケバブは発狂した。

 狂ったように“混沌”から逃れようとするも、背後の空間から新たに伸びてきた無数の闇の手にがしっと掴まれた。





「やめろぉぉぉおぉぉぉおぉやめてくれぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!!!!」




 抵抗するも闇の手はがっちり掴んだまま離さず、ゆっくりとケバブを背後の空間へと引きずりこんでゆく。


 一思いにではなく、少しずつ少しずつ……


 あえて焦らすように、より強い絶望を引き出させるかのごとく身体を“混沌”の中へと引きずり込んでゆく。


 そんなケバブを“キャロット”は笑いながら見つめていた。



「あっはっはっはっはっはっはっは!!そうそう、それがみたかったの!!こういった人間の『絶望』の感情は悪魔にとって何よりもご馳走だもんね~~~」


 至福顔でしばらくの間、何かを粗食していた“キャロット”だったが、このまま放っておけば発狂死してしまう可能性がある事に気付いた。

 SAN値直葬は想定内だが、発狂死は彼女にとって想定外なのだ。



「おっと、ついつい食事に夢中となりすぎて目的を忘れてるとこだった。危ない危ない」


 彼女の目的はケバブを殺す事ではない。“悪夢”の中に取り込んで力を奪い取ることだ。

 別に殺してから奪う事もできないことはないが、“キャロット”はケバブを殺す気が一切ないのは事実。




「じゃ、これでフィナーレとしよっかな」



 パチンっと指を鳴らすと、闇の手たちは心得たっとばかりに一瞬でケバブを飲み込んだ。

 飲み込み終わると同時に空間も元に戻った。


 そこに残ったのは……一人たたずむ悪魔のみであった。







“さてっと……後はじっくり料理だけど、その前にアシュレお姉ちゃんに説明にいこっかな。お兄ちゃんから頼まれたものもあるしね”


 本来なら蹴飛ばしてもいいような依頼だが、今回の一件はアシュレの協力あってこそだ。

 彼女が『現実』と『夢』を繋いでくれなければ、ケバブを“深淵”に誘いこめなかった。


 少なくとも、エクレアには内密で事を進める事が出来なかった。


 今回の件はエクレアに知られるわけにはいかない。

 知られたら確実に反対される。止められる。


 だからこそアシュレを利用させてもらったのだ。


 なのでこれはそのための礼だ。


 “キャロット”は倉庫から手ごろな呪物を一つ選んでアシュレの元へ向かうのであった。














……………………




「とまぁ、そんなわけでケバブお兄ちゃんはSAN値直葬となりました」


 エクレア?は“深淵”内で起きた出来事を一通り話し終えた。

 ケバブの最期の姿を伝えた。くすくす笑いながら伝えた。


 それを聞いたアシュレは……


「くくく……わかった。なら私は悪魔に『絶望』ってやつみせてあげる」


 笑ってるけど、全く笑ってない目でエクレア?を睨みつけた。





ゾクリ






 その雰囲気に押されてか、エクレア?は言いようのない寒気が走り、第六感ともいうべき勘が全力で警戒を鳴らし始めたのだ。



 ……“キャロット”は生まれながらの悪魔なこともあって人間の感情に疎かった。知識として感情がどういうものか知ってはいても、それがどのような行動を起こす原動力になるかを測り損ねていた。


 つまリ、“キャロット”は人間の恐ろしさを……後先考えない人間の恐ろしさを読み間違えていたわけだ。





 いろいろな感情が爆発していた彼女は半ば自棄になって解き放とうとする。


「や、やめて……それだけはやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!世界が終わっちゃうぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅ!!!!!!」


 アシュレが何をする気か、直前に気付いた“キャロット”は止めようとするも……行動が数秒遅かったようだ。


 止めようとした手……自身の手だけではない、“深淵”を具現化させた闇の羽や影の手を総動員させてアシュレまで伸ばすも……



 それらの手が届くことなく……








 解放された。







 先ほどアシュレに渡した袋の中身を……



 姿をさらけだした瞬間、世界が終わる……






 夢の国の王様を模したぬいぐるみ












 ミッk
























ぷつん























投げっぱなしのままで第7章終了である……


次回から第8章が始まる……といいなぁ(と~いめ)

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