12.英雄らしい困難な道にしてくれって思うのは贅沢なのか?
ハーレムパーティーでのヒエラルキーの底辺はある意味英雄らしいといえば英雄らしい気が……(ぼそり)
「あたりです。あのダンジョンは実入りこそ少ないといっても運が良ければ貴重な武具やアイテムが入った宝箱が見つかることもあって殺してでも奪い取るような争奪戦が起きちゃうんです。グランさんから推薦されたならそれなりの強さや信頼はあると判断はされても、マナー面で信用できるかは別なのでそれを調べるのが趣旨って……これ言っちゃっていいのかな?まぁ少ない情報で正解を察知するその頭脳に対しての報酬と思えば別にいっか。なんだかんだ言って合格渡すも渡さないも私の意思一つだし、なんなら難癖付けて不合格にも」
にやりと嫌らしく笑うエクレアにケバブはまずいっと思うも
「それやったら貴女の立場なくなるんじゃね?」
「うん、なくなるからちゃんと公平に評価しますよ」
アシュレの指摘をあっさり認めてのネタ晴らし。
その狼狽する反応を示したケバブが面白かったのか二人してふふっと笑う。
「もしかして……俺、おちょくられた?」
「その通り。エクレアさん……貴女いい性格してる」
「どういたしまして。えっと……」
「私はアシュレ……ちなみにそこのロリがクラヴァで筋肉がレヴァニ。皆同じ15歳」
おい、もうちょっと言い方あるだろっと思うもこれ以上最適な言葉はないわけだし、黙って見送る。
……後で怒られそうだが
「ロリがクラヴァさんで筋肉がレヴァニさん……うん、覚えた。よろしく、アシュレさん」
笑顔で言い切ったエクレアにケバブは思った。
この子は本当にいい性格してる。妹と同様に姉も癒しとは程遠い性格してるっと……
「よろしく。魔女サトーマイの弟子ということで貴女に興味あったけど、ますます興味でた。化け物を飼ってる貴女の事をよく知りたい。語り合いたい」
「語り合うのはいいけど、化け物って何の事?」
きょとんと首をかしげるエクレア。相変わらずあざといがこればかりはわざとらしい。
散々騙されてきたケバブでもわかるほどにわざとらしい。本当に誤魔化したいのか疑いたいぐらいであった。
「隠そうとしても無駄。私は精霊術師、人ならざる声聞ける。だから誤魔化してわかる」
変化球なんてない、ほぼ直球でのアシュレの追及。
正体不明の化け物が内に居るなんて指摘はまずいだろっとケバブは思わず何が起きてもいいよう身構えるも
「あっそうなの。でも今ここで力づくでの排除なんかやったら、さっきのモモちゃんへの説教が台無しになっちゃうし~ここは穏便に口止め料払うから見逃してくれない?」
彼女自身が内に秘めてる存在を把握済みだったのか、何も起きなかった。
これは内にいる化け物をちゃんと制御してる社交性のあるタイプだろう。
そう判断したのか、アシュレはキラリっと髪に隠れた目を光らせると
「じゃぁお近づきの印に……薬草邪夢ほしい。頂戴」
「売り物だから構わないけど邪夢じゃない。それジャムだから。『味噌』や『醤油』と違ってあれには怪しいもの入れてないっていうかどこ情報なのそれ」
「邪夢が入った瓶情報。そこに宿った霊っぽいナニカがそう言っていた」
「ちょー!それもしかして“キャロット”の声!?“キャロット”なにやってんのー!!!笑ってないで答えろこらー!!!!!」
「……なんか思ったより大丈夫そうだな」
内なる化け物に向かって文句言いだし始めるエクレアをみて拍子抜けた。
そして悟った。化け物の方は茶目っ気があって逆鱗にさえ触れなければ大丈夫なタイプだと。
後、エクレアとアシュレは気が合うだろうっと。
なにせ、その内なる化け物と交信してる姿は精霊と交信するアシュレとまんま被っているのだ。
テンションの高さは全然違うも、雰囲気的に気が合うというのは本当だろう。
どことなく二人は同類の匂いがする。
エクレアは『味噌』や『醤油』を生み出したとのことだが、そこにアシュレが加わったら後々とんでもないモノが生み出される。
『味噌』や『醤油』なんて目じゃないぐらいの恐ろしいモノを産みだす。
ケバブはそんな未来を幻視してしまった。
「なぁ、俺ってどこまで女運ないんだ?なんで俺の周りにはこういった癖の強い女の子ばかり集うんだ?」
仲間3人だけでなく新たに知り合った姉妹も一件普通の村娘にみせかけ、その実態は超個性的。
さらにいえば姉は得体のしれない化け物を飼ってる危険人物だ。
勇者は自然と困難な道を歩むというが………
(もうちょっとこう、英雄らしい困難な道にしてくれって思うのは贅沢なのか?)
そんな事を思う勇者ケバブであった。
まぁ平和な世界の勇者なんてそんなものだ。
諦めろ。




