表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/133

7 幕間 タンク博士 再び

「「「やったー!!!」」」


シュテレーヴィヒ空軍基地の一角で再び歓声があがる。

先ほどはバイエルン社の歓声であったが、今度は私が所属するフォッケウルフ社の声だ。

反対にバイエルン社の面々は微妙な顔をしている。


(まさか採用にこぎつけることができるとはな!)


私は単発戦闘機に加え、重戦闘機でもトライアルに参加していた。


性能差で引き離されてしまい最終選考から漏れてしまった単発機とちがい、重戦闘機部門ではまだ食い込んでいけると踏んでいたのだ。


というのもBf110の対抗機が存在していないからだ。


これには事情がある。


本来重戦闘機のトライアルには我が社とバイエルン社そしてヘンシェル社の3社が応募していた。

我が社とヘンシェル社は空軍の要求項目を満たす機体を設計した。

クライアントからの要望をきちっと反映するのは当たり前のことである。


だが、その当たり前を無視したのがバイエルン社でありシュミット博士だ。


あろうことか翼面荷重や銃座の要件など、機体の根幹にかかわる条件を完全に無視してきたのだ。


当然、出来上がった機体は他の2社とは全くことなるものとなる。

普通、クライアントの意向を完全に無視したクリエーター(設計者)は総スカンをくらうはずなのだが、なぜかそちらの案がむしろ正とされてしまったのだ。


トライアルやコンペというものは競い合う機体があって初めて成立する。

単一機のみの評価となってしまってはそもそもトライアルの体裁をとれなくなる。


役所というのは本来融通が利かないものだ。


トライアルで決めるというお題目なのに、実質は1機種のみの評価試験をしたとなると体裁がわるい。


いつもは腹立たしい思いをさせられることも多いお役所特有の事情なわけだが、ここに今回はつけ入るスキがあると私は踏んだわけだ。


(とはいえ本当に正式採用までいけるかは半信半疑だったがな)


なにせBf110に比べFw187は開発が大幅に遅れていたからだ。


というか、より重戦闘機として相応しい形(トライアル要綱を無視した結果故だが)で登場したBf110 に触発される形でFw187は開発が本格スタートしたのだ。


周回遅れからのスタートととも言えるだろう。


その遅れを挽回するべく、私は徹底的に無駄をそぎ落とす事にした。


対空機銃砲座をつけないどころか、単座に機体の基本構成を変更。

爆弾槽なんていうお荷物ももちろん撤去して機体をよりコンパクトに設計。


その結果シュミット博士が行った、重戦闘機の洗練をより過激に推し進めた機体となったのだ。


つい2ヶ月程前に初飛行をこなしたばかりだが、我ながら素晴らしい機体を設計したとおもう。

小型軽量な分、Bf110を最高速度・運動性能共に上回っており『これで採用間違いない』と開発陣一同喜んだものだ。


(だがこれでも結局かなり薄氷の上の勝利であったわけだがな)


結果として模擬空戦でもスペックにおいても勝利したFw187は重戦闘機として採用されることになったが、総統閣下の口添え(去年のトライアル)がなければ危うかっただろう。



重戦闘機は複座でなければならないという意見や、なぜかBf110を盲目的(タンクからすると)に推す空軍将校が多かったのだ。


実はフォッケウルフ社内でも私の開発方針に疑問を投げかける声はちょくちょくあった。


機体構成を最小限の大きさにとどめた結果、Fw187は重戦闘機側にその特性が寄り過ぎた。


(これでも当初の予定よりかは大きめにしたのだがな)


総統の一声がなければFw187は1線級エンジンのDB600ではなく、2線級のエンジンを使用して設計せねばならないところだった。


Bf110の採用が白紙にもどったことでFw187にDB600を使用する許可が下りたので、若干機体設計にゆとりを持たすことができたのだ。


以前の設計だとエンジン出力不足を補う為に機体を非常に小さくしていた。

その結果、胴体が狭すぎて、コックピットのサイズなどにかなりのしわ寄せがいっていたことは否定できない。

コックピット内に各種計器が納まりきらず、はみ出してしまっていたほどだ。


『流石に狭すぎるだろ』という図面をみたテストパイロットのクレームと、狭すぎてこれではいくら機体を延長しても爆弾槽を仕込むのは無理という切実な設計事情から渋々機体の胴体を拡大したのだ。


軽爆撃機はかろうじて複座、銃座付きの条件は守れたものの爆弾槽の要件は守れなかった。

250Kg爆弾を4発胴体内に格納可能というのが条件だったが、どう頑張っても2発までが限度だったのだ。


重戦闘機型に比べ軽爆撃機型は胴体を延長することで複座と爆弾槽の設置に対応していたが、胴体を伸ばすのも現行の設計でいっぱいいっぱいだった。


無理したら伸ばせないこともないが、それをすると機体のバランスが変わり過ぎるからだ。


(満足な爆撃能力を付与できなかった代償として、爆撃機にしては機動性に優れる機体となったがな・・・)


機体規模を拡大できなかった副産物としてFw187は爆撃機型でもBf110に迫る機動力の確保に成功したのだ。

Bf110も前回のコンペから単座型を用意するなどしていたのだが、『既にBf110に決定だろう』という思い込みがバイエルン社の足を引っ張った。


制式採用後の量産を見据えて動き出していた彼らはBf110の改良を行うには行ったが、ほぼコンセプトキープの形で今回のトライアルに機体を持ち込んできたのだ。


そんなBf110よりも戦闘機側に寄る設計となったFw187だったので、当然ルフトバッフェ内では賛否が分かれた。

前回のトライアルで『より機動性に優れる』としてBf110を推した者の一部がFw187支持にまわってくれたのだ。

一方で、あまりにも爆撃能力を軽視しているという批判的な意見も出てきた。

前回とは立場があべこべになる形で激論が交わされることになったのだ。


(その議論を収束させたのは今回も結局は総統閣下だったな)


Bf110とFw187、それぞれを支持する者の話をしばらく黙って聞いていた総統閣下は一言こういったのだ。


「君たちは色々考え過ぎなのではないかね?一長一短あるならシンプルで速い方にしたらどうかね?」


『そもそも模擬空戦はFw187の勝利なのだろう?』とある種シンプルすぎる正論をぶつけてこられたのだ。



運動性・操縦性・爆撃能力が一定水準なら速い機体の方が優れている。

細かい仕様の議論をするルフトバッフェの連中にちょび髭総統閣下はそんな正論ビンタをふるまったのだ。


『ということはBf110は補助戦闘機ということでしょうか?』と淡い期待をシュミット博士は抱いたようだが、『重戦闘機にわざわざ保険はいらん。それは軽戦闘機で果たせるだろう』とすげなくあしらわれていた。


(これでフォッケウルフ社も大手航空機メーカーの仲間入りだな)


私は目の前のFw187を頼もしく見上げる。

単発戦闘機ほどではないが、『戦闘機』の一種ということでこの機体もかなりの数を受注することが出来るだろう。

しかもこの機体は胴体を少し延長した爆撃機型の受注も見込める。


これに現在開発中のFw190が首尾よく制式採用されれば、フォッケウルフ社は群雄割拠のライヒ航空機業界で頭一つ抜けた存在になれるだろう。


(頼んだぞ!我が鋼鉄の横っ腹。)


今後の輝かしい未来を想像し、思わず私は機体をコンコンと叩いてしまうのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


Fw187(戦闘機型) A型

DB600 850馬力×2

空虚重量 5100kg

Mg17 7.92mm機関銃 4門

Mg FF 20mm機関砲 2門

最高速度 525km


(爆撃機型) A型

DB600 850馬力×2

乗員 2名

空虚重量 5400㎏

前方機銃 Mg17 7.92mm機関銃 4門

後方機銃 Mg17 7.92mm機関銃 1門

爆弾槽内 250㎏爆弾×2 内翼下パイロン×4(各250㎏まで)

最高速度 500km(非爆装) 420km(最大爆装時)

爆装と非爆装での最高速度差は表記が難しいのです・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
史実だとメッサーシュミット一強だった戦闘機部門が大分分散する形になったな。 いずれは重戦闘機は対爆撃機迎撃に使うだろうし重戦闘機よりのFw187のほうが適性は高いか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ