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7.ちょっと可愛いと思う俺はおかしいか?

おかしいのは勇者君ではなくヒロインちゃんとその周囲の方々であるwww

「なんだこりゃ?」


 ケバブは思わず首をかしげてしまった。

 あれだけ警戒して決行した『鑑定』の結果が普通だったのだ。


 一応姉妹揃って見かけ詐欺ともいうべき戦闘力持ちなところはさすが修羅の村生まれといえるが、それ以外は普通だ。

 ただ、クラヴァは戦闘力のみに関していえば勇者補正を持つケバブと同等。その彼女と同程度と思われる強さを持つ妹をさらに上回ってる時点で普通ではない気もするが……


 そう思考を巡らせていると状況に変化がでた。


「お姉ちゃん。私だって酒場で喧嘩したいお年頃なんだし今回だけ見逃して~お願い」


 妹の上目遣いから手を合わせてのお願いポーズ……

 その姿にケバブはどきりと心臓を跳ね上げる。


(あざとい……あれはあざとすぎだろ)


 少なくともケバブを初めとした男連中であったらまず間違いなく陥落してる。

 鼻から忠誠心が吹き出している。

 それほどの破壊力があるお願いポーズは同性とはいえ、シスコンの毛がある姉相手にもこうかばつぐんだったようだ。


「うぐぅ!!?」


 下を向き、鼻を抑えて悶え始めた……その瞬間












がっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!







 ぶん殴った。

 姉が下を向いた……隙を見せたその瞬間を狙って、妹は脳天に酒瓶を叩きつけた。


 一切の遠慮なく、全力でぶん殴った。




 不意打ちを食らった姉は頭から血を吹き出しながら地面に突っ伏す。

 膝から崩れおち、両手をだらんとさげたまま土下座のようなポーズで倒れた。

 極端に短いスカートな事もあってスカートの中(かぼちゃ)が見えそうになるも、大きく目立つリボン型の帯が覆いかぶさることでガードされてしまった。

 残念というかなんというか……



「ふぅ……邪魔者は片づけたので、改めて一勝負としましょうか」



 割れて使い物にならなくなった酒瓶をぽいっと床ペロ中の姉の頭に向けて投げ捨てつつ、観客から新しい酒瓶を難なく受け取る妹。


「いやいやいやいや!この流れで一勝負っておかしいでしょ~!!」


 これはクラヴァもおかしいと判断したようだ。

 だが、周囲は当たり前のように受け入れていた。その証拠に……


「あ~あ。お姉ちゃん撃沈されたか」


「これは仕方ないだろ。俺等だってあのコンボに抗えないんだからな」


「なにはともあれ、対決はお流れにならずに済んでなによりだ」


 姉の心配よりも勝負の行く末の方に意識を向けてるのだ。

 これにはあのクラヴァでさえも異議があったらしく、倒れてる姉を指さしながら叫んだ。


「いやちょっと待って!!あれあからさまに普通の一般人だと死んでるよね?!死んでるよね?!」


「大丈夫、お姉ちゃん頑丈だから()()()死んでない」


「たぶんってなにたぶんって!?あれ食らったらボクでも耐えれるかどうかわかんないし~絶対大丈夫じゃないし~!!」


「す、すごいですわ……あのクラヴァさんが突っ込みにまわるだなんて」


「同感だ。だが……そんなクラヴァがちょっと可愛いと思う俺はおかしいか?」


 普段はクラヴァの暴走を止める立場となりやすいケバフにとって、逆に周囲の暴走を止めるべく突っ込みに入るクラヴァは新鮮であった。

 普段見慣れない姿だけにちょっとキュンっとしたが、それはレヴァニも同様のようだ。


「実は……ワタクシもちょっと可愛いと思ってますの」


「そうか……」


 同士を得たかのように、ガシッと握手する二人。

 一種の現実逃避なのだが、そうでもしなければついていけないぐらい混乱してる二人であった。


「くくく……いい具合に混沌となってきたわ」


 “混沌”……確かに今の場を表現するならこれほど相応しい言葉はないだろう。

 それほどこの酒場では異常な空気に包まれていた。


 だが、その空気もすぐに変貌する。











“モ~モ~ちゃ~ん……”







 泣く子も黙るとはこのこと。っと言わんばかりな怒気を含んだ声で周囲の喧騒はぴたりと止まった。

ある意味ではク〇ゥルフの呼び声よりもやばいかも(ぇ

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