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17 幕間 レーダー提督の憂鬱

1938年 1月 キール軍港


「ありがとうございます閣下。これで部下たちも士気を取り戻せます!」


新年早々の総統閣下との会議で決まった内容を部下に告げると、部下達は顔を輝かせた。

『総統閣下も分かっておられるではないか』などと呑気なことを言ってる者すらいる程だ。

そんな部下たちを見て、レーダーは複雑な気持ちになる。


(確かに久しぶりに良いニュースではあったが・・・)


一昨年の秋の会議で新型戦艦二隻、重巡洋艦2隻、航空母艦1隻の建艦が中止となった。

一昨年の秋は海軍だけでなく、陸軍、空軍も兵器生産の大幅な見直しがされたが間違いなく一番わりをくったのは海軍だとレーダーは考えている。


他の2軍は生産スケジュールなどは見直しがなされたが、予算規模はそこまで削減されていない。


それどころかユンカースやダイムラー、BMW、MAN社といった航空機や戦車のエンジンを製造するメーカーは新規工場を立ち上げるための融資がおりているのだ。


(生産数を減らすどころか増やすつもりではないか!)


それが分かっているからこそ、陸軍も空軍も『これでは軍拡競争に勝てない』とか不平を口にはするがあっさりと総統の指示に従っているとレーダーはみている。


レーダーも『だったら海軍もドックの拡大を!』と抵抗したのだが、総統からの答えはレーダーにとっては厳しいものだった。


『いいともレーダー提督。ドック及び生産設備の拡大を認めよう。但し潜水艦用のな』と総統はのたもうたのだ。


デーニッツ提督一派は大喜びをしていたが、レーダー一派からすると期待外れもいいところだった。

レーダー一派からすると、ほとんどゼロ回答に等しい。


(それに比べてデーニッツ一派ときたら、腹立たしいかぎりだ)


ついこの間先行量産艦が完成したⅦ型潜水艦の生産に加え、水中行動型のUボートであるX型潜水艦とさらにはそれを2000トン近い規模にまで大型化させ次世代型Uボートの試作まで行っている。


潜水艦乗組員も大量募集を行っているそうだ。

なんせ一隻につき、3グループの乗組員が割り当てられるそうだ。


(こんな事なら大将を辞めて一水兵になってやろうか)


そんなしょうもない事すらあたまをよぎるほどだ。


勿論その為の予算もふんだんに割り振られている。


実は海軍全体でみれば、修理設備の拡大や、潜水艦大量建造用のドック設備の拡大・改修などへの直接的な投資と、より分厚い船殻の製造を可能にするための関連企業の設備改修の助成といった間接的な投資を含め

ると予算全体としてはそこまでの減額をくらっている訳ではない。


だが、レーダー一派が求める艦艇整備計画への新規投資は1937年度予算においてはゼロに近かった。


そんな訳でレーダー一派は士気消失意気消沈していたのだ。

その士気の低下具合といったら新規隊員の募集にも支障をきたすほどだった。


その様子を総統閣下が見かねたというわけではないだろうが、1938年度予算において新規水上艦の建造が承認される運びとなった。


(こんな規模の予算が通るとは思っていなかったがな)


予算要求をしたレーダー自身も驚くほどの額。


『え?』と、ゲーリングもブロンベルク大臣も驚いていたから総統閣下とシャハト大臣、クロージク大臣の3人で下話をしていたのだろう。



レーダー一派が欲してやまなかった新型戦艦建造は凍結されたままだったが、建造延期されていたヒッパー級重巡洋艦は機関を従来の超高圧機関から換装することを条件に2隻の建造再開が承認。

そしてヒッパー型重巡洋艦の設計を流用する形で航空母艦の建造の再開も承認されたのだ。


当初建造予定であった航空母艦と比較すると半分程度のサイズではあるが、その代わり合計3隻の建造が承認された。


加えて駆逐艦も数隻の建造が予算計上なされており、当初ほどではないもののそれなりの予算規模となっている。


昨年度までのゼロ回答とは雲泥の差だ。


『これでようやく部下にも面目が立ちます!』と言って部下たちは喜んでいたが、レーダーとしては忸怩たる思いを抱かざるをえない。


『戦艦がない海軍が海軍といえるのか?!』と思ってしまうのだ。


しかも、今回の建艦計画にはとある国の影が色濃く出ている。


特に空母関連はライヒの設計者が直接赴いて各部の設計に全面協力をしてもらったほどだ。


(なんで東洋のアジア人の手を、栄えある我が海軍が借りねばならんのだ)


空母の建造ノウハウが全くライヒにない以上、他国の手を借りるのは致し方ない事はレーダーも分かっているが気に入らないものは気に入らない。


しかも、軍用蒸気タービン技術も互いに開示しあっているのだ。

これはライヒが大金をかけて開発した超高圧蒸気タービンの技術すらも開示するということだ。


勿論、その対価にライヒは色々な技術を得ている。


荒れた海に対応した艦艇の設計技術であったり、酸素魚雷の技術であったり(酸素魚雷に関してはデーニッツ提督が目の色を変えていたが、扱いの難しさを知ると難しい顔をしていた)とライヒが一方的に技術を公開したわけではないが、日本から技術を仕入れること自体がレーダーからすると気に入らなかった。


(所詮我が国は陸軍国ということか)


海軍は国防予算の2割も貰っていない。


これではZ艦隊など夢のまた夢だ。

遅々としてノウハウの蓄積もすすまない。


挙句、東洋のアジア人にノウハウの提供を依頼する始末。


そしてようやく予算がおりたと思えば、護衛艦艇ばかりで主力艦が一切ない。

このままでは空母・巡洋艦・駆逐艦しかいない珍妙な艦隊となってしまう・・・。


(海軍が、栄えあるライヒスマリーネが私の理想からかけ離れていく・・・。)


総統閣下に譲歩したとはいえ、前大戦時の堂々たる艦隊を理想とするレーダーからすると憂鬱以外のなにものでもなかった。





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― 新着の感想 ―
重巡ベースの小型空母だとあまり大きな艦載機載せられないのですよね それこそ東洋の同盟国の艦載機並みの大きさじゃ無いと・・ハッ!まさか
プリンツ・オイゲン(ヒッパー級重巡洋艦3番艦)とグラーフ・ツェペりん、ゆー511が居ればビスまる子が居なくても、まあなんとかなるハズ(艦これ提督並み感想
>このままでは空母・巡洋艦・駆逐艦しかいない珍妙な艦隊となってしまう・・・。 これこそが空母打撃艦隊なんだけど。 やはりこの時代は戦艦が国威の象徴で花形と見られていたからね…。 実用性一択のちょび髭…
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