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6.一番辟易してるのはそんな無能を信用してしまった私自身なんでしょうね

 辺境から帰還っという名前の連行されてきた無能の馬鹿は、以下にも自分は有能だと主張していた。失敗となったのは相手や周りのせいだと言い張っていた。


 冷静に聞くまでもなく突っ込みどころありまくりなダブルスタンダードを貫くその報告を、何度途中で遮ろうと思ったか……


 何度途中でぶん殴ろうと思ったか……


 事前に同行者が馬鹿のやらかし案件をまとめた報告書を渡してくれたおかげで失態内容を知っていたとはいえ、あまりにも酷い内容に辟易した。



「いや、一番辟易してるのはそんな無能を信用してしまった私自身なんでしょうね」


「仕方ありません。ああいった輩は依頼人への信頼を得る手段に長けてるのが常識ですから、決してお嬢様が見る目ないわけではありません」


「見る目ないのは確かよ。なんせ側近として選んだのが……」


 マドレーヌは目の前で立ち尽くしている、主人を主人と思わない見習い侍女のマロンと見習い執事のカロン。この二人に向けられているが


「ひどいなぁ。俺達教育係であるメープルさんに将来有望な期待株だって認めてもらえてるんだぜ」


「日本の高度な教育を受けた頭脳という前世知識あっての代物でしょうに…」


 ちなみに今まで専属侍女であったメープルは専属を解任した代わりに、新たな新人の教育を行いつつ侍女長としての研修を行ってもらっていた。彼女はいずれマドレーヌの側近の統括や政務の補佐をしてもらう立場。今は上となる立場を学んでもらってる段階だからおかしなところはないだろう。

 だから裏はない。鼻から出るほどの忠誠心と融通の利かない頑固頭が良い具合にミックスしてるせいで、そばに置いてたらとんでもない事やらかしそうな彼女を遠ざけたいなんて意図はない。

 


 ないと思っておかないとついついメープルとこの二人、マロンとカロンを比較してはメープルの方がよかったなんて嘆きかねないぐらい二人は問題児であった。


 まぁそれぐらいの問題児でなければ反乱計画なんて到底打ち明けられないので、重宝するしかないのが現実。


 そんな非情な現実にマドレーヌは頭かかえつつも、二人に関わっている場合ではないので現状どうなってるか整理する。

 今の現状もすでに非情な現実となってるが、それでも整理する。



 まず『味噌』と『醤油』はキーテス伯爵家の養子で辺境に居を構えている自ら魔女を名乗る薬師のサトーマイが開発した……これは半分が真実。

 彼女は3年前に研究半ばで死んでおり、その時点ではまだ未完成だった。


 その研究を弟子が引継ぎ、3年かけて完成まで至らなかった『味噌』と『醤油』を完成させたようだ。


 製作者を魔女サトーマイにしたのは研究半ばで没した師匠への手向けなのだろう。

 なにせ日本人にとって『味噌』と『醤油』はソウルフードに等しい調味料だ。

 自分で作ろうとしてたぐらいだし、相当な思い入れあったと思われる。弟子としてその名誉を没した師匠への手向けにする判断はおかしくない。


 商人達も弟子の意図を組んで、弟子が真の製作者だという事実を秘匿していた。

 マドレーヌは侯爵令嬢という権力もあり、此処だけの話としてこっそり明かそうとしてくれた。


 ここで製作者、弟子の名前を聞いてればまだ最悪は避けられてたかもしれない。

 商人相手に権力のごり押しは貴族としてあるまじき行為。だからこそ名前を聞くような追求をする事なく話を終わらせた。


 これが二つ目の選択肢の間違いであろう。


 ここでより詳しく話を聞く……弟子の名前がエクレアと判明したら即座に優先度を引き上げた。

 なにせエクレアが薬師サトーマイの弟子というキーワードそのものが、『毒花畑ヒロイン』へのルートを進んでる証拠でもあるのだ。貴族に対し極大の憎悪を抱いてるエクレア相手に下手な対応はできない。

 だから侯爵家の関係者を直接送るのが正解だった。侯爵家の代表でありながらも、あくまで非公式なお忍びという形で接触を測る。


 決して相手を怒らせない、無茶を通さず断られたら潔く身を引く。


 そんな対応こそ正解だったが、マドレーヌはエクレアが辺境に居ただなんて知らなかったので家とは無関係な者を送った。

 マドレーヌ個人のわがままに近い理由で辺境……王都からだと片道一ヵ月もかかるようなところに数の限りがある関係者を送るにはいかなかったのだ。

 彼等は他にもこなしてほしい仕事があるし、転生者と思わしき魔女が故人とわかった以上辺境行きのお使いミッションは外部……


 最初に『味噌』と『醤油』を持ち込んで来た商人を信用し、魔女の弟子充てに手紙を託したのだ。



 それこそが三つ目というか最後の選択肢の間違い。

 依頼した商人は一見すれば有能にみえるも、実態は無能な働き者ともいうべきとんでもないジョーカー。

 すなわち、このジョーカーを信用してしまった事実こそが致命的失態(ファンブル)の真相であったわけだ。

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