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27.これ絶対無理ゲーだ

諦めたらそこでゲーム終了deathよ……

「ふむ、君が娘の言っていた『勇者』か」


 エクレアに案内されてたどり着いた部屋は、なんていうか普通であった。


 マスタールームといえば水晶玉や宙に浮かんだ無数のモニターといったファンタジーな部屋を想像してたが、そこはふつうの執務室といった感じの部屋なのだ。


 奥に業務用の机が一つ。上にはノートパソコンらしきものと電話らしきもの。

 書類が部屋中に散らばってて整理が全くできない……と思いきや、周囲の棚にはファイルやらなんやらがきっちり整理されて納められている。

 ぱっと見では几帳面なのか、ずぼらなのか、判断つかないがまぁそれはさておいて……


「えっと、俺はケバブと言う者です。貴方が『魔王』でしょうか?」


「うむ、私は『魔王』……魔王ブラッドだ。君とはいずれ宿敵として相対する者となる」


 宿敵として相対する者……それを聞いてごくりと喉を鳴らす。

 『鑑定』するまでもない。こいつは強い。底が見えない。見た目は優雅にティーカップを傾けてる紳士的な優男だが、勝てる道筋が全くみえない。


 これ絶対無理ゲーだっと思うも



「心配はいらない。私は演出家でもある。よって勇者がわずかながらに実力が及ばないギリギリを見極めた程度の強さで戦い、最後の最後で気力を振り絞った勇者の一撃で倒される……そんな演出を行うので別に無理ゲーではない。もっとも苦戦などしたことないイージーモードな甘えた勇者には容赦せずじわじわとなぶり殺しにするが、君はそうでもなさそうだ」


 心を読まれたかのごとく疑問に答えてくれた。

 圧倒的な実力差があるからこそできる舐めプ。

 それが許されるほどの絶対的な強者。


 そして……


「あの、魔王さん……なんで態々邂逅一番でエクレアちゃんを挑発するような真似してるのでしょうか?」



 あえて描写しなかったというか、あまりの早業故に暇がなかったというか……


 魔王の元まで案内したエクレアが部屋に入ろうとした際に魔王ブラッドが発した言葉……


 扉へのノックから返された言葉……



“こらこら、ここはお父様って呼ぶところだろう”



 この言葉でエクレアはプッツンした。




 瞬時に赤黒い髪と肌に変化……後で知ったがこれは『魔人化』という、身体能力を大幅に強化する身体強化技の一つ……で強化されたヤクザキックで扉を蹴破り、音を置き去りにした神速的な踏み込みで殴りかかったわけだ。


 そんな動きを行えば当然のごとくソニックブームも発生。机上の書類がばら撒かれる有様となったわけだ。



 だから一件ずぼらにみえたわけだが、まぁそれはさておいて……



 エクレアが放ったあの一撃は凄まじかった。少なくともケバブだったらあの拳食らった瞬間絶命すると断言できる。バフ全開でなおかつ防御姿勢を取っていても、それら全てを貫通しかねないほどの威力を誇ってたのに……


 ブラッドはその拳をあっさりつかみ取り、踏み込んできたエクレアの足を払ってスっ転ばしていた。


 そして……



「あぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」



 掴んでいた拳を倒れてるエクレアの背後に回して思いっきりひねり上げていたのだ。

 エクレアの背に座り込み、ティーカップを傾けながら……


「これはお仕置きだ。父がおいたする娘に対してお仕置きをしてるのだから別段おかしくはなかろう」


「誰が父だ!!私は絶対みt……あぁぁぁぁあぁぁあぁぁあ!!!!!やめてやめておれるぅぅうぅぅっぅう!!!!!!!」


 ミシミシとなんかエクレアの腕からヤバい音が響いてるし、これおしおきを域超えてるんじゃねっと思うも、ブラッドからみたらこれはお仕置きの一種らしい。


 とにかくこれはどう動くべきかっと悩んでるうちに……
















ごきっ!!!








「あっ……」


「ふむ、今回はこれぐらいでよかろう」


 ついに一線を超えた。エクレアの腕というか肩から何かが壊れた音が聞こえた。

 地面に突っ伏したまま、全く動かない右腕の肩を抑えながら悶絶してるエクレア。

 これはさすがにやりすぎだと思って応急処置を施そうとするも、ブラッドから静止の声がかかる。


「助けなくてもいい。あれぐらい自力でなんとかする。というかしてもらわなければ困る。それよりお茶のお代わりを頼もうか」


「いやいやいやそれ厳しすぎるでしょ。大体外した肩をどうやって自力で」


「大丈夫、お兄ちゃん……言われた通り自力でなんとかできるから」


 ブラッドに対して反論してる内にエクレアは影からニュキッと2本の闇の手を呼び、その手で器用に右肩をぐいぐいとはめなおそうとしていた。


「………!!!?」


 空いてる左腕に噛みついて痛みを堪えながら肩をはめなおす。ぐるぐる回して問題ないかを確認した後



「じゃぁお茶入れてくるからね。お兄ちゃんとどっかのおっさん」


 ブラッドを視線だけで殺せるんじゃないかっとばかりに睨みながら隣の部屋に入っていった。


「では話を聞こうか。君もかけたまえ」


 そう言いながら隅に設置されていたソファーに座る魔王ブラッド。

 よくまぁこの修羅場で平然とできるなっと思うも、ここで何か言えば話は進まないし大人しく机をはさんでの対面に座る事にした。

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