表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前が神になるのかよ!  作者: nama
第二章 新たな仲間編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/142

028 リデルの異変 1

 カノンは一度神の領域へ戻り、そこで準備を整える。

 自分のものだけではなく、ダグラスやマリアンヌの分も用意した。

 あとで彼らに見せて驚かせるためである。


 二頭立ての馬車と旅の資金は、教会や街の住民が用意してくれた。

 特にゼランの街の司教が書いた身分証明書は、国境を越えるのに役立つだろう。

 こればかりは、カノンでも用意できないものだった。


 ダグラスたちは別れを惜しむ人々に見送られて街を離れた。

 まず彼らが目指す先は、リデルである。

 そこから西方へ向かう。

 街を離れたところで、御者を任されているダグラスにカノンが話しかける。


「いやー、馬車って結構揺れるんだな。でも歩かずに済んでよかったよ」

「僕もカノンさんを担いで歩かずに済んでよかったです」

「それは言わないでくれよ」


 カノンが笑った。

 その表情に世界を救うという重さは見えなかった。

 それは二十代半ばくらいの普通の男そのものだった。


「それにしても、御者までできるんだな」

「必要になりそうな技術は一通り仕込まれていますから」

「じゃあ、船とかも?」

「手漕ぎボートなら動かせますよ」

「おおっ、すげぇ! あれってすぐ疲れるから難しいんだよな」

「カノンさんの体力がないだけですよ」


 ダグラスは、カノンのテンションの高さが気になった。

 おそらく“旅に出る”という事を楽しみにしているのだろう。

 旅を楽しみにする気持ちはわかる。

 だが、ダグラスには大きな懸念があった。


 ――このままのテンションで絡んでこられたらどうしよう。


 これは重要な問題である。

 ウザ絡みしてくる相手ほど、うっとうしいものはない。

 カノンのテンションが上がれば上がるほど、ダグラスのテンションは下がっていった。


 だが、ダグラスの心配は杞憂に終わる。

 しばらくすると、カノンは馬車の揺れに耐えきれなくなって静かになったからだ。

 マリアンヌが眠る棺桶の隣に横たわり、息も絶え絶えになっている。

 ダグラスは静かな旅ができそうな予感がしていた。


 ――しかし、それも数時間だけだった。


 リデルに近付くにつれて、異常を感じたからだ。

 街のいたるところに死体が転がっていた。

 中には骨だけであったり、腐っているものもある。

 それを街の人々が片付けていた。


(この街でも死者が蘇ったんだ!)


 これまでダグラスは、死者が蘇ったのはゼランだけの事だと思っていた。

 神の領域が存在する場所であり、マリアンヌが現れたりしていたためだ。

 だが、それは思い込みに過ぎない。

 周囲の街――いや、それだけではない。

 世界中で死者が蘇っている可能性も十分にあったのだ。


(なにしてくれてるんだ、こいつは! 世界を救うどころか、事態を悪化させてるじゃないか!)


 ダグラスは、カノンを見る。

 個人的には彼を神のような存在だと思ってもいいと考えている。

 しかし、それは個人(・・)の考えである。

 この世界に生きる者(・・・・・・・・・)としては、カノンの存在が禍々しいものに思えてきてしまう。


 カノンが何かに失敗したのを見ていなければ、彼の事を本物の救世主や神だと信じていられたかもしれない。

 だが、ダグラスは見てしまった。

 さすがに食べ物で釣られるにも限度がある。

 あの時、カノンの首を掻っ切ってやらなかった事を後悔し始めた。


「あんた!」


 道沿いの家から、見覚えのある女が出てきた。


「ナタリアさん、街の様子は――」


 状況を確認しようとすると、話を聞かずにナタリアが御者台に駆け寄ってきた。

 何かに怒っている様子ではあるが、ダグラスに危害を加えてくる気配はなかった。


「あの男はゼランに残ったままかい?」

「いえ、後ろに乗ってますけど……。あっ、ちょっと!」


 ナタリアは御者台から馬車の中へと入り込む。

 馬車に横たわるカノンを見つけると、顔を踏みつけた。

 カノンがうめき声をあげる。


「起きな!」

「いったい、なんなんだ? うぉっ」


 目を覚ましたカノンの胸倉を掴み、ナタリアが強引に立たせる。


「あんた、あの時言ったよな? あんたがゼランに着いたら世界は元通りになるって!」

「ええ、まぁ……」


 寝起きではあるが、カノンはなんとなく状況を察していた。

 真っ向から否定すれば激昂されると思い、仕方なく言っていた事を認める。

 しかし、それは意味がなかった。

 どう答えていても、ナタリアの対応は変わらなかっただろう。


 それは――


「ゾンビにケニーが……。ケニーが殺されちまったよ! 


 ――相棒のケニーが死んでいたからだ。


 親切にしてくれた相手だけあって、カノンも悲痛な表情を見せる。

 お悔やみの言葉をかけようとするが、その前にナタリアの拳が顔面に飛んできた。

 折れた歯が宙を舞う。


「よくも騙しやがって、この人でなし!」

「待って、待って!」


 カノンは両腕で頭を守る。

 ナタリアはがら空きになった腹を殴り始める。

 すると、カノンは腹を守り、顔を殴られた。

 彼は喧嘩慣れしていないのだろう。

 ナタリアにいいように殴られていた。


 カノンが邪神である可能性もあるので、この状況を放っておいてもかまわないとも思える。

 だが、ダグラスは“カノンが世界に影響を及ぼす力を持っている”という事を知っている。

 ただのドジなだけかもしれないのだ。

 まだはっきりとわかっていない以上、ここで死なせるのは得策ではない。

 仕方なく、ダグラスは止めに入る。

 ナタリアの背後から羽交い締めにする。


「ナタリアさん、カノンさんは神の領域に入られました。それはゼランの司教猊下たちも確認しています。本物なんですよ!」

「だったら、なんで世界が元に戻っていないんだい!」

「それは……、悪しき力が邪魔をしているとかなんとか言っていましたが……。僕には説明できません。説明できる人は、今死にかけています。手を離してあげてください」

「くっ……」


 ナタリアも怒りに任せて殴っていたが、街中で無実の人間を殺す事がマズイというのを忘れていない。

 彼女も、その程度の理性は残っていた。

 カノンを殴る手を止める。


「カハッ」


 だが、カノンはかなりの傷を負っていた。

 出血により鼻呼吸ができず、口の中もズタズタになったのか血を吐き出す。

 ナタリアが手を離してくれたので、床に尻もちをつく。


「ひ、癒し手(ヒーリングタッチ)


 息も絶え絶えになっているカノンは、スキルを使って傷を治す。

 その光景を見て、ナタリアの体から力が抜ける。


「魔法? まさか……」

「私は神です。ですが、今回は世界を救う事はできませんでした。他のサンクチュアリにも赴かねばならなくなったのです」

「……その事情、説明してもらえるんだろうね?」

「もちろんです。ナタリアさんとケニーさんは、この世界で初めて私を信じてくださった方です。義理は果たします」


 カノンは顔をさすりながら答える。

 彼の顔はもう元通りになり、歯も生えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッグガーデン様より「いいご身分だな、俺にくれよ」の書籍化とコミカライズが決定致しました!
まずは2024年1月20日12時よりマグコミにてコミカライズが連載開始!
画像クリックで漫画のページに移動します。
表紙絵
― 新着の感想 ―
[良い点] まさかケニーという名前が伏線だったとはw
[一言] 面白すぎると思ったらいい身分だなの作者様でした。魔法ありのファンタジーを書いてくれたら絶対面白いと思ってましたが、やはり面白いです。
[一言] ナタリアさん殴ってしまったねぇ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ