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5.俺も息抜きが欲しいです……

 ケバブとゆかいな仲間たち……


 そうとしか呼べない超個性的な面々は有能であった。


 男1人に女3人というハーレムパーティーでありながらも、パーティー内の仲は一応良好だ。


 ……若干二人の仲が険悪っぽい気はするも、当事者にとってあれはただのじゃれ合い。


 幼い頃から行動を共にする幼馴染同士な事もあって、いざという時は息ぴったりな連携をみせる。

 普段の仲の悪さはどこへ行ったといわんばかりな連携をみせるのだ。





「だから、そういうことで今日の野営の料理当番よろしく。ケバブ」


「なにがそういうことだクラヴァ!!大体昨日もそういって俺に押し付けたじゃないか!!たまには担当しろ!!!」


「無理ですわ~私斧より重いモノ持ったことないから包丁なんてとても」


「ふふふ……クラヴァさん、貴女にお嬢様言葉は似合いませんわ」


「ほほ~いうじゃない。だったらぜひともご教授願おうじゃないか!レヴァニさん」


「いいですわ。丁度水浴びしたいところでしたので、裸の付き合いをしながらたっぷり教えてあげますわ……そういうことでケバブ様」


「…………ワカリマシタ。リョウリタントウサセテモライマス」



 こうして仲が良いのか悪いのかわからない連携を見せた二人に言いくるめられた事もあって、今日も料理当番を押し付けられるケバブであった。




「ははは。結局今日も押し付けられたか、ケバブ君」


 そんなケバブに対して親し気に話しかける大人の青年。

 ケバブと同様にゴブリン退治の依頼を引き受けていた3人組の冒険者パーティーの1人でそのリーダーを務めるグランである。

 彼等はゴブリンの逃亡を防ぐため、ケバブとは別の方向からゴブリンの群れを強襲していたのだ。その結果は上々であり、一部逃亡を許すも大半を駆逐することができていた。

 今は合流して共に野営準備の真っ最中である。


「笑いごとじゃないですよ、グランさん……毎回ですよ。料理だけでなく依頼の報告やら買い出しも全部俺ばっかり……」


「それだけ頼られてる証拠なんだと思いなよ。それに、彼女達も息抜きは必要さ」


「あの二人は息抜きばっかりというか、俺も息抜きが欲しいです……」


「それもそうか。なら先輩として可愛い後輩の手伝いと愚痴を聞くぐらいは付き合ってあげよう」


 そう言いながらケバブの隣で野菜の下ごしらえを行うグラン。

 ケバブはたわいのない愚痴を垂れ流しつつも、手を止める事なくもくもくと野菜の皮をむいていた。


 各種野菜を切り終えた後は干し肉と共に鍋へ投入。

 煮えるのを待ちながらケバブは改めて切り出す。


「あの……グランさん。今回のゴブリン退治なんですけど、どう思います?」


「どうとは……?」


「いろいろです。特に今日倒したゴブリンは手ごわかったので……その」


 ケバブは自分で会話を振りながらも、どう切り出そうか迷う。

 グランは冒険者歴10年を超える大ベテランでランクもA。西の王都とも呼ばれる街レガールでは有名な冒険者だ。


 Sこそ届かないものの、Aランクとして恥じない実力と実績を持つ冒険者パーティーを率いるグランに対してどこまで話すべきかを考える。


 今日倒したゴブリンの長が『ゴブリンキング』というただの雑魚ではなかった事を話すべきかを考える。



(本当まどろっこしいよなぁ……『鑑定』は勇者専用魔法なだけあって下手に勘繰られないよう隠さないといけないから余計そう思う)


 そんな態度をグランは見越したのか


「長だったゴブリンが手ごわかったのに疑問あるのかい?まるでゴブリンの王様みたいな強さで」


 代弁するかのような言葉を紡いだ。



「王様……なぜそう思ったのですか?」


「去年からゴブリンの動きにおかしなところあったからね。特に春先は辺境で集団戦に特化されたゴブリンの群れが確認されたんだ。姑息ながらも効果的な罠を駆使する抜け目なさが際立った全く油断ならない相手で、下手すると洒落じゃないぐらいの被害出てたかもしれなかったんだ。それに……いや、なんでもない。忘れてくれ」


「なんでもないって、余計気になるじゃないですか!!教えてくださいよ」


「う~ん……じゃぁ仕方ない」



 ケバブの食らいつきに少し考えたグランは立ち上がる。

 立ち上がりながら比較的長めの薪の二本掴み、その内の一本をケバブに向けて放り投げた。


「鍋が煮えあがるまでの間……5分間で僕から一本取れたら教えてあげよう」

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