1.見た感じ普通の村なんだよな(side:ケバブ)
長い休憩となったけど今日から連載再開です
ストロガノフ王国西の最果てに作られたゴッドライフの村。
この村の前身は魔王との決戦に向かう者達の補給基地であり、魔王討伐後も魔物や魔獣の駆除を行う狩人達の前線基地として活用された。
その役目は300年経ってもさほど変わらない。
魔王こそ居なくとも魔王が残したとされる高濃度の瘴気の影響を受けて高レベルな魔物や魔獣が次々と生まれるのだ。
放っておけばスタンピードとなって人々に牙を剥く。
駆除のために村内ではなによりも強者が求められる。
多少性格や人格に問題があろうとも、強者であれば許される修羅の村。
それがゴッドライフの村……
「という話だったが、見た感じ普通の村なんだよな」
ケバブが村に着いた際の感想がそれだった。
村の防衛も簡素な木の柵に覆われたのみ。これではスタンピードどころかゴブリンの襲撃すら耐えれないっと普通は思うだろう。
だが、そこは修羅の村。
村を覆っている柵は一見貧相にみえるも、実態は貧相どころでない。並の魔物や魔獣では触れただけで絶命するのではないかっと思われるほどに強い祝福の力が込められているのだ。そんな柵に覆われた村は聖域と言っても過言ではないほどの防衛力を誇っている。
村人も同様にただのモブでない。
到着が丁度夕方だった事もあり、畑仕事を終えて帰路のつくモブの村人達……一例的にピッチフォークを担いだ農夫のおじさんを『鑑定』して出てきた結果も
『戦闘力たったの5……ではなく500倍の2500はある』
(相変わらず参考になるかわからん結果だが、修羅の村と呼ばれるだけあって半端ないのはわかった。こうなると戦闘を生業とする冒険者も半端ないと思った方がよさそうだな)
ケバブの予想通り、戦闘を本職をする冒険者も半端なかった。ギルド内で仕事の報告を行ってるモブ的な冒険者達はランクこそ全体的に低いが、それで戦闘力が低いなんてことはない。
今まで居たレガールの街ではAランクと称されるような者がC扱い。上官や主役として扱われてもおかしくないような強さを持つ者でも、この村では相対的にモブのような一卒兵扱いとされてるわけだ。
自分は井の中の蛙だと改めて認識させられた。
「みてみて、レヴァニ。前までボクらを散々馬鹿にしてたあの3人、隅っこで居心地悪そうにしてるよ」
「そうですわね~クラヴァさん。あの方達はレガールのギルドでは期待の新人としてあれだけもてはやされて威張り散らしてたのに……うふふ」
「ここはいい気味……とでも言うべきかしら。ぷーくすくす」
ケバブが周囲を探ってる間、残りの3人はボロゾーキンのような男3人組を馬鹿にしていたようだ。
みればその3人組は以前クラヴァやレヴァニとパーティーを組んでいた連中であり、3人もケバブ達に気付いたようだ。
馬鹿にされた事で突っかかろうとするも
ギロリ
ギルド内での諍いはご法度。
場所は変われど共通の決まりがあるため、各所から睨まれた事で大人しくなった。
だが、彼等が突っかかる原因はクラヴァ達の挑発だ。なので次はケバブ側に非難の視線が集中し始める。
常人であればここは大人しくなるだろうが……
「何やる気?相手するよ」
勇者であるケバブから見初められるだけあって、クラヴァは常人ではない。
シュッシュッとシャドーボクシングを行いながら周囲を挑発しはじめたのだ。
なのでリーダーであるケバブは止める。仲間の愚行を力づくで……後ろから羽交い絞めにしてまで止める。
「やめろ!やめてくれ!!来て早々にこれ以上の騒ぎ起こさないでくれ!!!」
「ケバブ様の言う通りですわ。ワタクシ達は蛮なケダモノではないのですから、実力行使は控えるべきですわよ」
「戦いたいなら明日訓練所でやれって奴」
「うぐぅ」
ケバブだけなら止めれるか怪しかった説得も、レヴァニやアシュレが加担した事でクラヴァは分の悪さを感じたようだ。
しぶしぶながらも拳を引っ込めた……わけなく
バキャッ!!
憂さ晴らしっとばかりに、行き場のなかった拳をケバブの顔面にたたきつけた。
ちなみに理由は……
「どさくさ紛れてボクの胸掴んだ罰さ」
「罰って、そもそもお前は掴めるほどの胸がn」
バキャッ!!
口は災いの元。
ケバブはその言葉を胸に深く刻みながら、再度襲われた顔面の痛みに悶えるのであった。




