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5.どうしてこうなった……俺はどこで間違えたんだ……

天の助けなんてなかったんや……(´・ω・`)

「お待たせしました。スティックサラダ4人前。それと……いくらナンパ魔から相手にされなかったからといって、即座に暴力沙汰は勘弁願いたいのですけど。全く誰が掃除すると思ってるんですか。ぷんぷん」


「「「ごめんなさい」」」


 やられ具合は各々違うが、モザイク処理のかかった屍を後目に給仕の娘から注意を受ける3人。

 もっとも、台詞の節々では3人を蔑んでいるような気配があるのでケバブとしては内心穏やかでなかったが……


「まぁ~貴女達はいろいろと残念な方ですし、相手されないのは仕方ないかもしれませんけどね~ぷ~くすくす」


 蔑むを通り越して馬鹿にするかのごとく笑う給仕の娘。

 うん、これ絶対喧嘩売ってるなっとケバブは思うも口には出さない。

 女同士の争いに口出すとロクな目に合わないのは経験上知っているからだ。


「全く誰だよ。ハーレムパーティーは男の浪漫だって言ったのは」


 本当に誰が言ったか知らないが、1年も満たない付き合いの中でハーレムパーティーの現実を知り過ぎたケバブはため息を付く。

 仲間内の関係は比較的良好。ただし恋愛フラグは立たない……3人共アクじゃない。個性的過ぎて立ちようないのが幸いして男女間のトラブルにまで発展しない。


 冒険者パーティーとしては理想的なのだが、いかんせんそこに浪漫がなかった。全くなかった。かけらすらなかった。


 ついでに癒しとして求めた給仕の娘もその実態は癒しではなかった。

 癒しにみせかけた悪女。男を食い物にする悪女であった。


「俺に癒しはないのかよ……」


 改めて非情な現実に思わず逃避しかけるも……パーティーのリーダーとしてこの騒動は止める義務がある。


 だから止めようとするも……


「大丈夫ですよ。ほら、周りも止めに入ってないでしょう」


「そーだそーだ!!このままやらせろ!!!」


「女の子同士の対決だ!!こんな珍しいもの見なくてどうする!!!」


「遠慮なくやれー!!!」


 給仕の娘の言う通り常連はノリノリに煽っていた。

 どうやら常連たちはこの給仕の娘の裏の顔というか本性はすでに把握済みらしい。

 2人の間に走る一瞬即発なムードに対して、周囲は彼女の心配するどころかどんな展開になるかwktkして見守っている。


 中には殴り合いで勝負しろっと煽る者まで出てくる始末。


「いやいやちょっと待て!!いくらなんでも殴り合いはまずい!!!」


「ご心配なく、私こうみえても強いですから」


 注目どころか殴り合いによる対決になろうとも、動じずにっこり笑いながら返す給仕の娘。

 その豪胆ともいえる態度は荒事の多い冒険者達が主な客層となる酒場で給仕してるだけあるともいえよう。


 ……積極的に喧嘩吹っ掛ける事に関しては給仕として大問題な気はするが、そこはあえて突っ込まずスルーした。


「ほ~言うじゃない。じゃぁボクと一騎打ちしよ~」


 クラヴァはやる気満々だった。立ち上がってバキボキっと拳ならしながら一歩前にでる。

 対して給仕の娘も逃げずに立ちはだかる。


「もちろんいいですとも。でもハンデとして武器使っても構いませんか?私は素手だとどうも調子がでないもので…」


「いいよいいよ~ボク年上だもん。なんなら右手だけでも」


「そこまではいいですよ。どうせ……」


 給仕の娘が周囲に目くばせすると常連も心得たっとばかりにひゅんっと酒瓶を投げてきた。

 それを受け取り……









 ぶんっと一振り。










「武器を持った以上、両手使われても勝つ自信ありますからね」


 ざわり……


 空気が変わった。

 彼女の纏う空気が変わった。

 今までの可愛らしくも強かな給仕の娘ではない、可愛らしさは残したままながらも戦士の佇まいに変化した。

 纏うオーラの身体強化率からみてクラヴァとほぼ同格の強さ。

 持ってる得物が酒瓶なので傍から見るとアンバランスすぎるが、彼女の場合それが似合うから不思議だ。


「へ~ついに本性表したんだね~」


「えぇ、貴女からなんとなく私と戦いたがってる空気を感じました。お客様の要望に応えるのもここでの仕事の一つですので。ねっ、みなさん」


「おーよく言ったぞモモちゃ~ん!!」


「それでこそ酒場の看板娘の鏡だー!!」


「さぁ賭けるぞい!ここまでの好カードになったら賭けするぞい!!」


 周囲に向けて放たれた台詞に野次馬も盛り上がった。

 盛り上がりついでに賭けまで行われはじめる。

 その胴締めと思わしき者が少々小汚い聖職者の装いをした爺さんな辺り、突っ込みどころあったりするも……




「おじい様。ワタクシは給仕の娘に賭けますわ」


「私はクラヴァ。ロリの方。仲間だし見捨てるの忍びない」


 レヴァニとアシュレはこのビッグウェーブにノリノリで乗っかったようだ。


「兄ちゃん、あんたはどうする?」


「あ、あぁ……」


 ケバブはあまりの展開に少々乗り遅れた感があるも、とりあえず給仕の娘がどれだけ強いのかを調べる事にした。

 仕様上あまり役に立たないが未知の敵への『鑑定』はな〇う系勇者の基本戦略。


 基本にのっかって『鑑定』で調べた結果














『ぅゎょぅι゛ょっょぃ』















 参考になるのかよくわからない結果が出た。


 だが、ケバブは気付かなかった。

 のんきに『鑑定』で情報収集へと走ってたせいで、自分がとんでもない窮地へと追い込まれていたことに……


「ねぇ、ケバブはどっちに賭けるの?もしかしてボクの勝利を疑ってる~?」


「お兄さんはもしかして11歳のか弱い女の子が徹底的に痛めつけられる展開をお望みなんですか?」


「あっ……」


 ジト目のクラヴァとくすくす笑う給仕の娘の問いかけでケバブは気付いた。

 気付きたくなかった事実に気付いた。

 これどっち選んでも後々面倒な事になるパターンに気付いてしまった。


 助けを求めようともレヴァニとアシュレはすでに賭けを終えた身だ。

 ケバブがどちらを選ぶか、その結末がどうなるかを二人の勝負以上に楽しみだという顔でにやにやして見守っていた。


 なお、逃げる選択はない。

 すでに大半が賭けを終えており、後はケバフが選択を終えるだけで勝負が開始される。

 よって周囲からも逃げる事は許さんが早く選べっとばかりに訴えている。

 どちらを選んでも厄介事しか起きない二択しか道がない。



(どうしてこうなった……俺はどこで間違えたんだ……)


 完全に追い詰められた……まさに『ツンデレ』改め『ツンデル』



「ダレカタスケテクレ……」


 勇者はチートだ。


 でも無敵ではない。









 決 し て 無 敵 な 存 在 で は な い







 今ほどその事実を痛感した事はない……


 勇者であっても抗えない現実にケバブは目の前が真っ暗になった。


答え③.現実は非情である

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