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2.やっぱり俺も男の子ってわけか

 『勇者』になったケバブは激変した。

 正確にいえばステータスが激変した。


 各種ステータス値は数字がバグって読めないが、ご丁寧なことに脳内カーソルを合わせることで補足がでる。


 補足では労働者の時だと各種ステータスは『人並』『糞』『望み薄』であったが、勇者になったとたん『超人』『レアメタル原石』『期待大』に変わったのだ。


 それら項目を改めてみたケバブはごくりと喉を鳴らす。

 ステータスは元より、剣だろうが槍だろうが、ありとあらゆる武器に魔法ですらなんでもござれな完璧超人の素質をみて、ケバブは改めてごくりと喉を鳴らす。



「つまりあれか。神は俺に魔物や魔獣退治をしろっというわけか……」






 魔物や魔獣退治は冒険者にとって人気の依頼だ。

 なにせこの世界は人々に害をなす魔物や魔獣が闊歩する世界だ。過去には魔王が居たぐらいであり、魔王を倒した英雄譚にあこがれる者は少なくない。



 ケバブも英雄に憧れはある。

 前世記憶を思い出す前の子供時代から、勇者の英雄譚を聞きながら育ったのだ。


 憧れこそあるが……



「いや、駄目だ。親父は魔物退治で命を落としたんだ……決して軽い気持ちで目指していいものじゃないんだ」


 ケバブの父も冒険者であった。

 雑多な雑用をこなす労働者としてではない。魔物や魔獣を退治する狩人としての冒険者だった。


 才能はあった。標準的な冒険者はCランクで終えるところを、Bランクにまで上り詰めるぐらいなのだから才能はあった方だろう。


 だが、その才能が仇となったらしい。

 ギルドの見解だと自身の力を過信し、力量以上の魔物を狩ろうとしたのが死因だそうだ。


 だからこそケバブは堅実な道を選んだ。

 残された家族を……母や幼い弟妹を養うために、堅実な労働者になったわけだ。


 それでも……





「ははは……やっぱり俺も男の子ってわけか」


 冒険心を抑えきれなかった。

 自身から湧き出る英雄への、冒険者で狩人だった父への憧れ、好奇心、そして……浪漫を。


 前世の日本では決して得る事のできない浪漫が目の前にあるのだ。

 手を伸ばせばすぐ手にできる冒険がある。



 それに加えて……


「あぁ……俺は勇者になったんだ。将来的には魔王すら倒せるほどの強さを持つ俺が魔物を退治しなくてどうするんだ。こうしている間にも魔物や魔獣の被害を受けて苦しむ人々がいるんだ。そういう人達のために、戦える俺が率先して戦わなければどうする。大体親父が無茶したのも、戦う術を持たない人々を守るためだったんだ」



 真相はどうかわからない……が、少なくともケバブの父は正義の味方であった。

 粗暴なはみだし者が多い冒険者の中でも、礼節を弁えていた。困った者にはその手を差し伸べる……時には無料働き同然であろうとも、困った者を助けていたので多くの者に親しまれていた。

 葬式でも多くの者がその死を嘆き悲しんでくれるぐらいの人徳があった。


 そんな父はケバブにとって『英雄』であり『勇者』だ。



「だから誓おう……俺は親父のような弱者を守る、困ってる者に手を差し伸べる勇者を目指す。親父のように人々を守る剣として、盾として生きていく。それに加えて……決して無茶はしない。親父のようにお袋や弟妹を残して死ぬようなことは絶対しないっと」













………………



 この日、この世界に魔王を打倒する『勇者』が生まれた。



 世間は彼が『勇者』とは知らない。


 本来なら異世界から召喚される事で現れる『勇者』が、召喚される事なく生まれたのだ。


 その原因は言うまでもなく、『毒花畑ヒロイン』のエクレアであろう。



 彼女が国内に流通させた『味噌』や『醤油』は『神』のシナリオに数々の歪を引き起こし、彼はその歪の影響を受けて出現した異端の勇者なのだ。



 そんな彼が残した英雄譚、最初の一ページに刻まれた功績は……











 決意から丁度半年後の秋。実りの秋を迎え、各所に冬ごもりの食料をため込む時期。


 この食料を狙う者の退治……


 すなわち、ゴブリン退治であった。


G退治は新米冒険者のお約束。

でも、この世界のゴブリンは……さぁ、どうなるかなかな。( ^ω^ )ニヨニヨ

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