4 SpezielleStaffel-1
時はやや遡る。
1936年9月某日
「ゲーリング、ヒムラーお前たち自分の部隊を作っているようだな」
俺は、ヒムラーとゲーリングを執務室に呼び出していた。
(そろそろこの執務室にも慣れてきたな)
前世の俺は普通のサラリーマンであり、残念ながら役員になることもなかった。
自分の執務室なんて持つことはなかったし、そもそもこんな豪華な部屋は会社になかったと思う。
「そうです閣下!ちょび髭党直属の部隊を錬成しております!ご期待ください閣下!精鋭中の精鋭に仕上げてみせます!」
「まだ実験段階から毛が生えた程度ですが、降下猟兵も様になってきております」
(うん、史実通り各々部隊を作っているな)
軍事面でのちょび髭ドイツの特徴として、陸軍以外にも陸上戦力が存在した事が挙げられるだろう。
(※もっとも、アメリカ軍も海兵隊という陸軍以外の有力な戦力が存在するのでちょび髭ドイツの専売特許というわけではないが。)
ただ、政権直属の軍隊『武装親衛隊』の存在はかなり特異と言える。
日本に無理やり当てはめると、『武装自民党員隊』とでも呼ぶべきものが自衛隊とは別に存在し、しかも10式戦車をはじめとした最新鋭兵器を優先的に供給されているといった状態になる。
カオスである。
(しかもちょび髭ドイツの諸悪の根源に近い組織になるんだよな・・・)
この武装親衛隊、通称『SS』はとてつもない悪名高い組織となる。
後世のみならず、第二次世界大戦当時も評判はすこぶる悪く、連合軍もSS所属の兵士は捕虜に取らないといった動きを一部部隊では公然としていたほどだ。
(そんな組織の誕生をみすみす許すわけにはいかない)
今後、ライヒが戦争でどうなっていくかは分からないが、勝つにせよ負けるにせよSSの存在はライヒの汚点となる。
そして、なにより国内で複数の武装組織が存在すること自体がライヒにとって良くないと思う。
それこそスペイン内戦のように国を割る事にも繋がりかねない。
(とは言え、単純に解散では素直に応じないんだよな)
SSというと武装親衛隊とほぼ同義に扱われるが、厳密に言うとちがう。
SSとは親衛隊の略称であり、軍隊化までした武装親衛隊はあくまで親衛隊の一部組織なのだ。
そしてこの親衛隊というのは党直属の実行部隊であり、民兵組織に毛が生えた程度とは言え、れっきとした武装組織として既に存在してしまっている。
この親衛隊という組織はそもそも突撃隊という別の党直属の武装組織への対抗手段という意味合いも含め創設された。
突撃隊という組織は親衛隊以上に無茶苦茶な組織で、党中央からの統制すら満足に受け付けないという、言わば『ごろつき集団』とでも呼ぶにふさわしいような有様であった。
そんな『ごろつき集団』に対抗するため親衛隊は『エリート集団』として創設されており、入隊に容姿・血脈を含め厳しい選定基準を設けるなどしていたのだ。
そんな『エリート集団』に、「君たちの組織は明日から解体ね。じゃあよろしく!」なんて言ったところで従う訳もない。
それこそ俺が暗殺される。
そこで俺は考えたのだ。
武装親衛隊をどうにか親衛隊から切り離せないか考えたのだ。
そして俺は一つの悪魔的発想を思いつく。
「ヒムラー、ゲーリング。お前たちの部隊だが合併させてもらうぞ」
「「・・・え?」」
二人は凍り付いた。
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「待ってください総統閣下。降下猟兵は空挺降下という特殊技量を要求されます。空軍にしか降下猟兵は運用できません!」
と、太ったからだを揺らして力説するのはゲーリング。
「親衛隊の強化は急務です!国防軍のぬるい部隊などではなく、選ばれた人間が猛烈な訓練をすることのみにより到達できる選りすぐりの部隊が必要です!閣下も同意して頂いていたではありませんか!」
と、鼻眼鏡を吹き飛ばす勢いで抗議の声をあげるのはヒムラー。
(なかなかの抵抗ぶりだな)
それぞれ自らの子飼いの部隊を奪われまいと必死だ。
「ふん、嫌なら構わん」
「「・・・」」
顔を見合わせる二人。
「貴様らの部隊がダメなら、私直属の部隊を組織しよう。」
『いやいやいや』と言いたげに顔を見合わせる二人。
(お前らさては仲いいだろう)
仲が良くないはずの二人だがこういう時には謎の連携をみせる。
「・・・閣下はどの様な部隊を作られるつもりですか」
諦めをにじませた声でゲーリングが言った。
流石、ちょび髭との付き合いが長いだけあって一旦引くタイミングを心得ている。
「これまでにない種類の部隊だ。完成すればまさに世界最強の部隊になるだろう!」
そう言って俺は二人に部隊の概要を説明するのだった。




