51 『すごいです』
看板がなかったらただの一般住宅にしか見えない家屋が私の小さなお城第1号『バケツさんのお店 Lily』です。
販売されているものは主力商品がアイアン系装備。
まだまだ並べた端から売り切れる人気商品です。
それだけに買えなかったお客さんからクレームが来ることもよくありますが、うちの店員さん達はベテランさんばかりですので問題ありません。
他にも私の癒やしである『魔術陣』やマジックインゴット製のアクセサリーなど、人気商品は多いです。
でもそれに混じって★3程度のランクの商品もいくつかあります。
でもこれは私が『召喚』スキルで呼び出しているホムンクルスのホムちゃんや鶴女房のお鶴さんなんかが製作した物です。
彼女達が製作した物は基本的に『召喚』のLv上げの副産物です。
召喚補助スキルとして装備しているスキルの半分のLvしかないのでは仕方ありませんよね。
でも売れないわけではないのです。
素材加工してあるだけでもランク関係なしに結構売れるものです。
もちろん★3未満のランクの物は売れませんけど。
生産にはどうしても素材の加工が必要です。
Lv上げのためにも数を作るのが有効なのですが、素材加工はどうしても時間を取ってしまうものなのです。
そういった手間を購入することで省き、効率をあげようとする人向けなんですよね。
需要は結構あるものです。
今日も私のお城第1号はとても繁盛しているようで何よりです。
そんな私のお城第1号の斜め後ろ辺りに私のお城第2号があります。
名前はそのまんまに『バケツさん工房』です。
そう、ここは私専用の生産設備を設置した工房なのです。
生産設備を建物に設置する場合は買取が必要なので、資金面でとても大変でした。
土地と家屋の買取はもちろん、生産設備にも多額の資金がいりますからね。
特に私は【レンタル生産施設】では扱っていない中級の鍛冶設備を導入しましたから!
ケデリック商会で受けた修行中、ずっと工房の中級設備を使ってその凄さを体験していました。
もう私は初級の鍛冶設備には戻れません!
違和感がすごいんですよ。何より設備の効果は初級と中級では比べることも出来ないほどにすごいです。
初級の設備では★3のアイアン系装備が限界でした。
でも中級の設備にしてからは★4が安定して製作できるようになり、さらにはケデリック商会からのクエストの報酬の一部として親方さんに頂いた『中級鍛冶セット』のレシピで製作した道具が猛威を振るっています。
今まで見つかっている道具のセット系レシピは『初級○○セット・改』まででした。
中級のものは未だに見つかっていないのです。
生産には設備と道具が不可欠です。
素材のランクやスキルLvも当然必須ですが、この2つを疎かにしてはいいものを作るのは難しくなるのです。
もちろん結果は目に見える形で現れています。
中級の鍛冶設備と『初級鍛冶セット・改』では★4のアイアン系装備が限界でした。
ですが、そこに『中級鍛冶セット』を追加することにより、遂にアイアン系装備の『オプション品』を生み出すことに成功したのです。
もちろん『オプション』はランダムですし、どんなに頑張っても必ず付くとは限りませんけどね。
そしてそこにさらに親方さんから学んだスキル外スキルとでも言うべき、レシピでもスキルでもない【ふろんてぃあーず】の独自の鍛冶技術が存分に役に立ってくれるのです。
現実とは違う、仮想現実であるからこその技術といいますか。レシピとスキル、設備を前提とした技術なのです。
これはまさにゲーム内で先達から教わらなければなかなか身につけることは難しいでしょう。
リアルな鍛冶技術とはまた違ったものですからね。
ですがまだ『オプション品』は最近製作できるようになったばかりです。
まずは身内が優先ですので、お店に並んでいるのは微妙な『オプション』のものだけになっています。
それでも今までの積み重ねがありますからね。
★4のアイアン系装備が並び始めたらお客さん達は嫌でもわかります。
まぁすでに微妙ではあっても『オプション品』が並び始めているわけですから、あとは運次第です。
事前にお店に並ぶ商品の一覧はブログで告知されるわけですから、あとは欲しいものがあったら開店前から並んで手に入れればいいんです。
今までも目玉商品が告知されれば並んでましたしね。今更です。
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そんな私のお城第2号の『バケツさん工房』は基本的に大部分を生産設備用のスペースとしています。
初級の設備はそれほどスペースは必要ありませんが、中級の設備はそうはいきません。
今後、中級の設備にランクアップしていくことになるのは明白ですので、今のうちからスペースは確保されています。
まぁ中級の設備の値段は桁が違うのでなかなか揃えることは難しいですけど。
生産設備以外にはちょっと広めのリビングがあるだけです。
寝室やトイレ、お風呂などはゲームなので必要ありません。
まぁ『ルーム』にはあるんですけど。
そのリビングも現在では、私の親友――ミカちゃんと姫ちゃん。
私が所属している『クラン』――『Works』の『クランマスター』――リラルル・ララルこと甘ロリさんと、『クランメンバー』であるお菓子専門の生産者――るーるーさんがいて、楽しく女子会の真っ最中であったりします。
「最高」
「ほんと姫はマロン系好きよねぇ」
「至高」
「そんなに褒められると照れちゃいますよ……」
「るーるーさんはいつも照れてますけどね~」
「そ、それは仕方ないですよ……」
「恥ずかしがり屋さんだもんねぇ~」
「はうぅ……」
お菓子専門の生産者であるるーるーさんはここ最近私達の女子会に参加するようになった人です。
初めて会ったのも『Works』の立ち上げの時ですからね。本当に最近です。
でも毎回新作のお菓子を持ってきてくれるので大好評です。
特に姫ちゃんが大好きなマロン系は毎回必ず一品は入っています。
彼女の作品自体は何度も甘ロリさんのお土産で食べていたりしますが、どれも非常に美味しくて手が止まりません。
すでに私も自分の分を食べ終わってしまっています。残念です。
『空腹度』の回復量からすればお菓子系はそれほど効率がよいものではありません。
でも短いとはいえ、補助効果がついていたりと、最近のるーるーさんの腕前の上がりっぷりは目に見えてわかります。
甘ロリさんがお土産に持ってきてくれていた時はそんな補助効果はありませんでしたから。
何より見た目華やかで繊細で、とても美味しいのです。
「そういえばユリー。露店でもアイアンが売りに出され始めてたわよ」
「そうなんだ。やっぱりずいぶんかかったよねー」
「もうバケツさんには追いつけないですよ~。すでに『オプション品』までいってるわけですからね~」
「ん。助かる」
「次はスティールですかぁ。すごいです……」
「いやーまだまだ遠いと思いますよー? レシピはあってもスキルLv的に安定までは相当かかりますからー」
私が成長しているように、周りの生産者だって成長しているのです。
でもその歩みはログイン時間や生産に充てる時間の差もあり、私が一歩抜きん出ているようですけどね。
進化済みのスキルはLvの上がりがかなり遅いですから。
それに設備や道具、資金面から見ても私は大分リードしています。
この辺も時間が経てば解消されるでしょうけど、その頃には私はもう一歩先に進んでいることでしょう。
何より大部分の生産者が苦手にしている大量の素材を加工する工程を私は楽しんでやれますからね。
まだまだ負ける気がしません。
「ん。呼び出し」
「ありゃ。んじゃちょうどいいし、この辺でお開きにしよっか」
「そうですねぇ~。私もお店の方に顔出さなきゃ~」
「わたしも……」
「私も作業に戻らなきゃー」
「んじゃかいさーん!」
本日の女子会は姫ちゃんの呼び出しを機に終了です。
普段はミカちゃんの方が呼び出されるんですけど、イベントも後半戦に入り姫ちゃんもとても多忙です。
私達生産組の3人は呼び出しなんてほぼありませんけど、それなりには忙しいんですよ?
ちなみに甘ロリさんのお店は無事私のお城第1号の隣で開店しました。
販売しているのも軽装系装備というか、甘ロリさんの趣味全開な甘々ロリータ系ファッションなオリジナル装備がメインで被りません。
重装系装備を使っている人ばかりではありませんし、甘ロリさんの製作する物は姫ちゃんを初めとした一部の女性に大人気なので繁盛しているようです。
そしてるーるーさんのお店なのですが、なんと甘ロリさんのお店の真後ろだったりします。
大通りから路地を2つ挟むので人通りも少なく、静かで住居の方が多い場所です。
まぁ私の工房の2つ隣なんですけどね!
ちなみに他の『クランメンバー』のお店は違う場所にあったりします。
甘ロリさんのお店が私のお店の隣なのは割りと意図的ですけど、るーるーさんの場合は完全に偶然です。
まぁそのおかげで女子会に参加しやすいですから本人も喜んでいるようですけど。
みんなを見送れば先ほどまで騒々しいほどうるさかったリビングも静寂に包まれています。
テーブルの上はみんなで片付けたので綺麗なものです。
元々ストレス排除のために汚れないのですから、残り物を『鞄』に片付けただけなんですけどね。
さてそれでは私は私の作業を再開させましょう。
まだまだ私の製作したものを欲しがる人は大量にいますからね。
いっぱい作っておかないと困るのはクレーム対応をする店員さん達です。
これまでも頑張ってくれている彼女達に迷惑をかけるのはいけません。
さぁ、頑張りますよー!




