表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/161

5.あの時の私を全力で殴ってやりたい

100話と20万文字突破!!ヾ(:3ノシヾ)ノシ

 マドレーヌが取った選択の過ち。


 まず一つ目がヒロインのエクレアが居るであろう最有力候補のカカレット男爵家の調査。


 そちらはエクレアの存在が認知されてなかったので結果としてみれば空振りだった。

 ただし、男爵家の不穏ありまくりな噂が手に入ったので、全く無駄足ではない。


 なにせあそこの男爵夫人は学生時代に王太子を薬で誘惑したとんでもない悪女という噂があったのだ。

 当時は継承権第一位と第二位の皇子が派閥を巻き込んだ泥沼の継承権争いをした上での双方自滅だ。貴族間のパワーバランスが崩壊した中で急遽第三位だった現王が王太子に繰り上げられたわけだ。

 本来なら野に下って平凡な生活を送る予定だった第三皇子なので派閥は持ってない。故に当時は本来の婚約者を押しのけてまで王妃の座を手に入れようという野心に燃えた令嬢達が溢れた、とんでもない修羅場。彼女だけが悪女というわけでもないが……


 彼女は学園卒業後も悪女であった。

 争奪戦に負けて本来の婚約者からは婚約破棄。実家の伯爵家を勘当されかけたものの、カカレット男爵家の三男の妻の座の獲得に成功。


 それからほどなくしてカカレット家の跡継ぎである長男が妻子もろとも事故死。間髪入れず次男も妻と共に自殺。三男の本来の婚約者はある日忽然と姿を消して行方不明。

 その元婚約者こそが男爵家で起きた数々の事件の犯人であり、犯行がバレそうになったから逃げたとされてるが……


 ドロドロの陰謀劇が当たり前な貴族社会としてみれば、その行方不明となった元婚約者……ルリジューズは現男爵夫人となったショコラ男爵夫人に冤罪をかぶせられたのだろう。

 罪をかぶせられた上で『死人に口なし』として殺されたのだと思われたが……



 カカレット男爵家の血筋を引いているエクレアの出自を考えると、ルリジューズは殺される事なく逃げ切れたとみていいだろう。

 逃げた先でエクレアを生んだ……が、どこに逃げたかまではわからない。


 ルリジューズも馬鹿じゃなければ逃亡時に自分の痕跡は隠すだろうし、その痕跡も10年以上の年月の前にはもう消えているはずだ。

 つまり、カカレット男爵家からルリジューズ……エクレアの所在を探し当てるのは不可能に近かった。



 だが、収穫はあった。

 これらの情報から学園でエクレアがとった行動は後釜についた悪女のねじ曲がった教育によるものと推測できる。

 あの『脳内お花畑』な振る舞いは薬漬けにされて正常な判断を失わされていたなら納得できる。王太子に近づいたのも、悪女の果たせなかった夢というか野望を託したならありうる。裏モードも貴族達が母に冤罪ふっかけた恨みから来るものとすれば、悪女から利用されるのではなく利用するつもりで薬学知識を吸収したともとれる。


 なら対処は一つ。

 エクレアが養子として迎え入れられる前に男爵夫人の罪を暴く。

 養子へと入る前に母の冤罪を証明させておく。


 エクレア自身が元々『お花畑ヒロイン』だったらどうしようもないが、薬学知識の大元を絶っておけば少なくとも裏モード突入は避けられる。


 あの“狂気”に侵された『毒花畑ヒロイン』になる道だけは避けられる………











 っと思ってた時もありました。







「アー殴りたい。男爵家の調査を頼んだ調査員が持ち帰ってきた情報をみてほくそ笑んでいた、あの時の私を全力で殴ってやりたい」


「自分で自分を殴るのはやめてください。殴るなら是非とも弟を」


「いいぜ殴って来いよ。その拳を全力で姉ちゃんにうけながしてやるぜ」


「えっと、受け流しを無効化する必中の攻撃は……百式観音でしょうか」


「えーい、そんなもん使えるか!!!」


 頭が疲れる……やっぱりもうちょっと良い人材探すべきだったかしらと思うぐらいに疲れる。


「そんなひどい、私の身体に飽きたからって即座に捨てるだなんてさすが悪役令嬢。極悪非道の人でなし」


「そーだそーだ、労協に訴えるぞーって労協はないか。じゃぁ……どこに訴えたらいいんだ?」


「エクレアさんでいいのではないでしょうか?今回の件でお嬢様に対してヘイトが溜まりましたから、助けを求めたらきっと手を差し伸べてくれるでしょう」


「それいーな。エクレアさん、『味噌』と『醤油』を製作者なんだろ。もしかしたら同じ転生者だったりしてな」


「その辺りどうなんでしょうか?お嬢様」


「どうって……だから、わからないのよ」




 辛うじてそう呟きながらマドレーヌは机の上……自分の顎で下敷きにしている辺境から帰還してきた代理人……じゃない。

 無能。とんでもない無能。雇い主に害悪しかもたらさない無能の代理人の報告を思い出しはじめるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ