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13.まさか転生者の仲間だったとは

「っというわけで、ここがダンジョンの入り口になります」


「思ったものよりずいぶんあっさり到着したな」


 翌朝、村の入り口で審査員のエクレアと待ち合せたケバブご一行はそのままダンジョンまで案内された。

 道中に通る森の中は木漏れ日が適度に降り注いでマイナスイオンたっぷりだ。朝の散歩には最高のように思えるも、道のところどころには戦闘跡や血痕のようなものが残ってるせいでいろいろ台無しとなってた。


 一応両脇に一定間隔で魔除けが施されたお守りを仕込んでるようだが、それでも襲撃を完全に防げないらしい。ケバブ達はお約束的な突発的遭遇(ランダムエンカウント)に備え、気を引き締めて警戒してたが………


 結果は御覧の通り。何も起きなかった。拍子抜けなぐらい何も起きなかった。

 ついでに言えばダンジョン入り口も崖にぽっかり空いた洞穴ではなく、藪に紛れた兎の巣穴のようなものだ。一見すれば見落としかねないほど地味である。


「でも凄いね~村から出て30分も歩いてない、こんな近場にダンジョンがあるなんて~利便性いいんじゃない?」


「うん、利便性があるんだけど……その」


 クラヴァの興奮した様子とは裏腹に、エクレアはちょっと気まずそうである。


「クラヴァさん。利便性があるといってもエクレアさんにとっては迷惑になってる可能性もあるのですわよ。なにせ途中にエクレアさんのアトリエそばを通りましたし、ダンジョンのスタンピートが起きた場合真っ先に被害の対象になりますですから」


「そうなったら真っ先に魔物と戦えるじゃ~ん。いい事尽くめなのに~?」


「それで喜ぶのは戦闘狂のアナタだけですわよ……昔は倒した魔物にごめんねっと謝って冥福を祈るような優しい性格でしたのに、どうしてこうなったのですのよ」


「レヴァニこそ人の事いえないじゃない。荒事が苦手なのに……昔なんてついおしっこ漏らs」


「ク~~~ラ~~~ヴァ~~~さ~~~ん!!!人の思い出したくもない過去をほじくり返すだなんて、よほど死にたいようですわね~~~」


「何々?やる気?だったら相手したげるよ」


「やめろ!!お前ら審査員の前で喧嘩はまずいだろ!!」


 ケバブの静止に二人はぴたりと止まる。

 お互い無言のままにらみ合うも……


「審査員の前なら仕方ないか」


「ですわね……今回は引き下がっておきますですわ」


 審査員の手前ということもあって、引き下がった……っと思いきや、水面下ではバチバチと火花散らしていた。

 その様をみてケバブは昨日から何度ついたかわからないため息をつく。


「あははは……相当苦労してるんですね」


 エクレアはそんなケバブを気遣ってか、同情の目を送っていた。


「えぇ、そうなんですよ。なにせ男の浪漫たる『ハーレムパーティーキタ─wwヘ√レvv~(゜∀゜)─wwヘ√レvv~─!! 』っと思いきや中身はこんなもの。そこに浪漫も何もなかったんやな気分です」


「浪漫ですか~。私は女の子といってもハーレムパーティーを求める男の子の気持ちわからなくもないですよ。私も浪漫大好きですから」


「へ~例えばどんな浪漫が好きなんですか?」


 自分の気持ちがわかってくれる。理解してくれる女の子。

 その事がうれしくつい何気なく返したら……エクレアは待ってましたとばかりに小悪魔的な笑みを浮かべた。

 一瞬なぜそこでそんな笑みが出るっと思うも、それはすぐに判明する。


「一例をあげると、これとか~」


 くすくすと笑うエクレアは唐突に自分のスカートをたくし上げた。

 今日の服装は昨日の和風ゴスロリメイド服ではなく、極々普通の村娘な装いだ。

 スカート丈もふともも丸出しではない、ひざ下のふくらはぎまでの丈だが、たくし上げれば当然みえる。

 女の子の健康的な生足が、ふとももが露わになるから思わず目を反らそうとして……できなかった。


 右ふとももの半ばにベルトがまかれており、そこに何かが収納されていた。

 女の子のスカートで隠されているふとももに暗器。


「こ、これは……!?」


 浪漫だった。凄まじいまでの浪漫だった。

 ケバブは思わずエクレアのふとももを凝視した。


 クラヴァとレヴァニは水面化での喧嘩中で見てなかったが、喧嘩に加わってないアシュレがしっかり女の子のふとももを凝視してるケバブを見てることに気付かず……


 後で弄る材料が出来たっとほくそ笑んでるアシュレと……昨日あれから語り合ったことですっかり意気投合して仲良くなったエクレアの二人がアイコンタクトでやりとりしてる事にケバブは気付かなかった。


「ちなみに仕込んでるのは試験管で中身は『黒色火薬』なんですよ。これも現代知識持ちに定番なチートアイテムですよねー」


「えぇ、まったくそのt……え?チート??」


 チートアイテム……彼女ははっきりチートアイテムと言った。

 そういえば『味噌』や『醤油』なんかも作ってたし、だったら彼女は……


「アシュレさんからいろいろ聞きましたよ。詳しい事は試験終わった後にお話しますよ、勇者ケバブさん」


 話は終わりっとばかりにウィンクしながらスカートを下ろしたエクレア。

 その後は二人の喧嘩の仲裁に入った。審査員権限でもってダンジョンの中に入るように促す事で二人は水面下での喧嘩もやめて仕事人の顔になる。


 ある意味いつものことであった。

 二人の喧嘩はある種の準備運動だ。

 これから一仕事する前の準備運動を兼ねたやりとりだ。


 たぶん……いや、きっとそうである

 仕事モードになると二人は息ぴったりに連携合わせるし、あれが彼女達なりの準備運動だろうっと思い込む。

 でなければやってられない……が、それはさておきここでエクレアの正体が判明だ。


「まさか転生者の仲間だったとは」


 なら内に化け物飼ってるのも微妙に納得でもある。

 彼女も転生チートの特権があるなら内なる化け物を秘めていてもおかしくはない。


 もっとも、その予想は違っていた。

 実際は転生チートなんてものじゃない正真正銘のチートだと知らされたのはすぐだった。






 ……たぶん、すぐであった。

次回からダンジョンアタック編はじまる( ^ω^)おっ

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