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6.な、何が起きた……!?

「はいスト~~~~ップ!!!



 パンパンっと手を打ち鳴らす音と共に、静止がかかる声。

 喧噪の中でもよく響く声に全員がそちらへと向いた。

 それは現実逃避しかかっていたケバブも同様であった。


 全員の視線の先には給仕の娘の和風ゴスロリメイド服の色違い……赤に対して青を基準とした服装ながらも、頭が給仕の娘のような三角頭巾ではなく魔女風の黒いとんがり帽子のせいでいろいろ違和感ありまくりな少女がすたすたと歩いてきた。


 周りに群がってた野次馬も即座に道を譲ったので、彼女はその間を抜けて給仕の娘の前に立つ。


「何エクレアお姉ちゃん?これから一勝負するから邪魔をしn」







ごちん!!





 拳骨が堕ちた。

 給仕の娘が全て言い切る前にとんがり帽子の少女が拳骨を落とした。





「邪魔するよ!野次馬から一部始終聞いたけど、馬鹿を撃退する喧嘩なら止めない。伝統にのっとって好きにやればいい。でもね……自分から挑発した事で発生する喧嘩だったら止めるよ!!!」


「えーでもお姉ちゃんに迷惑かけてないし」





ごちん!!





 涙目で反論しようとした所に再度拳骨。



「迷惑かかっちゃうんだよ!モモちゃんをこんなけんかっ早い性格にしたという名目で私に責任取らされちゃうんだから!!下手したら折檻とか言われてお仕置きされちゃうんだから、もう少しおしとやかにしてよぉぉぉぉ!!!!」


「いいじゃないか。むしろ折檻してもらえ」


「そりゃぁいいわい。エクレア嬢ちゃんにされる折檻はワシらにとってはごほうb」



「どやかましいわ!!この腐れエロ聖職者共が(ギン!!)」





パタン×2







………





(な、何が起きた……!?)


 ケバブはほんの一瞬気を失っていた。

 最初は目の前の急展開に面食らっていた。急遽始まった対決に横やりが入った。給仕の娘の姉らしき少女が止めに入った事で始まった説教兼漫才染みたやり取りに少々惚けてしまったが……

 姉がやじ飛ばした野次馬を睨みつけた瞬間、姉から人ならざる化け物の気配が顕界したのだ。


 それが何らかの干渉を行った。

 ケバブが気を失ったのは野次馬二人の巻き添えを食らったのだろうと思うが……

 それ以上におかしいのは、あんな化け物の気配が一瞬でも顕界したのに周りは特に気にしてない事だ。


「いくらなんでも口に出すのはまずかったな、じいさん」とか「邪魔にならないよう隅にやっとけ」っと口々に言いながらも化け物の事には全く気付いた素振りもなく観戦モードは継続していた。


「ふふふ……ケバブ、あの姉人間じゃないかも」


 アシュレは精霊という、異界に住む者と交信する術を持っているだけに一瞬顕界した存在に気付いたらしい。

 目の前はおいたした妹に説教する姉というほのぼのな光景だが、先ほどの睨みつけた時ににじみ出たナニカはほのぼのどころではない。


「人間じゃないと言ってもですわねぇ……確かに空間の揺らぎみたいなもの感じはしましたですけど、それは上位冒険者の威圧でも起きる現象ですわよ。考えすぎではと思いますわよ?」


 レヴァニの言うことはもっともだ。

 普通ならそう判断付けるのが適切だが……


(さっきのあれは多分『魔眼』だよな)


 『魔眼』は睨みつけた者になんらかの状態異常を付与する魔獣や魔物、果てには魔族のような魔に属する種族の固有能力。

 通常の人間ではまず持つことができない能力だ。


 なら姉の正体は……



(恐らく『鑑定』をすれば正体を見破れる。でも……)


 ケバブから冷や汗が流れる。


 直感としてこれ調べたらいけない。

 姉に『鑑定』なんか仕掛けたら寝てる虎を起こすどころじゃない。パンドラの箱を開ける。もしくは“深淵”を覗き込むに等しい行為をしてしまうような気もするが…………



「アシュレ、どう思う?」


 ここで深く考えない、『鑑定』を絶対視するなろ〇系転生勇者なら『鑑定』を強行するところだが、ケバフは慎重派だった。

 前世がRPGに詳しい玄人好みのゲーマー気質。事前に情報を集めて検証し、システムの穴を付いたり時には意表を突いた裏技で攻略するのを好むひねくれ系ゲーマーだ。そんな彼……『もう一人の俺』ともいうべき彼は『鑑定』そのものが罠である可能性を考慮して、一度冷静になってアシュレに相談する事を薦めていた。

 アシュレは精霊術師。この世ならざる者と交信できるのでこういった未知の存在にはくわしいのだ。

 RPGの常識に沿って行動前の情報収集だが……


「ん~姉は人間だけど人間じゃない。矛盾が矛盾になってない」


 余計わからなくなった。

 ただ、逆にいえばそれだけおかしな存在だということだ。

 もしかしたらバグ的な存在かもしれないが、ここまで来たら謎を謎のままで放置する方が危険だ。


「危険だが『鑑定』をする。……万が一俺に何かあったら頼む」


「ん。気付け薬飲ませて正気もどす」


 先ほど給仕の娘がサービスとして置いていった青汁を指すアシュレにぞっとするが、たぶんこれは大げさでない。

 それぐらいヤバい結果がでる。





 いろいろな覚悟を決めて『鑑定』を発動。
















 そして、出てきた項目は…………

























『本来なら義妹と喧嘩しても高確率で勝てる程度に強い。ただし、義妹に甘いシスコンだからつい手を緩めてしまって大体負ける』




勇者の前なのにいろいろはっちゃけちゃうヒロインちゃんであったw

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