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13.ありえません。何かの間違いではないですか?(side:メープル)

“今にして思えばこれが私のターニングポイントだったのでしょう”


 説得の際には言葉を選ぶべきだった。

 正論で返すのではなかったのを痛感していた。


 人は感情で動く。

 例えそれが貴族であっても人である以上感情があり、感情に正論のみで論破など不可能なのだ。


 あれから、マドレーヌは取り繕うのをやめるかのごとく変わり始めた。


・商会への出入り

・多文化への理解

・孤児院の慰問

・側近候補の確保

・独自の情報網の構築


 これらはあの夜以降にマドレーヌが起こした動きだ。

 一つ一つはそれほどおかしいものではない。

 それぞれしっかりとした意味があり、将来的にはマドレーヌの利となるものだ。


 今までのやり方では未来がないと悟ったマドレーヌが取った反乱以外の打開策。

 自身含む国へ向けた投資と考えればおかしくはない。


 事実、側近候補として孤児院から見出した二人の姉弟。

 マロンとカロンという原石の確保に成功した。


 メープルが直々に教育したからこそわかる二人の才覚。

 まさか孤児院にこれほどまでの人材が埋もれていたなんてと驚くほどの逸材。


 この二人は後々マドレーヌの統治の際には欠かせないピースになると確信した。

 二人の手腕は元より、身寄りのない者を拾い上げてなおかつ有能な人材として育て上げたという実績は現国王の再来として国民から圧倒的な支持が得られる。

 マドレーヌが権力を持てば引き続いて身分問わず出世の道が開かれる。


 彼女の立場をより強固となりうる布石を打つのに成功したのだ。


 二人が新たな専属となった事でメープルは専属を外されこそしても、侍女長としての研修を受けるように指示されたのは将来に向けた投資だと考えていた。


 自分はいずれお嬢様が集めた側近達を統率する立場となる。


 今こそ一時的に疎遠となっていてもいずれはお嬢様の隣に立つ。

 その時が来るまで今は与えられた役目を全うすること。


 この頃はそう思っていた。


 そうして、お互い顔を合わせる機会が減ったまま幾分か月日が流れ………


 


 マドレーヌから辺境への……

 国の最西端に位置するゴッドライフの村への出向を命じられた。










……………………


「ありえません。何かの間違いではないですか?」


 王都から片道でも一ヵ月はかかる遠い地への出向を命じられた時は耳を疑った。

 思わず聞き返した。もしや何かやらかしたのかと本気で思った。


 それが態度に出てしまったのか、マドレーヌは慌てて説明を追加した。


 曰く……

 『味噌』と『醤油』の取引に際して、開発者の弟子充てに個人的な手紙を託した商人がスイーツ侯爵家の代理だと偽って暴走、多大な迷惑をかけたのでその謝罪をしたいから。

 マドレーヌ個人ではなくスイーツ侯爵家の代理として、正式に謝罪してなおかつ良縁を持ちたい。

 その重大な任務をこなしてくれるであろう人物。侯爵家の代理という信頼ある者しか託せない事案をこなせる人物として、白羽の矢が立ったのが幼い頃からマドレーヌが姉として慕い、つい最近まで専属侍女として仕えてくれていたメープルであった。


 説明を受ければ納得できる。

 例の一件はスイーツ家の失点として広く流布されたわけだし、なんらかの対処は必要だ。

 父君は何事も経験だとその後の処理までマドレーヌに任せていた。


 悪く言うならマドレーヌの失敗の後始末を押し付けられたわけなのだが……

 それ以上に溝を感じていた。


 あの日の夜、マドレーヌから反乱計画を打ち上げられた時から感じていた溝。

 今までは気のせいだと思っていた。

 これまでの動きはマドレーヌが統治する未来へ向けての布石の確保。

 決して自分は冷遇されてるわけではない。


 そう思っていた。

 いや、そう思い込もうとしていたが……





“残念だが今の君では娘のそばにいる事を許さない。この機会に辺境で最低でも一年は滞在して、その間自分を今一度見直してくることだ”




 同席していた父君からの言葉は残酷であった。



 マドレーヌの父君、クラフティ・スイーツ。



 ストロガノフ国の宰相であり現国王ローストがもっとも信頼を置く臣。他者の才能を見抜く事に長けた現国王が……

 貴族平民含む粒ぞろいな人材の中でも頭一つ飛びぬけた、この国の真の支配者とも言われるお方だ。

 表の政だけでなく裏の諜報や策略にも長けた国の全てを掌握してるであろうお方。

 現国王が何度も『貴殿こそが王にふさわしい。だから余に変わって王となれ』と王座を譲ろうとするも 笑いながら突っぱねる豪胆なお方。


 そのような偉大な方からの言葉は残酷すぎた。

 『残念』と笑いながら言うあたりがとても残酷であった。





“どうしてこうなったのでしょうか”



 その後の事はよく覚えてない。

 気が付いたら、自分はすでに旅支度を終えて馬車に乗り……


 例の一件で共にしていたという冒険者達を護衛として、辺境を目指して自ら馬を操っていたのであった。

悪役令嬢編となった5章は完結。ヒロインちゃん、あまり出番なかったけど次章からは……別の新ヒロインの出番となります(ぇ

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