表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/49

6-6.想定外の開拓地(1)

アーデルハイトは、リタ(マルグリット)を連れて、祖父の治めるシャトノワ家の町、エシロルへと戻って行ったが、事情を説明するためにダミアンとアランの2人の人員を残していった。


本来であれば、事情を説明したうえでリタ(マルグリット)を連れ帰るのが理想だが、

早急にリタを連れ帰ることを優先したためだ。


リタ(マルグリット)が特別な能力を持つことを知ったことと、リタ(マルグリット)のここでの立場を、単に匿ってもらっているだけで重要な存在ではないと考えていたためだった。


そのため、アーデルハイトを含め、一行は、シャトノワ家の者がリタ(マルグリット)を連れ帰ると言えば、大きな揉め事など無しに連れ帰ることができると思っていた。

(魔女にそれなりの金を渡せば済むと考えていた)

※貴族にとってのそれなりの金というのは、庶民から見ると相当な額で、

 さらに立場の差があるので、ほとんどの場合、それなりの金で解決できてしまう。

 貴族の常識は、そんなものです。

 一方で魔女様は金の価値知らないので、金積んでも無駄なのですが。


アーデルハイトは、リタが森の魔女のところに身を寄せていることは知っていたが、単なる居候であり、魔女にはさほど重要視されていないと考えていた。


そもそも、普通に考えれば、リタ(マルグリット)の避難先はシャトノワ家になる。

今回は、シャトノワ家に辿り着くのが困難だったため、魔女のところに身を寄せた。


アーデルハイトは、本来行くべきところにリタ(マルグリット)を連れて行っただけと考えていた。


アーデルハイトはリタ(マルグリット)の従兄であり、シャトノワ家はリタ(マルグリット)の父はシャトノワ家の出身だ。母方のラスカリス家が滅んだ以上、シャトノワ家に身を寄せるのが通常。


ダミアンとアランも同様の見解だった。

ダミアンとアランは下位の貴族の家の出であり、『もし自分がマルグリットの立場であればどう動くか』というのは比較的想像しやすかった。


普通に考えれば、シャトノワ家に身を寄せることになる。


現在森の魔女のところで匿ってもらっていたとしても、それは一時的な避難先に過ぎず、安全に行くことができるならシャトノワ家に行くはずだと考えた。

迎えが来たなら断ることは無いだろうと考えていた。


貴族的な思考では、あまり悩まずその結果に至る。

貴族令嬢として幸せに暮らすには、それが最適であると考えるのは普通であった。


========

■解説

 基本、貴族の子息で家を継げるのは1人だけです。

 上位貴族であれば、次男以降も跡継ぎが居ない遠縁の村貴族になることもありますが、

 下位貴族の場合、次男以降はせいぜい、かなり傾いた村貴族に

 婿入りできることがあるという程度で、好条件は基本無いです。

 ※傾いた村貴族が婿を迎えるのは実家の支援に頼るためなので、

  ある程度裕福でないと無理です。


 そのかわり、家を継げない貴族子弟の受け皿として、貴族出身で無いと

 なれない仕事が多く存在します。

 

 女性であれば、町貴族(中、上位貴族)の身の回りの世話をするメイドは

 貴族出身で無いとなれません。

 例として、カリーヌさんは貴族の家の出です。

 メイドの中でも直接貴族と接しないような仕事(単純労働)は下女が行っています。

 下女は平民であり、貴族と直接話をする機会はほとんどありません。

 (男の場合はもっと極端で、屋敷で働く男の多くは下男。警備の上位は貴族出身)


 領地無しの貴族子弟同士が結婚して子供を作っても、子供は貴族出身では無いのですが、

 単なる平民よりは上の扱いになります(だいたい、それなりのコネがあるので)。 

 代々仕える……という立場になると、もう、その地位が保障された状態になります。

(貴族ではないけれど、代々仕える家臣という扱い)


 ダミアンさんとアランさんは貴族の出で、貴族はある日突然領地を乗っ取られる

 可能性があるため、自分がリタ(マルグリット)さんの立場であれば、

 どのように行動するかを、かなり現実的に想像することができます。


 ……ただし、その想像が実際にリタ(マルグリット)さんの行動と一致するかは

 別の話ですが。普通はこう動くだろうということが想像できるという話です。


========


アーデルハイト一行は、カステルヌにも寄らず、魔女の森に向かう途中で襲撃を受けたため、リタ(マルグリット)の近況についての情報がほとんど無かった。

その状態でリタが現れたため、リタ(マルグリット)が現在どのような状況に置かれているのかをほとんど知らなかった。


アランとダミアンが魔女の森に向かう途中で荷物を運ぶ人たちに会い、新たに村の開拓中であることがわかった。

なんと、マルグリット様が開拓中の村だった。


「マルグリット様が村を開拓しているのか?」

「カステルヌからそう離れていない場所で新たな村の開拓?」


2人は驚いた。これは予想外であった。

村の開拓は簡単なことではない。


だが、これだけの荷物を運んでいるのだから、それなりの規模の開拓地が存在するのだ。

さらに、荷物を運んでいる人たちの姿は疲弊しきった感じなど無く、それなり景気が良いように見える。


道も頻繁に人が通るように見える。

馬車が通れるほど整備されていないが、この量の荷を定期的に運ぶとすれば、道が整備されるのも時間の問題だろうと思う。


これは町をあっさり乗っ取られるという程度の力しか持たない若いお嬢様ができることではない。

そんなことができる力があれば町をのっとられることはないし、村を作ろうとしても邪魔されるはずだ。

そう考えると、マルグリット様の背後には何者かが存在し、ガティネ家とも何らかの協定があるように思う。

そうなると、2人の想定から大きく外れてしまう。


森の魔女の後ろ楯でガティネ家の協力を取り付けたのだろうか?


これでは、開拓地の今後についても調整する必要が出てしまう。

リタ(マルグリット)を何の断りもなく連れ去ってしまったので、村の開拓事業はアーデルハイトが引き継ぐことになるのだろうか。

マルグリット様本人が事業に深くかかわっている場合、想定から大きく外れてしまう。


「まずは、その開拓地に行ってみよう」

アランとダミアンは魔女について聞くためにも開拓地に行って情報を集めることにする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ