1.ケバブは勇者である(side:勇者)
果たしてここの勇者君は悪役令嬢と同じく無難なテンプレ系か、
はたまたヒロインみたく常識外れなぶっ飛び系か……
どちらに該当するのかなかなw
ケバブは勇者である。
あーうん、言いたい事はわかる。突っ込みたい気持ちはわかるが、まず彼の生い立ちついて語るとしよう。
彼は極々平凡な田舎村の生まれであり、12歳の頃に村を出て西の王都とも呼ばれるレガールの街へと移り住んで冒険者の道を選んだ。
理由は村の退屈極まりない生活に嫌気がさしたわけでなく、冒険にあこがれたわけでもない。
単純に子供の頃から出稼ぎとして冒険者ギルド経由の雑用的な依頼をこなしてる内に、働きを評価された事で自然とそのまま歩むことになっただけだ。
そんな経緯で冒険者になったわけだから彼は他の連中……一攫千金な夢を求めて冒険者になった非現実的な浪漫を求める者と違って、地に足の着いた堅実な現実を求めた。
冒険者になった時点で堅実も何もないが、雑務仕事だろうと真面目にこなせば長期雇用へと結びついて安定した収入が望める。
冒険者ギルドも名前こそ冒険心溢れるような者が集うようにみえて、その実態は仕事斡旋場の派遣会社みたいなものだ。
本当に仕事を選ばなければ様々な仕事がある。
週休1日の8時間労働で給料の半分を家に仕送りし、残りは生活費にあてるという健全な毎日を過ごしてきた彼に転記が訪れたのはある日の昼に食べた料理……
日本人にとってのソウルフードの一つ、『ラーメン』を……
あの『毒花畑ヒロイン』であるエクレアが生み出した『味噌』を食べた屋台の親父が断片的に思い出した記憶頼りで作られた『味噌ラーメン』を……
味噌ラーメンの響きにかすかな望郷の念を抱き、1杯大銀貨2枚の2000Gと少々割高ながらも十分手に届く範囲なので興味本位で食べた時に起きた。
『味噌』と『ラーメン』の相乗効果によって、ケバブは思い出したのである。
悪役令嬢とその側近姉弟と同様。前世である日本人の記憶を思い出し、そして……
目覚めたのである。
打倒『魔王』……
ヒロインが住む村に降臨した(というか成り行きで降臨する羽目になった)魔王ブラッドを倒す事が運命づけられた『勇者』として……
目覚めたのである。
……………………
side:勇者ケバブ(6章は勇者目線で進みます)
「本当、味噌ラーメンを食べたら前世を記憶を呼び起こすって無茶苦茶だよな。しかも……」
ケバブは下宿先として借りている宿の一室でベットに腰掛けながら、改めて『ステータスオープン』と唱える。
目の前に出現したのはRPGで定番のステータス画面。所々バグって文字化けしてる部分がありながらも、ケバブにしかみえない半透明のウィンドウで出現したのは紛れもないステータス画面であった。
昼の時では冗談半分で唱えたステータス画面が目の前に出たのだ。
驚かないわけがない。
一体どんなシステムが働いてるか不明ながらも、ケバブは自身の名前の横についている職業欄……
『勇者』の文字をみる。
昼に開いた時はただの『労働者』であったが、吹き出しアイコンで『現在の転職可能職』がでていたので脳内カーソルでクリック。
その時に出た様々な職業をみて……再度驚いた。
一覧の中で『アナタのお勧め職業』っとこれまた吹き出しアイコンで示されていたのが『勇者』だったのだ。
勇者はストロガノフ王国で最も有名な英雄。
世界を恐怖で支配した魔王を打倒するために異国から召喚された伝説の英雄。
そう……な〇うとかの異世界転移系ファンタジー小説で超定番なストーリーであり、代表格なチート職業だ。
最初は疑った。こんなうまい話があってたまるか!!っと疑った。
昼休憩の終了時間も差し迫っていたので、勇者の一件は頭から追い出して午後の仕事を行うために頭を切り替えた。
仕事中は余計な事考える暇がなかったこともあって、ステータス画面や勇者の事を気にも留めなかったが……
こうして夜になり、思考にふける時間が出来た事で再度考えてしまったわけだ。
ステータス画面と『勇者』という言葉に……
転生者特権ともいうべき、チートの力に……
好奇心に抗えなかった。
例え罠であろうとも、14歳という厨二病真っ盛りな男の子にありがちな好奇心には抗えなかった。
抗えずつい先ほど『勇者』を選択した……その瞬間、ケバブは目覚めたのである。
『勇者』として……




