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31.後は勇気で補えばいい

勇者の王様の偉大な迷言?であるw

一応嘘は言ってない

「そんなわけで、エクレアのようなイレギュラーが現れたのをきっかけに冥府が動いた。奴等は裏で着々と奴を追い詰める算段を行ってるし、私も私で奴のやらかした案件の証拠を業務の傍ら集めてる最中だ。よって奴の失脚は秒読み段階」


 ブラッドは自信満々に、機嫌よく語るもケバブはそれがフラグのようにみえていた。

 特に『もう一人の俺』が確信に近いぐらいの失敗を予感させていた。


「それ、本当に上手くいくと思ってるのですか?」


 上手くいくのか……

 その言葉に対して上機嫌であったブラッドのこめかみがピクリと動く。


「思っている。少なくとも冥府の権限は神と同等。賄賂や言い逃れはできまい」


「俺の前世が知る物語ではその万全に築かれた包囲網をあっさり瓦解させるなんてよくあるんですよ。理由は第三者的な権力機関の介入があったり、内部に裏切り者がいたり……とかですね」


「ふむ……言われてみればありうるかもしれんな。あれはあれで長年『神』として鎮座してたわけだ。こういった危機を何度も潜り抜けてきた可能性がある。調査はもちろん、包囲網を破られた時用の手は打っておいた方がいいかもしれないな」


「ただ俺としては包囲網が瓦解した時、最大の危機が去って油断してるその時を狙うのがいいと思うんです。エクレアちゃんの内に眠る真の力で……」



 先ほど偶然知ったエクレアの『力』だが、条件を満たして解放される真の力は絶対的な強者たる神に対しても通用するであろうチート中のチート。


 こわっぱな神どころが上位の神すらも絶望のどん底に叩き落とせる、まさに切り札とも言うべきもの。

 上手く切れば包囲網を切り抜けて高笑いしてる神、最大の脅威を取り除いて慢心中な神に対して絶好のざまぁを食らわせられるが……


 それだけ強力な分、制御も困難で暴走時のリスクが大きかった。


 ましてや、ケバブが行うのは裏技という本来とは違う形で条件を満たさせて発動させるもの。


 少しの誤作動で暴走へと陥る可能性が高い。


 そうなれば確実に世界が巻き添えとなる。

 神と共に世界の生きとし生きる者全てが永遠に覚めない悪夢の中に放り込まれかねないほどの被害がでる。



 ケバブはその辺りを全て伝えた。


 少し話しただけだが、ブラッドは信用できると見込んだのだ。

 むしろ、中身が中身なだけに魔王のような規格外の存在からの助言は必須。下手に隠すのは愚行。知りうる限りの情報全てを語ったわけだ。


 そうして、全て話し終えたブラッドは



「そうか……あれはイレギュラーで誕生したものと思ったが、もし本当だとしたら必然。下手すれば冥府の上層部が最初から仕込んだのかもしれんな」


「えぇ、だから今は情報を集めようと思ってるんです。冥府の事はお任せになりますけどエクレアちゃんの件は俺に任せてください。真の力を裏技で制御できるのか……その際どんな不測の事態が起きるか。それらはたぶん俺の方が動きやすいでしょうから」



「ははは。これまた随分慎重派な策士だな。勇者ならぶっつけ本番な力技で解決するのが一般的と思ってたが君は違うのだな」


「それは勇者ではなく蛮勇ですよ。足りない分を『確率なんて目安だ。足りない分は勇気で補えばいい』なんて考えでの本番はごめんです。俺は『事前にやれることはすべてやった。後は勇気で補えばいい』の考えで事前に出来る事はやっておきます。後始末はもちろんの事、最悪を想定した土壇場の起死回生な一手も含めて」


 そういった思考は『もう一人の俺』で本来のケバブのものではないが、『もう一人の俺』に全面的な信頼を置いているケバブも異論はない。


 それに、ケバブは予感していた。


 『もう一人の俺』が示した裏技が、最悪の展開から起死回生の一手へと成る……


 玄人なゲーマー気質、システムの裏を書いたり時には製作者の裏をかくような想定外な戦術で勝利を掴むことに快感を見出すひねくれ系ゲーマーだからこそ打てる一手が……





 巡り巡って大逆転へとつながるのだと……





(もしかしたら、俺はこのために勇者として選ばれたのかもな……)






 ケバブはそう思いながら、ブラッドから詳細を詰め始めた。

 こうして話し合うことでしばらく……



 内容が内容なだけに、一日で終わることなく……


 以後幾度となく話し合った。



 冒険者ギルドから割り振られる仕事をこなしながら……


 ブラッドとだけでなく、様々な人から話を聞いて情報を集めて行き……


 数週間後にケバブはある行動を起こす事にした。







 それは……


 真夜中、エクレアのアトリエの寝室に忍び込む事。


 ベットの上で安らかな寝息立てながら寝ているエクレアへの夜這いであった。

人それをHE☆N☆TA☆I☆と呼ぶ(キリッ)

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