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4.ハーレムパーティーは浪漫の塊だって言ったのは誰だ?

本当にこれ誰が言ったんでしょ……?

もし起源知ってる人いたら教えてほしいっす(おねだり)

「はぁぁ……改めて思うが、どうしてこうなったんだろうな」


 ケバブはついため息をつく。

 ハーレムパーティーという世の男達の浪漫を形作った体現者なのに、その表情は暗かった。


 理由はそのハーレムパーティーを形成させる仲間にあった。






 まず最初に紹介するのはクラヴァ。

 職業は戦士で体系は……ロリだ。

 ロリで巨大な戦斧を振り回すボクっ娘だ。女物より男物の服を好み、髪も短いから見た目はもう少年だ。

 声すら中性寄りなので初見では高確率で性別を間違えてしまうだろう。



 続いて紹介するのがレヴァニ。

 こちらはロリのクラヴァと違って筋肉ムキムキ。顔は整っており、声も育ちに良さを感じさせるお嬢様ボイスなのに腹筋がバキバキに割れてるのだ。もちろん胸は大胸筋のたまものでボリュームは満点。

 佇まいはどこからどうみても近接戦士だが……その実態は魔術師だ。

 鎧ではなくローブを着込んでる魔術師だ。

 お前のような魔術師が居るか!!っと叫びたいが、現実にはここにいるのだから仕方ない。



 そんな具合で見た目的に二人の職業は逆にみえるだろう。



 クラヴァは平民にしては珍しく幼少期から魔法が使えたから余計そうみえただろう。


 だが、ケバブの『鑑定』で暴き出した二人のステータス画面に表示された素質は……





 真逆だったわけだ。








 クラヴァは初期魔力こそ高くても魔法関連の伸びしろがいまいち。

 大人しく本を読んで知識を深めるより、身体を動かしたりする方が好きなアクティブタイプな事も相まって魔術師としては落ちこぼれであった。

 いつまでたっても初期クラスな魔法しか操れなかった。


 だが、力や素早さといった身体能力の素質は勇者補正を持つケバブとほぼ同等。

 正しく鍛え上げればあの貧相な身体から信じられないほどの力が発揮できるのだ。

 性別の件もあいまって、完全な見た目詐欺であろう。





 対してレヴァニは見た目筋肉ムキムキで如何にも物理で殴るのがお仕事っとばかりの風格を持つも、母が元貴族という本当にそこそこの良い家なお嬢様だった。

 お嬢様なので血なまぐさい事に苦手意識があり、返り血をみると狼狽えてしまう。大量に浴びれば気絶もありうるという、戦士としてはあまりにも致命的な欠点があった。


 だが、彼女はクラヴァと違って落ち着いていた。教養もあって知識を蓄える事に苦はない。

 魔術師としての訓練も苦にならないわけであって、そこに魔術師としての素質が抜群とあれば……






 勧誘しない手はない。



 ましてや二人とも職業のミスマッチで苦労してきたのだ。

 同業者から落ちこぼれだとか屑だとか役立たずだとかで罵られてた同年代の女の子だ。


(……まぁクラヴァはともかくレヴァニの方はもう女の子とはお)









ズガン!!!






「あら~ごめんなさい。うるさい蠅が飛んでたのでちょっと叩き潰そうとしたのですわ」


「ソ、ソウデスカ……」


 ケバブは自分のすぐ真横の大木の幹に穿った拳跡をみて、冷や汗をかく。

 ちなみにこの拳跡はレヴァニの放った突きによるものだ。


 レヴァニの得意属性は『風』であり、彼女は風の魔力を拳に乗せて放つ……

 いわゆる物理魔法の要領で魔法を放っていた。


 その威力は御覧の通り、はちきれんばかりの筋肉の力が加わることもあって普通に放つより威力が出る。

 生物をぶん殴っても、纏った風で血飛沫もろとも相手を吹っ飛ばすから自身の身体に血はつかない。

 手刀に至ってはあまりの鋭さに血を一滴も流すことなく切断するものだから、血が苦手な彼女にとって『風』は実に相性抜群なのである。





 ケバブはそんな彼女が穿った跡をみながら、自分の選択は正解であって間違いであることをさt







ずがん!!







「あっ、ごめ~ん。蛇が居たからちょっと叩き潰そうとしたの」


「ソ、ソウデスカ……」



 ケバブは頭上の枝から垂れ下がっていた弦に突き刺さった木の枝をみて、冷や汗をかく。

 ちなみに木の枝を投げたのはクラヴァだ。


 クラヴァは魔力を魔法として放出するのではなく自身にとどめる……いわゆる肉体強化系の魔法の素質が抜群だった。おまけにその魔力を武具に纏わせる事もできる。


 その威力は御覧の通り、彼女の手にかかればそこらに落ちている木の枝ですら十分な殺傷力を持つ武器に早変わり。




 そんなクラヴァの視線はレヴァニに向いていた。

 自分の方が大きな疵痕を残せるんだぞっと言わんばかりにどや顔していた。


 対してレヴァニはにこやかだが、こめかみがぴくぴくしてるところをみると怒りを抑えているのだろう。

 怒ったら負けだという、淑女としてのプライドにかけて必死に笑ってるけど笑ってない顔で耐えていた。



 その様をみてケバブは改めてため息をつく。


「はぁぁ……あの二人、なんであんなに仲悪いんだ?同じ村出身の幼馴染だというのは嘘だったのか?」



「喧嘩するほど仲が良いともいう。あの程度、ただのじゃれ合い」


「下手すれば致命傷を負いかねないじゃれ合いを毎回止める身にもなってくれ。この前なんてとばっちり食らって腕ちぎれかけたんだぞ」


「くくく……大丈夫。腕の二本や三本、すぐに()()()あげる……針と糸で」


「アシュレ……やめてくれ。俺を人形みたいな感覚で()()のはやめてくれ。大体腕は二本しかない……」


 最後の紹介になったアシュレだが、彼女は精霊術師だ。

 彼女は物心がつくかつかない頃に教会の孤児院へ預けられた捨て子であり、神の声を聴く才能があったので聖職者の道を歩んでいた。


 だが、アシュレは回復魔法を主とした神聖魔法が一切使えなかった。

 神の声は聞こえるのに魔法が使えない。


 教会での彼女の扱いがどうだったかは……


「くくく……語るまでもない」


「いきなり何を言ってるんだ?」


「くくく……気にせず……くくく」


「そ、そうか……」


 不気味に笑うアシュレを前にしてケバブはつい後ずさった。

 ぼさぼさの黒髪、しかも前髪で目を隠したその顔で笑う様ははっきり言って不気味だ。


 野暮ったいフード付きの神官服を身に着けているから余計に不気味だ。

 お前はどこの魔女だっと叫びたいぐらいに……


「教会に伝わる悪魔の話から推測して、精霊術師は“悪魔憑き”と同意義。すなわち神ではなく精霊の声が聞こえていた私は教会からみれば魔女そのもの」


「そ、そうか……」


 再度同じ事をぼやくケバブであったが、彼の身にして考えればこうしか言えないのである。



 まぁとにかく、アシュレはケバブの『鑑定』によって眠らせていた才能を開花させた。

 唯一にして絶対の存在である『神』の声を聴き、『神』の……正義の代行者としての力を振るう聖職者ではなく……

 万物に宿る土着の神。すなわち『精霊』の声を聴き、精霊から力を借りる事で自然現象を操る精霊術師としての才能を開花させた。


 ……本来は負の感情や呪いの力を操る呪術師がもっとも向いてたりするのだが、そちらは世間体が悪すぎるのであえて次点の精霊術師を目指してもらった。



 クラヴァ、レヴァニ、アシュレ……


 この3人はケバブの鑑定の力によって本来の才能に気付くことができ、絶望しかなかった道に希望の光を照らしてくれた事になる。


 なので3人ともケバブには感謝している。

 乙女ゲームのような恋愛シュミレーションではないのでステータスに好感度の項目はなくても察する事はできる。

 振る舞いからみて高い数値をキープしてるのは確実であっても……



「なぁ……ハーレムパーティーは浪漫の塊だって言ったのは誰だ?」





 現実は御覧のあり様。


 3人ともケバブを慕う年ごろの女の子なのだが、癖が強すぎてケバブは到底3人に恋愛感情を持つに至れないのである。

どうやらここの勇者君は悪役令嬢ちゃんと同じく、周囲に振り回される苦労人タイプとなりそうであるw

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