16.なんでこういう時に限って制裁されるん……だよ……
「穴を抜けた先は異世界だった……」
穴の先、エクレアに案内された部屋へ踏み入れた際、真っ先に浮かんだのがこの言葉であった。
部屋の中は中央に大窯。錬金窯ともいうべきものが鎮座してるのはありうる。隣のテーブルに錬金術や調合に使うであろう様々な器材が置かれてるのもありうる……が、ノートパソコンとモニターまで置かれてた時点でありえなかった。
壁際にも極々普通な収納棚や何かが詰まった壺や樽もあれば、どでかい冷蔵庫や電子レンジみたいな文明の機器もある。
一応ノートパソコンや冷蔵庫に電子レンジでも魔道具として似たようなモノはある。魔道具だと言い切れば誤魔化しも効くだろう。
同様に部屋隅の一角が畳と座布団とちゃぶ台という完全和風な装いとなってるのもごまかせる。東の海を越えた先には日本そのものな文化が発展している倭国があるので輸入してきたと言い切ればごまかせる……が
ちゃぶ台周辺に散らばった空のベットボトルやカップラーメンの容器やスナック菓子の袋といったものはごまかせない。
こればっかりは明様に異物。この世界では絶対手に入らないモノだ。
「あーもう、ゴミは散らかすなって何度も言ってるのに……この辺りは知能持たせて進化させたゴブリンでも仕方ないのかな。ぶつぶつ」
エクレアは散らかってるゴミ以外は全く気にせず、畳上の空いたスペースに布団を敷いてまだ気絶中のレヴァニを寝かせ始める。
その際返り血だらけの服は脱がせ、代わりに浴衣らしきものを着せた。それだけでもうあそこの一角は完全和風に染めてるのがわかる。
「この血塗れとなった服は洗濯に出しますけど、よかったら皆さんのも一緒に洗いましょうか?」
「してくれるならお願いしよっかな」
「ふふふ……同じく」
エクレアからの提案に間髪入れず答えたクラヴァとアシュレ。
善は急げっといそいそと服を脱ぎ始める辺り、どんだけ順応性高いんだっと思ってると……
「ん?」
ケバブは気付いた。
皆からの視線が集中している事に気付いた。
「あーそうか。なら俺も頼もうかな」
ケバブは皆の視線を洗濯するのかしないのか、どちらなのか問われてるのだと思った。
なのでケバブも自分の服を……自分と敵からの返り血で汚れた服を脱ごうとしたその直後
「「そぉぉぉぉぉ~~~い!!!」」
バン!!
最初は痛みとともに、いきなり目の前が真っ暗となったので何がおきたのかわからなかった。
気が付いたら自分が壁と壁の板挟みにされていた。
後程、目の前の壁はエクレアとクラヴァが協力して投げたちゃぶ台だとわかった。
音速を超える速度で投げられたちゃぶ台をぶつけられ、その勢いのまま壁際まで押し込まれてサンドイッチにされたのだとわかった。
なぜちゃぶ台を投げつけられたのかというと……
「ケバブ~~いくら同じ仲間と言っても、女の子の着替えを堂々と見るのはまずいでしょ」
「くくく……親しき仲にも礼儀あり」
「そういうことです。様子からみて下心はなさそうでも、あれだけ堂々としたガン見はいくら私でもちょっと引きますから」
そういうことである。
「す、すまん……というか、クラヴァ。お前は前に裸同然の姿でうろt……ぐえっ!!」
「まっ、ケバブの覗きは今に始まったわけじゃないし、今回はこれで許したげる」
これで許すといっても、クラヴァがちゃぶ台越しに放ったドロップキックはケバブにトドメをさせるだけの威力があったようで……
「な、なんでこういう時に限って制裁されるん……だよ……理不尽だ……ウボァー」
ケバブは倒れるちゃぶ台に寄り添いながらその意識を手放した。
答え.ハーレムパーティーのお約束だから




