14 カルタヘナ奇襲-7
日も次第に傾いてくる中、俺たちはようやく橋頭保にまで戻ってきた。
「ひっでぇな、これは」
「あぁ・・・」
ようやくスペインにおさらば出来ると、喜びいさんでいた俺たちを待っていたのは、空爆で吹き飛ばされた橋頭堡の無惨な姿だった。
(空爆ってこんなに威力が出るのか・・・)
俺たちは空爆の威力に言葉を失っていた。
ところどころに爆風で吹き飛ばされたと思わしき、木箱の破片やなにかの部品が転がっていたりしている。
トラックも直撃をもらった車両はいないそうだが、爆弾の破片やなんやらで半数近い数が損害を受けたらしい。
地面も爆弾の炸裂で出来たクレーターがそこかしこにぼこぼこと口を開けている。
前大戦従軍歴ありの分隊長が言うには『重砲どころか要塞砲の威力』だそうだ。
要塞砲の炸裂は直接見た事はないが、(『それを見てたら俺はこの場にいない』と真顔で分隊長は言っていた)要塞砲の着弾地点で出来るクレーターのデカさに似ているらしい。
(せいぜい6機ほどだったはずなのにこの威力なのか•••)
だが馴染み(?)の補給班いわく、意外と物資の損傷や人員の被害は軽微なものだったらしい。
ほとんどの爆弾は橋頭保ではなく海に落ちたらしいのだ。
「敵がへたくそで助かったな」
「まったくだ」
なんてトーマスと俺は呑気なことを補給班に言ったりもしたのだが、補給班の表情は暗い。
「やつらが本当に下手くそなだけなら助かるがな」
「「大尉殿!」」
不意に横から話しかけられ俺たちは飛び上がる。
いつの間にか中隊長が横に来ていたのだ。
慌てて俺たちは敬礼をする。
「構わん、楽にしろ。」
そう言われて俺たちは直立不動の気を付けの姿勢から、休めの姿勢に移る。
「貴様らはこの惨状の本質が理解できていないようだな。」
そのまま通り過ぎると思ったのだが、大尉殿は意外な事にそのまま俺たちに話しかけてきた。
(くそ、トーマスの奴余計なこと言うなよ!)
俺は必死のアイコンタクトをトーマスに送る。
『わかってらぁ』とトーマスが頷く。
「特別に少し講義してやろう。貴様らは今目の前の海になにが見える?」
大尉殿が俺の方を見てたずねてきた。
「海にでありますか・・・、がれきが少々浮かんでいるように見えますが・・」
俺はしぶしぶそう答える。
いったい何が正解か分からない以上、見たままのことを言うしかない。
「その通りだ、がれきが少し浮かんでいるだけだ。だがなここには仮設桟橋がもともとあったのだ。それが丸ごと破壊されている。もし偶然ではなく狙ってやったのだとしたら、この意味が分かるか?」
「・・・敵はこちらの補給を断ちにきたということでしょうか?」
桟橋が破壊される意味は俺にも何と無く分かる。
揚陸艇は直接海岸に乗り付けることが出来るが、当然そこにはリスクがある。
船底をすることになるから、揚陸艇も傷むだろうし、離岸にも時間がかかる。
物資の積み下ろしの効率も桟橋で行うより時間がかかるだろうし、そもそも載せる物資の量を減らさないといけないのかもしれない。
「半分正解だ。戦闘を有利に進めるために桟橋を破壊したのは間違いないだろう。もう半分は分かるか?」
「・・・俺たちを逃がさないという敵の意思でしょうか」
横からトーマスがポツリと言った。
(なに勝手にしゃべってんだこいつ?!)
訊かれてもないのに喋ったトーマスに俺は驚いて目をやる。
ふと、トーマスの後ろを見ると『あいつをだまらせろ!』言いたげに、俺をすごい顔で見る分隊長がいた。
(あの分隊長、俺をトーマスの保護者か何かと勘違いしてないか?!)
トーマスではなく、俺を睨んでいる分隊長に俺は理不尽を感じる。
「ほぅ、なかなか鋭いな。その通りだ。敵が苦し紛れに攻撃してくるのだったら分かりやすく部隊が展開しているであろう海岸の陸側に爆撃を集中させるだろう。」
そんな下々の駆け引きなど気にもとめず、大尉殿はトーマスに続きを言うよう促した。
「・・・ですが、敵は桟橋を主目標としています。ほとんどの爆弾が無意味に海に落ちることが予想されるにもかかわらずです。これが意図的である場合、敵は我々に小手先で損害を与えるのではなく、我々の撤退自体の阻止を画策していると推察されます。」
(ト、トーマス?!)
普段のおちゃらけトーマスはどこにやったのか、堂々と自らの考察を述べるトーマスに俺は驚愕する。
目をトーマスの後ろにやると、分隊長も目をひん剥いていた。
「兵の立場でそこまでの推察に至るとはなかなか見どころがあるな。貴様の姓名と所属階級を述べよ」
「SS海兵部隊第1大隊隷下の第1中隊第1小隊だいさんぶん・・・」
「報告します!!」
トーマスの名乗りを遮り、大隊本部付きの伝令が急報をもってくる。
チラッと俺たちを見て、問いかける目線を大尉殿に送る。
「構わん、報告せよ」
「は!先ほど第3中隊から急報がありました。敵戦車部隊の攻撃を受けたとのこと。敵戦車数両を撃破したものの、味方の2号戦車は全滅。敵戦車隊10両ほどはそのまま街道をこちらに進撃中とのことです。第3中隊は街道をそれ、第1中隊が侵攻した経路を反対にたどる形で橋頭保を目指しているとのことです。」
そう一息で報告する伝令兵の顔は青ざめていた。
「大隊本部から指示はでているのか?」
『戦車ときたか・・・』とつぶやいた大尉殿は、伝令兵にそう問い返す。
「は!敵陣地突破にさいし被害が出ていた第2中隊は順次撤収。比較的被害軽微の第1中隊は防衛線を構築するようにとの指示であります!」
(ま、マジか・・・)
『戦車ってやばくないか?』『絶対やばい、あんな鉄の塊勝てる気がしねぇ』
俺とトーマスは小声でぼやく。
「と、いうことだ。諸君らにはもうひと踏ん張りしてもらうことになるな。伝令兵!各小隊長を中隊本部に召集!急げ!敵は戦車だ、一刻の猶予もないぞ!」
大隊本部からの指令を受領した大尉殿は矢継ぎ早に伝令兵に指示をだす。
「承知いたしました!」
大尉の命令を受け、中隊本部付きの伝令兵が各小隊長のもとに走っていった。
「おい、おまえたちボヤボヤするな!見学の時間は終わりだ!総員、装備を再確認しろ!敵がくるぞ!」
分隊長の檄がとぶ。
「「ッ!」」
トーマスと俺は大尉殿に敬礼をした後、分隊長に尻を叩かれながら分隊の仲間達のもどったのだった。
感想をいただいた皆様ありがとうございます。
皆さま、トーマスを殺そうとしないでください笑
そのつもりはなかったのですが、筆者も迷ってしまっております笑




