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82 ネット小説だと鑑定は大抵チートスキル

「というかそんなチート過ぎて逆に身を滅ぼすような鑑定スキルなんて、持ってても意味無くない?」


 モズの背中を軽く叩いてそろそろ離れるように促すが、ピクリとも反応しないので、仕方なくそのまま背中を撫でる。

 撫でられて満足したら離れるだろう。多分。


「実際、人族には過ぎた力だろうね。本来はこの時代で言う所の、宙族が持っている力だ。それも、かなり力の強い部類のね」

「マジかよ。……えっ、じゃあモズには宙族の血が流れてるとか、そういう可能性があるとか」

「それは無いかな。鑑定スキル自体は、不完全なものならば人族や旧人類、古代人も有することがある。君が知っている程度の能力である鑑定スキルがそれだ」

「じゃあ完全版鑑定スキルを普通に使いこなしているモズが例外ってだけか」

「そういうことだね」

「例外にしてもどうして平気なんだって話なんだよなぁ。そんな爆弾みたいなスキル持ってるなんて心配なんだけど」

「見なきゃえい」


 モズは相変わらず私に抱きついて下腹に顔を埋めたままだが、どうやら話は聞いていたようで、私の質問に答えるように話す。喋った時の吐息で、下腹が少し暖かくなった。


 この状態のモズは基本的に話しかけても貝のように口を閉ざすのだが、珍しく言葉を発したので、驚いて少し背中を撫でる手を止めてしまった。

 それが不服だったらしく、催促するようにぐりぐりと頭を擦り付けてくるので、再びモズの機嫌取りを開始した。


「いや視界に入ってくるモンを見なければ良いって無理じゃね?」

「それを認識しなければ良いんじゃないかい?」

「あー、キッチンカーとかコンテナ改装タイプで出店してる出店だと、目の前にメニュー票があるのに一切見ずに『何あるの?』とか『いくら?』とか言う客居るけど、そういうのと一緒か……。視界に入っているけど一切意識が向いてないやつ」


 アレ、メニューの説明しなきゃいけなくて二度手間になるし、お客さんが行列を成してる時にやられると時間取られるしで滅茶苦茶イラつくんだよな。


 私は高校時代のバイト先がそういうタイプのたこ焼き屋だったのだが、社内売り上げトップ10の店に放り込まれてしまって、毎日のように長蛇の列を成す客の中に紛れるそういうタイプの奴を相手させられた事を思い出す。


 今思えばクッソブラックだったなあそこ。日給制で残業代出なかったし。

 閉店時間過ぎても、ペア組んでるベテランが残っても行列を指差して「今残ってるお客さんまでは出すから」と言って結局三十分くらい残業させられるし、翌日の仕込み等があるからと電気を付けていると窓を閉めていようが客が寄ってくるし、それで閉店を知らせる掛札や営業時間が過ぎてると気付いてくれれば良いが、デカデカと書いてある営業時間や閉店の文字を一切見ずに、窓を閉めていてもノックしたり裏口を開けてきて「まだやってる?」とか言ってくる客がそこそこ居るのが本当にしんどかった。

 高校卒業と共にそのバイトを辞めた時は、「絶対こんな仕事二度とやらない」と決意した程だ。


 ……いけない、思考が変な方向に脱線してしまった。


「スルースキル鍛える程度で耐えられるようなもんなの?」

「普通、ヒトの脳では処理しきれない情報量のはずなんだけどね。エルフだったら三十秒……いや、もっと短いか。十秒くらいなら耐えられるかな?」

「むしろ耐えられるエルフが何モンだよ。……いや公式チートか」


 ARK TALE、及び同一世界観に登場するエルフは、公式がチートキャラだと明言している。

 詠唱破棄でスペルを使うのは勿論のこと、得意不得意はあるものの複合を含めた全属性のスペルを使いこなし、素の身体能力も、身体強化を使った人族に劣らないレベル。繁殖能力が低い以外は、人族の完全上位互換と言って良い。


 そんなエルフがたった十秒しか耐えられないようなスキルを常時発動しているってどういうことなの。お前がチートキャラだよ。


「そもそもいつから鑑定使えるようになったんだよ。もっと早く言ってくれればいいのに」

「ずっとこう」

「ずっとって……まさか、パッシブスキル的なものか!? じゃあ生まれたときから鑑定スキル発動しっぱなし!?」

「鑑定眼って言ったじゃないか。魔眼は概念的にはパッシブスキルだよ」


 言われてからそういえば、とARK TALEの一部キャラクターを思い出す。

 魔眼を使うキャラクターは全員、パッシブスキルに魔眼を有しているのだ。例として挙げるなら、クリティカル率を何%か上げる効果がある千里眼や、ものによっては、攻撃時に確率で状態異常にするような石化の魔眼がある。

 そして大体が眼帯等の目隠しをしているか、そもそも普段から目を閉じているキャラクターが殆どだ。一応任意で効果のオンオフが可能なキャラクターも居るのだが、少数派だ。


 この世界における魔眼というものは、基本的には目を開いている時、または目を合わせることで発動するものなのだ。


「しかし、なるほど……それなら慣れで、情報の取捨選択が出来るようになったのかもしれないね」

「慣れで何とかなるもんなのそれ」

「なっているじゃないか。僕自身が鑑定を使える訳じゃないから、どの程度の確率でそれが可能なのかは分からないけれどね」

「えっヘーゼルは使えないの? じゃあ何で色々と知ってたりすんの?」

「一から百まで実験・観測を行った結果だよ。知らない事を探求するのは楽しいからね」


 科学者のようなヘーゼルの発言は正直同意するが、何とも自称神らしくない。


 モズにこいつの正体がなんなのか聞いてみようと思ったが、それよりも、ふと脳裏に思い浮かんだ過去の記憶に意識が引っ張られてしまい、その考えは四散してしまった。


「そういや、ちょっと前に私が異世界人だってこと気付いてるみたいな発言してたなぁ……それも鑑定で見えたからかねぇ」


 モズは声を発さないが、小さく頷く。頭が揺れたせいで香箱座りをしていたヘーゼルがずり落ちて、不満そうにうるるると小さく唸った。

 もう一度よじ登ろうとするが、モズが嫌がるように首を振って振り落とすので、仕方なく背中の方で妥協して座った。が、あまり座り心地が良くないのか、結局私の枕に移動して占拠した。

 流石に後ろに居られると首を回すのがキツいので、枕を引っ張って自分の横に移動させる。


「感情って鑑定で見えるもんなの?」

「見えるね。それに、何を考えているかも分かるよ。だからこの子は、君に懐いているんじゃないかい?」

「何でさ。それだったら絶対ルイちゃんの方に懐くはずじゃん」

「善性も悪性も程良く持っていて、それでいて敢えて善性を選ぶ所が気に入っているんだと思うよ」

「人の心が分からん毛玉のくせになーに言ってるんだか」


 小生意気な毛玉をわしゃわしゃと撫でてやる。常々荒っぽい撫で方は好きではないと言っているヘーゼルは嫌そうに顔をしかめて低い声で唸り、途中で手に噛みついてきた。が、本気噛みではないなら大して痛くはない。ヘーゼルも、やめてくれという意思表示でやっているのだ。


 モズが私に懐いているのは、せいぜい一番大人だから頼りがいがあるとか、最初に優しく話しかけたから刷り込みで優しい人だと思われているだけだろう。

 本人が何も言わないので本当のところは分からないが。


「……もしかしてだけどさぁ、自分が感情も思考も全部見えるから、相手も同じように見えてると思っててあんまり喋らないとか、そういうことある?」

「……?」

「あっこの反応『普通見えるもんじゃないの?』って思ってるやつだ。トワさん聡いから分かるよ」

「自分で聡いとか言うのかい?」

「お黙り」

ご清覧いただきありがとうございました!


14話から 「ねえちゃんは良い人なん?」

→良い人だけど悪い人でもあるのに敢えて自分を心配しているので疑問に思った。

実は別にトワに対する質問ではなく独り言である。


上記に対するアンサー 「悪い人じゃないけれど、良い人でもないよ。一人で歩いている子供を放っておける程、薄情ではないだけだよ」

→本心からそう言っているし実際そうだと判断。

心の中では確実に面倒に思ってたりしているのに、自分のために善性の方を優先しているのが嬉しかったので全幅の信頼を置くように。

ルイのように善性が強い人は他者に優しくするのが普通だし、悪人は論外。

善性も悪性も同じくらいの比率なのに、自分のために善性を優先してくれた、というところがモズとしてはポイント高かった。


トワが恐怖を感じていたのに構わず襲ってきた理由

→こわいっていうのがよぐわがんにゃい(情緒の発達・理解能力が未成熟)


別に本編で描写する予定が無い設定なのでここで解説しました。


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