3.こんなギルドの方針、絶対間違ってるはずだ
ゴブリンは魔物の中でも最弱の部類であった。
大人どころか、10にも満たない子供ですら倒せるぐらいの最弱な魔物だ。
それでも繁殖力はG並であり、油断すればすぐに数を増やす。
最弱でも数がそろえば脅威となる。
よって、ゴブリン退治は冒険者ギルドでも常駐される依頼であった。
言い換えれば、引き受ける者があまりいない依頼でもある。
改めて言うが、ゴブリンは魔物の中でも最弱である。
だが、最弱=退治が低難易度ではない。
ゴブリンはどこにでも住み着く。
廃墟やら森やら山やら、下手すれば下水道とかにも住む。繁殖力も高いから数匹でも逃がせばすぐに数を増やす。
どこにいても数を増やす。
ゴブリンは見つけたら皆殺しが基本だ。
そんなゴブリンが洞穴に住み着いたら悲惨だろう。
『暗い』『臭い』『汚い』『狭い』の四拍子がそろった洞穴なんて好き好んで潜りたくない。
おまけに罠を仕掛けられている場合もあるので、一切の油断ができない。
うっかり致命的失態をすれば目も当てられない状況になる。
だが、生き残りを出さないためには洞穴に潜って皆殺しにしなければいけないのだ。
そうして、手間暇かけた割には得られるものが少ない。
報奨金は安いし、あんまり感謝されない。
ゴブリン=最弱のイメージが強いので冒険者なら狩れて当然っと思われてるわけだ。
高ランクな冒険者ほどゴブリン退治を引き受けたがらないわけであり……
同じ魔物でもオーガのように手間暇かからず純粋な強さのみで狩ることのできる大物退治を受けたがる。
ゴブリン退治を引き受けるというか、押し付けられるのは大体新人だ。
経験の浅い新人はやっぱりゴブリンを甘くみる。
単体だと10にも満たない子供ですら倒せるぐらい弱いから余計甘く見る。
数だけでなく武器や罠を利用する知恵を身に着けたゴブリンの脅威を甘くみる。
だから……半数は失敗する。
這う這うの体で逃げかえれば運のよい方。運が悪ければ……
そんな状況なのにギルドや高位冒険者は何も言わない。
ギルドはゴブリン退治を新人のふるい落としぐらいしか思っておらず、高位冒険者は情けないと馬鹿にする。
新人もライバルが減ってラッキーぐらいしか思わない。
ゴブリン退治を引き受ける新人に対して何の保証も手助けもしないのだ。
……………………
「こんなギルドの方針、絶対間違ってるはずだよなぁ」
ケバブはここ最近多数の被害を出してるゴブリン退治の案件に対して、愚痴を垂れ流しながらも森を進んでいた。
「だよねーボクも間違ってると思ってるよ」
「全くですわ。今回ばかりはクラヴァさんの意見に同意いたしますわ」
「今回ばかりはって何!!レヴァニ!!!」
「何って、文字通りの意味ですわよ。その程度すらわからないとは、さすが脳みそが筋肉で詰まってる事だけあり得ますわ」
「やめろ!!騒ぐとゴブリン達に気付かれるから静かにしてくれ!!」
喧嘩に発展するところをケバブが止めた。
後ろを振り返りながら、同行者である二人の女の子……クラヴァとレヴァニを止めた。
それでも止まるとは思えなかったが
「くくく……今回私はケバブ側につく。それでも……続ける?」
二人の喧嘩を後ろから眺めていた女の子、アシュレがケバブ側に着いたことで二人はしぶしぶながらも矛を収める。
その様をみてケバブはほっとする。
「すまんな、アシュレ。助かった」
「いいって事……私達、パーティーを組む仲間だし」
「パーティー……仲間……か」
ケバブは仲間という言葉を聞いてなんともいえない表情を作る。
ケバブの父はソロを好んでいた。
臨時のパーティーを組むことはあっても、基本はソロで魔物退治を引き受けていた。
いくら強くても一人では不意の事態に対処できない。命を落としたのもソロだったが故であろう。
父の二の舞を避けるためにケバブは仲間を集った。
都合いい事に、勇者の専用魔法として『鑑定』があった。
この『鑑定』は通常だとアテになるのかわからない解説が出る程度だが、運よくクリティカルをだせばケバブと同じステータス画面が出せる。
バグった数値や遊び心満載な補足に少々不安要素はありながらも、自身の体験である程度の信用度があるのは把握済み。
だからこそ、ケバブは『鑑定』を使用して将来性のある仲間を探した。
各所を巡ってみつけたのが、クラヴァとレヴァニ、アシュレという……
ケバブと同年齢な14歳の女の子の3人だったわけだ。
つまり……あれである。
彼は意図せず男の浪漫の結晶ともいうべき、ハーレムパーティーを結成させてしまったのだ。
父がソロを好む勇者なら、息子は女の子3人連れのハーレムパーティーを組むのがお約束。
異論は認めんwww




