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34.ただし両親、てめーらはダメ(side:アシュレ)

現地人なのにどこでこんな言葉を知ったのか不思議である……フシギフシギ

 悪魔は常人の目で見る事は敵わない、不可視の生物だ。

 人の心に取りつき、堕落へと導く存在。

 絶望を食らい、悲しみの涙で喉を潤すと言われる人の世の天敵。


 魔王の出現には悪魔が関わってるという説まであり、悪魔に憑りつかれたものは害悪をばら撒かれる前に殺す決まりであった。

 それこそ魔女裁判にかけてまで探し出してたぐらいだが、魔女裁判そのものが社会を混乱に導く悪魔の仕掛けた罠だった可能性を支持された今は“悪魔憑き”を理由にした処断は表向き禁止とされている。


 裏では相変わらず……な可能性はあれど、悪魔の弱点とされる『聖水』に苦も無く触れる事が出来るアシュレは正式に悪魔憑きでないと証明されている。


 それでも根暗な雰囲気や神聖魔法を扱えないっという理由で“悪魔憑き”の疑惑はいつまでも消えなかった。




「くく……こんな事故物件な私を拾ったケバブはとんだお人よし」


 アシュレとしては別に冒険者となるつもりはなかった。

 実父にとってアシュレの存在はビショーク家の正当な当主である母の血筋だ。愛人との子供を跡継ぎにするため、何が何でも消えてほしい存在だろう。それこそ禁止されている魔女裁判を持ち出してくるだろう。


 今更貴族に戻る気がないアシュレはあえて孤独の道を選んだ。

 母の死とその娘の存在をどこからか聞いて来た母の姉らしき者から養子として引き取る話も断り、成人後は一人……どこか山奥にでも引っ込んで隠者生活をしようと思っていた。

 山奥で薬草を育てながら薬を作り、不定期に街へ降りては薬を卸して山奥で手に入らない生活必需品を購入する。


 そんな生活……ケバブが言うには定番のスローライフというものを送ろうと思っていた矢先に、ヒーラーを求めて教会へと訪れたケバブと出会い……



“君を仲間に加えたい”



 ケバフはアシュレを見るなり勧誘したのだ。

 他の有能そうな者には目にくれず、図書室で一人静かに本を読んでいたアシュレを一目見るなり、駆け寄って勧誘してきたのだ。



 当然周りの反応は散々である。

 忠告はまだいい方、酷い場合は肉奴隷とか性欲を満たすだけの存在とか散々な言われようだったが、ケバブはそれらの声を一蹴。

 あくまで対等な仲間としてスカウトする気満々だったわけだ。


 その理由は()()()()()()()()(強調)でこっそり教えてくれた。

 ケバブは勇者にしか使えないとされる『鑑定』の魔法が使える事を……

 アシュレには国内だと南の辺境で土着的に伝えられている希少な精霊術を操る才能があることを教えてくれたのだ。


 アシュレはケバブの教えに沿って精霊術師になった。

 数少ない精霊の概念が書かれたであろう資料を探し出し、そこから精霊の実態を知って魔法を覚えた。



 だが、それでアシュレの環境が劇的に変わったわけでない。

 アシュレとしては魔法を覚えたからといっても、今までの評価を払拭したい、見返したいとは思ってなかった。

 むしろ無能から有能になった事でさらなる妬みの対象となりかねないというか、自分の血筋の事もあって大騒動が起きてしまう。


 特にケバブから勧誘を受けた時期のビショーク家は厳しい立場に追いやられてるのだ。そこでアシュレが有能だと知れたら……



「被害者である義妹ぐらいは助けてもいい。ただし両親、てめーらはダメ」



 そういうわけでビショーク家の耳に入らないよう、ケバブ達が貴族のごたごたに巻き込まないよう適当な時期に追放を言い渡され、その後は予定通り田舎へ引っ込もうと考えるも……

 


 その目論見は上手くいかなかった。


 最初はケバブがいつアシュレを見捨てるか、いつその日が来るかっとある意味ねじ曲がった思惑で同行していた。


 だが、予想とは裏腹にケバブは見捨てなかった。どれだけ嫌がらせしても、トラブルを起こしてもケバブはアシュレを追い出そうとしなかった。


 それはアシュレだけでなくクラヴァやレヴァニ相手でも同様だ。苦言こそ出しても愛想はつかさない。クラヴァやレヴァニも自分が常人と違うはみ出し者という自覚があるのか、同種のアシュレを嫌う事なく仲の良い友人感覚で接してきた。教会で孤立していたアシュレにとって、初めて得た同年代の友ということもあって、いつしかアシュレは3人を友人として……仲間として接するようになった。


 そんな個性的な女の子3人を取りまとめるケバブをにアシュレはこう称している。



『超が付くほどのお人よし』

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