3.よくまぁこんなアクの強い……じゃない、個性的な女の子3人が仲間になったよなぁ
「さて、試験はどんなものになるのやら……」
ケバブ一行は辺境の村に冒険者ギルドでダンジョン探索推薦状を提出し、試験担当者からの試験内容のお知らせ待ちとなった。
その間はギルドに併設されている酒場で待てばいいとの事で、ケバブ達はご飯にありついていた。
時間も丁度夕食時なので酒場は大賑わいだ。
そんな酒場でケバブ一行は注目を浴びていた。
当然だろう。ケバブ達は余所者な上に男1人に女3人のハーレムパーティー。
世の男達の理想が詰まった編成だ。注目を浴びない方がおかしいはずだ。
「ん~前評判通りここのご飯すっごい美味しいし」
それでもクラヴァは周囲の視線なんて知らないっとばかりに味噌漬けにされた分厚い豚ステーキをフォークでぶっ刺し、歯で引きちぎるようにして食らっていた。
「クラヴァさん。貴女は女の子なのですからもう少し品のある食べ方をですね」
対照的にレヴァニは行儀よく鳥のモモ肉の照り焼きをナイフで丁寧に切り分けながら口に運んでいた。
文字にすればものすごく優雅であるも、その速度は速かった。手の動きが残像を残すほどであり、傍からみれば料理が手品のごとく消えてるようにみえるだろう。
アシュレは二人みたくがっついたりはせず、もくもくとあやしい気配を放つ緑色の液体をかけた骨付き肉を齧っている。一見すれば問題ないっと思いきや……
「ぐふふふふ……これおいしいわ。この全ての効能が凝縮されたなんともいえない味がたまらないぃぃぃ」
怪しげな笑いと共に怪しげなオーラを放出中だ。料理も合わせると黒魔術による呪いの儀式を行ってるかのような有様である。
注目を浴びるのは3人の10代少女が同席だから……ではない。三者三葉ながら3人とも個性極まりまくりな食事風景こそが真の原因であろう。
「改めて思うが。よくまぁこんなアクの強い……じゃない、個性的な女の子3人が仲間になったよなぁ」
ケバブは自分の前に置かれた空となった皿を……美味しそうだからっと大半を3人に横から霞めとられた皿を名残惜しそうに見ながら、改めて各々料理を堪能している3人をみる。
意図せず結成したハーレムパーティーで仲は一応良好。
お約束のラッキースケベもそれなりの頻度で発生はするも、3人とも個性的過ぎて萎えてしまってるのだ。
世の男達から説教食らいそうだが、ケバブとしてはもっとノーマルでおしとやかで品のある普通の女の子からの癒しがほしい。
そう、先ほどから各テーブルを行き来している桃色の髪をした給仕の女の子みたいな極々普通のノーマルな子に癒してほしい……
そんなお年頃なのである。
「お客さん、唐揚げのお代わりお持ちしました。後これはサービスです」
噂をすればっとばかりにその給仕の女の子がとんっと置いてくれたのは鶏のから揚げ。
先月まで居たレガールでは小麦粉をまぶした鶏肉を油で揚げて上からソースをかけただけのシンプルなものだったが、ここでは下ごしらえとして薬味を混ぜた特製の醤油ダレに何日か漬け込んだ鶏肉を揚げているようだ。
揚げたての衣から漂う醤油とニンニクを中心とした薬味の風味が食欲をダイレクトに刺激しまくるため、最初の皿はほぼ全てを3人に掠め盗られてしまったわけだ。
今回は絶対死守するため警戒を強める……も、その前にやることがあるっとばかりにケバブは給仕を呼び止める。
「あ、あの……給仕さん」
「なんでしょうか?」
にっこり笑いながら振り返る給仕の女の子。
その笑みは営業スマイルなのだろうが、改めてみればとても可愛らしいものだった。
年は11歳前後ながらも胸が発達してるからロリという印象はない。
かといって大人の雰囲気を醸し出してるわけでもない。
丁度いい塩梅な看板娘だろう。
実際彼女が各テーブルのそばを通るたびに皆の視線が集中していた。
服装が絶対領域を完備した和風ゴスロリメイド服だから、余計に集中していた。歩く度に露わとなるふとももへと視線が集中していた。
そんな男達の邪な視線に対して彼女は怒ることなく、笑みやウィンクで返しつつ追加注文を促すなど割と強かなところがある。
強かなところがある。大事な事なので2回言いました。
「あの……このサービスで置かれた飲み物なんですが、なんでしょうか?あからさまにヤバい色と匂いしてるのですけど」
「栄養たっぷりな特製の『青汁』です。肉ばかりで野菜の類を食べないお兄さん達には丁度よいかと」
にっこり笑ってるが、彼女はこう言いたいのだろう。
野菜を食え、サラダ系統を注文しろ。
でなければこの『青汁』……のような凄まじい邪気に似た何かを漂わせてる危険物を飲む羽目になるぞっと
健康面の心配をしつつも脅しで追加注文を促す、実に強かな戦略である。
「それもそうですよね。ではスティックサラダを4人分……でいいよな?」
「いいよ~さすがに肉ばっかりは飽きるし」
「構いませんわ。ソースはこの梅味噌をお願いいたします」
「ふふふ……青汁っていうの。これもいいわ~ごくごく」
「「の、飲んだ!!?」」
ケバブだけでなく給仕の女の子も同時に驚きの声をあげた事でついお互い顔を合わせる。
「………こほん。スティックサラダ4人分承りました。今持ってきますので………
……ま、まさかおやっさんやお姉ちゃん以外まともに飲めないと思ってた原液を平然と飲む人が新たに出てくるなんて……後で体調崩しても私のせいにならないよね?」
彼女としても本当に飲む事を想定してなかったのか、気まずそうにしながら立ち去る。
(うん、わかる。その気持ちわかる。あんなのを平然と飲めるアシュレの方がおかしいだけだ)
ケバブも給仕の女の子と同意見なだけに、無意識で漏らした言葉を聞かなかったことにして見送るのであった。




