9 幕間-1 コンテナシステム
1937年1月某日
「これが試作品か?」
「はい、クルップやオペルといったメーカーに依頼した試作品がようやく完成してきました。コンテナ自体はいわばただの鉄の箱ですので直ぐできましたが、固定金具や運搬機はやや苦戦したそうです。これからも改良を続けるとメーカーは言っております」
(要はまともにものになっているのはコンテナ自体だけってことか?)
俺はトートと共にコンテナシステムの試作品群を視察していた。
目の前には様々なサイズのコンテナと、パレットおよびそれらの運搬機械が並んでいた。
(コンテナは未来のISOコンテナまんまの形をしているな)
俺がある程度具体的な仕様を伝えていたこともある、コンテナは前世で見られたコンテナと大差ない仕上がりとなっている。
骨格は鉄骨を組み合わせて作られており、その4角に固定用および吊り下げ用を兼ねる穴の開いた凹凸がある。
そして鉄骨のあいだは鉄の波板でふさがれており、短手の方に観音開きの扉が設けられている。
おそらく前世のコンテナとは違う点もあるだろうが、専門家でもない俺にはほぼ同じに見える。
(サイズはメートル法に合わせたけどな)
前世でのコンテナは米英が主導したこともあり、feet基準で設計されていた。
メートル法を採用するライヒにおいてfeet基準で作る意味はないので遠慮なくメートル基準でサイズを規定している。
その辺は先駆者であることと、俺が独裁者であることの特権だ。
ちなみに12m級が現状の最大規格、そしてそのサイズに合わせるよう9m級、6m級、3m級、1.5m級のコンテナが設定されている。
なお厳密には固定具のクリアランスを考慮して12.3m、9.2m、6.1m、3.0m、1.45mの外寸長さとなる。
ちなみに各サイズ共に幅と高さは共通で2.4m×2.4mとなっている。
(現状だと最大サイズのコンテナはほぼ使われないだろうがな。)
この時代、長さ12.3メートル、重量30トンを超えることもある巨大コンテナを運べるトラックはごく少数にとどまる。
1.45mの4トン級のコンテナ、ないし3.0mの8トン級が主力となるだろう。
オペル社に確認したところ、3トン積みブリッツトラックもギリギリ3m級コンテナは積載できるよう改造可能とのことだ。
普通に積む分だと1.45m級が最適というのがオペル社の技術部の見解だそうだ。
(もっとも、マックスでの積載は厳しいだろうがな)
3mコンテナも最大総重量で10トン超になる。
軽くてかさばるものは入れれるが、重量物を最大積載は現状の運輸インフラでは難しいだろう。
(コンテナシステムを最大限有効に使うには現状のライヒのインフラじゃ難しいか・・・)
これから3m級を最大積載できるトラックは開発していくことになるが、今のライヒにはそこが限界だろう。
ライヒの技術力をもってすればトラック自体は30トン牽引タイプも開発可能だ。
だがそもそもライヒの道路インフラが追いついていない。
橋の耐荷重や、道路舗装の路盤強度、道路幅員など。
大重量車両を常用するには、路線ごとの整備・確認が必要となる。
3m級までが常用できる限界。
トレーラーになる6m級以上は限定された用途での使用にとどまるだろう。
12m級の使用は戦後になってくる気配が濃厚だ。
(まぁ、戦後っていつなんだって話だけどな)
ついつい前世の癖で1945年の後か前かで区別する自分に思わず苦笑してしまう。
「どうかされましたか?」
不意に苦笑した俺にトートがおそるおそる尋ねてくる。
「いや、この短期間でよくやってくれた。これらは一応稼働可能なのかね?」
「はい、全て稼働可能です。これよりデモンストレーションを始めます」
『はじめ!』というトートの部下の指示により各社の技術者が機械を操作し始める。
(うーん、ぎこちなさはあるが・・・なんとか実用に耐えるか?)
6m級を扱うと固定式・可動式を問わずリフターはパワー不足を感じる。
だが、3m級まではどうにか扱えそうな具合だ。
(フォークリフトもなんとか様にはなっているか?)
コンテナシステムはフォークリフトやパレットとの併用で真価を発揮する。
コンテナへの迅速な積み込み、積み下ろし。
人手でちまちましていては折角のコンテナシステムの効率性を生かせない。
コンテナに丁度隙間なく積み込めるサイズのパレットを用意し、そのパレットに効率よく積めるように各種梱包材のサイズを決めていく。
コンテナシステムとはただの鉄の箱を運ぶことなのではない。
小銃1丁の梱包材のサイズから始まり、果ては各種製品自体のサイズにいたるまで。
ライヒ中の製品のサイズを最適化していくことに他ならない。
そして、このコンテナシステムの荷役の効率性を最大限必要とする作戦があるのだ。
可動式のリフトとフォークリフト、パレット、1.5m級コンテナ、コンテナ対応3トントラック。
この全てが早急に必要だ。
「トート、これらはあとひと月でどれだけ用意できる?」
俺はトートに小声で尋ねる。
「あとひと月ですか・・・?」
トートが難しい顔をする。
「コンテナシステムを近々軍が必要とする。後で担当者を向かわせる。早々に打ち合わせをするのだ」
「承知いたしました・・・」
『またなる早の話かよ・・・』と言いたげな顔をしながらそうトートは答えた。
そして、俺とトートのコソコソ話に残業の香りを感じている各メーカーの担当者を横目に見ながら、俺はその場を後にしたのだった。
前話のあとがきに付随して感想を頂いた皆様ありがとうございます。
あまり色々考えず、筆がすすむままに書いていこうと思います。
ご意見頂いた内容も、作者なりにかみ砕いて本作に反映させていこうと思います。
まだまだ長丁場になりそうですが、(アンシュルスすら結構先になりそう・・・)これからも本作をよろしくお願いいたします




