表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/161

17.今日は厄日なのか?

「いつつつ……せっかく手当てしてもらった傷がまた開くなんて、今日は厄日なのか?」


「厄日も何も、自業自得じゃないですか」


 浴衣に着替えたケバブのぼやきにエクレアは容赦なくぶった切った。

 それもそうだろう。


 冷静になって考えたら、先ほどの件はケバブに非がある。

 うっかりとかその気がないとか約一名……クラヴァは普段から羞恥心ないかのごとく裸でうろつく癖があるといっても、あの状況化での免罪符にはならない。

 

 だからケバブも新たな負傷は自分の罰として受け入れる事にして……

 自分が気絶中に進んだであろう状況を把握するため、改めて周囲を観察する。


 まず話し相手となっているエクレアだが、彼女は割烹着という色気も何もないような恰好で中央の錬金窯にいろいろな材料を放り込んでいた。

 穀物のようなものからゴブリン達が解体したばかりであろうオークとコカトリスの内臓を投入してかき回しているのだ。


 一体何を作る気なんだっと聞けば『味噌』と『醤油』っとすんなり返ってくる。


「はぁ?!『味噌』と『醤油』!!?いやいや、だったらなんで魔物の内臓なんかいれるんだ?特に魔物の内臓は毒そのものでとても食用に……いや、待てよ。噂によるとこの村にいるとされる国内最強冒険者は魔獣から剥いだばかりの内臓を咀嚼するとか」


「それただの噂!!内臓食べるにしても毒抜きやら下ごしらえやらの事前準備と火を通す等の調理を施してからというか、そもそも生で食べるなんてどこの蛮族なの!!?……じゃなくって、蛮族じゃないですか!!」


「あー無理して敬語使わなくていいですよ。俺達もあんまり畏まられるほど立派な人間じゃないですし」


「だよね~ボクもあんまり敬語で話されるの苦手だし、タメ口の方がいいな」


「クラヴァ、お前は常にタメだろ。せめて目上の人にぐらいは敬語使ってくれ」


「そういうの苦手だからケバブ、任せた」


 いきなり話に割り込んできた浴衣姿の……幼児体系なので色気が全くでないクラヴァは言いたい事だけ言って引っ込んだ。

 引っ込んでそのまま目の前の肉……畳スペースに戻されたちゃぶ台の上に置かれたホットプレートで焼かれた肉に食らいつくる。

 ショウガを利かせた醤油ベースのタレに漬けられてたであろう肉から漂う香りはそれだけで暴力もの。クラヴァはそのまま『うおォン、ボクはまるで人間火力発電所だ』っと言わんばかりに食べ始める。

 片手ながらも器用に箸を操ってがつがつっと肉を白米と共に食らい、時折ビールらしきものを流し込んではゲップする姿はいろいろつっこみどころありまくり。もう何から突っ込むべきかと悩んでると


「あの肉は3日前に狩ったオーク肉をショウガたっぷりの特製タレに漬け込んだものなの。本来は酒場に卸すモノ用だったけど、クラヴァさんが食べたいっというので報酬として食べ放題を許可した……のだけど、あのペースからしてちょっと誤った判断だったかも?いやでも今日はあんまり出てこないコカトリスが出たし、酒場での日替わりのお勧めメニューは鶏肉を中心にしてもらえば……ブツブツ」


「ちなみに昨日ケバブが酒場で注文したから揚げ。あれコカトリスの肉」


 エクレアの言葉にかぶさるようにして乱入してきたのは浴衣姿の……野暮ったい神官服の下はとんでもないボンキュッボンな生意気ボディを持つアシュレだった。

 彼女はクラヴァが座っている和室スペースの丁度反対側。様々な資料を納めているであろう棚近くの椅子に腰掛けて資料を読みふけっていた。

 足を組んでる事で魅惑のふとももが丸出しな彼女が指し示す先では、エクレアと同じく割烹着を着込んだゴブリン達が解体したばかりと思われるコカトリスの肉をニンニクやなんらかの香草を醤油と共に壺の中へ投入しているところであった。


「あのから揚げは鶏ではなく、コカトリスの肉だったのか!?」


 確かにコカトリスは見た目鶏だ。尻尾部分が蛇だったりして一部鶏と違うも、鶏部分の肉を使えば味や食感も鶏そのものになるのだろう。

 そう思えば納得できる。できるが……


「いや、問題はそこじゃない。それだとクラヴァが食べてる白米やビールに関しては説明付かない。さらにいえばコーラのペットボトルやカップラーメンも……」


「カップラーメン……ほしいの?」


 台詞途中でエクレアから唐突に切り出された提案。

 本来ならここは応じるところではない。

 ケバブに主導権を渡さないための罠であるのは確実だとわかっていた。

 わかっていたが……


「はい、ほしいです」


 この瞬間だけは本来のケバブではなく元日本人である『もう一人の俺』に身体の主導権を取られていた。

 カップラーメンというジャンクフードの誘惑に逆らえず、ついケバブを押しのけて表にでてしまった。

 もちろん本来のケバブは『もう一人の俺』に抗議しようとするも……


 こぽこぽこぽっとカップラーメンに注がれる湯の音に心躍らせる『もう一人の俺』の姿をみてケバブは思い直した。


(……まぁたまには『もう一人の俺』に主導権渡すのもいいか)


 こうして、しばらくまったりとした時間が流れるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ