10.何者なんだこの子は……?
何者かと言われたら、『お花畑ヒロイン』である
『味噌』と『醤油』は去年から世間に流通し始めた調味料だ。
お値段は少々割高であるうものの、去年まで極普通の少年労働者だったケバブでもお昼に『味噌ラーメン』が食べれるぐらいなので、貴族御用達な高級食材に比べたらまだマシだろう。
そんな『味噌』と『醤油』は4年前に死んだ魔女が開発したと言われている。
なのに目の前の少女が開発者と言われて、どうなってるのかと思っていたら真相を語り始めた。
「改めて自己紹介させてもらいます。私はエクレア。薬師であり魔女であったサトーマイ様の弟子だったエクレアと言います。『味噌』と『醤油』は師匠の研究を引き継いだ私が完成させて量産体系を整えたのです。でも……」
そう一呼吸おいた姉、改めエクレアは
「あんまり言いふらさないでくださいね。世間では師匠が完成させたものであって、私はただ研究資料を元にして再現させたという事にしてるから」
口に人差し指を近づけながらぱちっとウィンク。
その姿はあざとかった。
妹もそうだが、姉も同様にあざとく、そして強かだった。
先ほどの薬販売も周囲の野次がなかったらつい購入していたほどに商売上手だった。
妹がああなったのは大体この目の前の姉のせいなのだろう。
姉の振る舞いを身て自然に覚えたのだろう。
見た目は極普通の村娘。でも中身は化け物。
そう……バケモノだ。
強さは妹から思いっきりぶん殴られたのに耐え切った上で逆に鉄の爪から壁ドゴォのコンボで沈めたから妹以上なのはわかる。
クラヴァも強さは元より『味噌』と『醤油』がお気に入りということもあって、どうやればそれだけ強くなれるのだとか、どうやって作ってるのかとかいろいろ質問しはじめた。
ただ強さはともかく、作り方に関しては門外不出として適当に返事をぼかしながらのらりくらりとかわしてるが……
「やはり気になるな……」
背丈は11歳である妹と大差ないので年は12歳ぐらい。職業は薬師なので荒事を専門としてないはずなのに、戦闘力が並ではない。勇者補正があるケバブと匹敵するほどの身体強化が発揮できるクラヴァすら及ばないほどの身体強化を発揮した。
それだけでも異常だというのに、彼女の内には“ナニカ”が潜んでる。
変な野次を飛ばした外野を睨んだ時、一瞬だけ顕界したあの気配はあからさまにこの世界とは別物。
勇者をも超えるチートな化け物が潜んでいる可能性が高い。
「再度『鑑定』……するしかないか」
『鑑定』も万能ではないとはいっても、36分の1の確率で発生するクリティカルを出せば詳細はわかる。
もし今回の……おそらく感覚的なMPの残量的にこれが今日最後となる『鑑定』でそれを引き当てたら謎も解けるだろう。
そうと決めたらと早速魔法を発動させようっと念じた、その瞬間。
「ん?」
クラヴァとの会話を突如中断した彼女が振り返った。
今まさに『鑑定』を使う瞬間に彼女の目……『魔眼』を発動させたと思われる眼と合った。
そうして出た結果は
『ねぇ……最初は好奇心だからあえて見逃してあげたけど、あんまりしつこく乙女の秘密探ろうとするなら次は………』
「どうしたのですか?」
一瞬惚けた。
目の前の姉、エクレアが不思議そうに首傾げてる。どうやら彼女自身は『鑑定』をかけられた事に気付いてない。
彼女の内に潜んでる“ナニカ”が『鑑定』された事に気付いてただけでなく、その結果に干渉してきた。
結果に干渉して忠告を入れてきたのだ。
最後まで『鑑定』できなかったものの、恐らく次に続く言葉は……
『容赦しない』
辺りだろう。
ケバブは旋律した。
彼女は……エクレアは予想通り化け物だった。
チート職業の勇者が可愛くみえるぐらいの、正真正銘のチートだった。
(何者なんだこの子は……?)
思わずアシュレの方をみると、彼女はわからないと言わんばかりに首を振るだけであった。
お前のようなお花畑ヒロインがいるか……とツッコミ入れた人はいいねボタンをどうぞw




