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8.すっごいデジャウを感じる

 声の正体は姉だった。

 不意打ちで轟沈したかにみえたが、ダメコンとか根性とかそういったHPが0となってもHP1で生き返る能力で堪え切れたようだ。

 地獄の底から這い上がってくるかのごとき動きで立ち上がりつつ……


 空気が変わった。

 姉の纏う空気……いや、姉が変貌したのだ。


 先ほどまで妹と同じ桃色の髪が赤黒く染まっていた。頭からどくどくと流れ出る血で染まったにしてはおかしいと思うほどの染まり具合だ。

 肌も同様に赤黒く変化しており、そして……


 顔についた血を拭い去った後に露わとなった瞳は……深紅だった。

 到底人が持つような瞳ではない、まるで悪魔……いや、『鬼』。

 赤黒い肌はもちろん、脳天にできたコブが丁度鬼の角のようにみえるその姿はまさに『鬼』だ。


 そんな『鬼』となった彼女は笑顔でもって妹を睨んでいた。

 その不釣り合いな姿に思わず周囲は引き気味になるも……


「ちっ、そのまま寝てればいいものを」


 妹は『鬼』となった姉にひるむどころか思いっきり舌打ちしていた。


「モモちゃ~ん、あんまりおいたすぎるとお姉ちゃん、おこっちゃうぞ」


「あはは~お姉ちゃん怒らないで~可愛い妹のちゃm」






がしっ





「うん、最初っからこうすればよかったね。こうすればあざといポーズ取れないし」


 今度は姉からのお返しっとばかりに、妹の台詞に割り込むかの如く右手で顔面を引っ掴んだ。

 引っ掴んでそのままぐぐぐっと力を込めはじめる。俗にいう鉄の爪(アイアンクロー)だ。


「イタイイタイイタイイタイ!!!お姉ちゃん放して放してぇぇぇぇぇ!!!」


「いんにゃ。だ~め、はなさないよ」


 必死に暴れる妹に対して、頭からどくどく血を流しながらも笑顔で言い切る姉。

 手に持ってる酒瓶で掴んでる腕をガンガン叩くも、身体を足でゲシゲシ蹴飛ばそうとも、姉の方はビクともしない。

 それどころか姉は周囲を軽く見渡すと


「っというわけで、この勝負はそちらのお客さんの不戦勝で処理お願いします!なお負けた人はお詫びとして今日の代金はこの愚妹のおごりとしますのでそれで勘弁してやってください!!」


 妹をアイアンクローで極めながらぺこりっと一礼までする始末。

 これを聞いた面々は勝ったものも負けたものも一斉に歓声があがる。


「ちょ、お姉ちゃん勝手にそんな約束しn」


 もちろん約一名から不満の声があがるも








「DA☆MA☆RE!」











どごぉ!!









 異論は認めんっとばかりに後頭部を近場の壁に叩きつけた。

 俗にいう『壁ドン』の派生、『壁ドゴォ』である。

 その衝撃でレンガ造りの壁が陥没して放射状のひびが入ったところみると、かなりの力で叩きつけたのだろう。


 妹の抵抗がなくなるどころか肢体がだらんとだらしなく垂れている。

 それを見届けた姉は満足げにうなづきながら極めてる鉄の爪(アイアンクロー)を緩める。





どさり……




 支えがなくなったのだから当然地面へ突っ伏す妹。

 膝から崩れおち、両手をだらんとさげたまま土下座のようなポーズで倒れた。


 そのポーズは故意か偶然か、先ほどの姉が倒れた時とまんま同じであった。

 なので、彼女も姉と同様に危うくスカートの中(かぼちゃ)が見えそうになるも、やはり大きく目立つリボン型の帯が覆いかぶさることでガードされてしまったわけである。

 この辺りは不可思議な力(鉄壁スカート補正)が働いてるがゆえんであろう……




「さてっと」


 崩れ落ちた妹には見向きもせず、両手をパンパンっとはたきながら姉はくるりっとケバブ達の席をみる。



「あっ、すいませんお客さん。愚昧が迷惑をかけて……それとケバブさんご一行でいいでしょうか?」


 先ほどまでの割といい笑顔とは違う、営業スマイルともいうべき笑顔であいさつしてくる姉。

 姿も赤黒く染まっていた髪や肌は元に戻り、瞳もごく普通の輝きに戻っていた。

 ただし、傷の方までは元にもどせなかったようで今なお頭からどくどく血を流している。そんな有様なのに笑顔だからある意味下手なホラーよりも怖い姿だ。


 そのせいでびくっとするケバブ達だが、すぐ正気に戻ったクラヴァは倒れてる妹を指さしながら叫んだ。


「いやちょっとまって。あれあからさまに普通の一般人だと死んでるよね?死んでるよね?」


「大丈夫、愚昧は頑丈だから()()()死んでない」


「たぶんってなにたぶんって!?あれ食らったらボクでも耐えれるかどうかわかんないし~絶対大丈夫じゃないっていうか、これさっきも言ったし~!!」


「あ~うん、そうだな。すっごいデジャウを感じる」


 そこに至るまでの経緯は違う物の、生じた結果そのものはまんま同じだ。

 ただ唯一違うのは姉は妹と違ってしっかり意識を刈り取っていたことだろう。

 妹は出血こそないものの、地面に突っ伏したままぴくりとも動いてない。起き上がる気配が全くない。

 そんな有様だというのに周囲は特に騒いでない。

 いや、騒いでるは騒いでるもがそれは酒場独特の喧騒であって騒動に関しての動揺的なざわめきはない。


 さきほどのやりとりがまるで夢だったような……

 強制的に何気ない日常を繰り返すかのよう強制されてるような……


 ケバブは姉を見てると、不思議と夢をみているような感覚に襲われ始めていた。

酒場ではまれによくある日常光景。

しかし、モモちゃんがこんな成長しちゃうなんて、4年前の初登場シーン時点で誰が予測できたのやら……である\(^o^)/

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