31 『あ、運ですか? ですよねー』
南門に帰る時間を考慮して、きりのいいところで生産を終えましたが、正直商品の数がちょっと少ないかもです。
いつもならもっと数を揃えられるんですが、今回は色々と実験とかしちゃいましたしね。反省です。
私の作るブロンズ装備はまだまだ需要が高く、お店に並べれば並べた分だけ売り切れますからね。
数が少ないと店員さんへ詰め寄る人も出てくるので、気をつけないといけないのですよ。
もちろん、度が過ぎる人は衛兵のお世話になるわけですけどね。
次からは補充分をしっかり作ってから実験するようにしましょうかね。
西門の【レンタル生産施設】から変装して出ると、時間もないので駅馬車を拾って南門に帰ります。
駅馬車は何気に初めて乗ったのですが、あんまり揺れないですね。
道も全面石畳ですし、ストレス軽減のための処置も働いているせいでしょうかね。
乗り心地の悪くない駅馬車の窓から眺める街の様子は、徒歩の時とはまた違った趣があります。
こういうのもたまにはいいですね。
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徒歩の時の倍くらいの早さで南門に戻ってこれましたので、まだ少し時間に余裕があります。
『ゲーム内時間』では今はお店は大休憩に入っているところですね。
お店の営業時間は昼タイムの8時から12時までが1回目の営業で、大休憩として3時間休憩を挟んで15時から20時までが2回目の営業となります。
大休憩中は店員さんは完全に自由時間ですので、自宅に帰ってもいいですし休憩スペースで寛いでいても問題ありません。
店員さんもその日によってもみんな行動は違いますが、今日はニロさんだけが休憩スペースにいました。
「お疲れ様ですー、ニロさん」
「お疲れ様です、店長。補充ですか?」
「そうですー。でもちょっと今日は数が少ないので、お客さんにその辺のことよろしくお願いしますねー」
「わかりました。ところで朝頂いたあのケーキはどちらのお店で買えるようになるんでしょうか? 私是非とも購入したいのですが!」
「あーえー……どうでしょう?」
ニロさんは甘い物に目がない人なので、甘ロリさんがお土産に持ってきたあのケーキをものすごく気に入ったみたいです。
その後珍しくぐいぐい押されて色々聞き出されてしまいました。
普段の店員さん達は割りとビジネスライクというか、従業員と雇い主といった関係を崩さないのですが、今日はそんなの関係ないとばかりにぐいぐい押されてしまいました。
まぁ慣れてきたということですよね。私も悪い気はしないです。
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ニロさんに知ってることを全部話して、なんとか許してもらってから補充をしていると、シャーロさんも帰ってきました。
シャーロさんはとても真面目な人なので、まだまだ堅さが取れないです。
でもニロさんみたいに何かのきっかけがあれば、すぐに仲良くなれそうな気はするんですよね。
基本的に雇用時の面接でも性格で選んでいるわけですし。
とはいっても焦ってもしかたがないので、ゆっくり慣れていくことが大事です。
補充を済ませて2人と少しだけお喋りをしたらもう時間切れです。
残念ですが、2人に挨拶してログアウト。
『現実時間』ではお昼ですので、諸々を済ませて再ログインです。
『ゲーム内時間』は『現実時間』の3倍のスピードで進んでいますので、ログインすればすでに大休憩は終了しています。
お店の方は商品を補充したのもあってお客さんで賑やかです。
私が顔を出すと面倒が起こるのは火を見るより明らかなのです。
このまま移動と行きたいところでしたが、ラッシュさんを筆頭に『メール』が返ってきていたのでそっちの対応をするとしましょう。
待ち合わせ場所にするならお店が一番ですからね。
最近の溜まり場はずっとここですし。
なので休憩スペースだけはもうちょっと広かった方がよかったです。今更ですが。
ラッシュさんはやはり『ダブルオプション品』を購入するようです。
姫ちゃんも同様ですね。欲しい商品がいくつか被っていたので順番に販売しましょう。
ミカちゃんからは『魔術陣』に関してですね。
やはりミカちゃんでも驚きの案件だったみたいで、全部購入したいそうです。値段についてはちょっと安いと言われましたが、相場情報を信じましょう。
私が売り続ければ、それが相場情報として安定するはずです。
その他にも新たな『魔術陣』の情報を掲示板に載せるかどうか聞かれましたが、レシピの出処は伏せて載せることにしました。
私の大事な商売道具ですのでもう少しふせさせてもらいましょうか。
今まで色々と私も情報は掲示板に載せていますし、多少の隠匿は発見者の特権ですので問題ありません。
これも一種の開拓です。
開拓者なら自分で切り開いてみなさいってことですね!
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お店で待ち合わせをして、みんなにそれぞれ販売すればログインからそこそこの時間が経っていました。
待ち時間は読書をしたり刺繍をしたりと、まったく苦にならないので問題ありません。
補充分の商品も次の開店時までに用意すればいいので時間も平気です。
『ダブルオプション品』や新しい『魔術陣』は大好評で、次が出来たらまた連絡してほしいと念を押されました。
おかげでお店に卸せるのは微妙な『オプション』のだけになりそうです。
まぁ下取りした装備をリペアして商品にするので、それだけでも十分有用な『オプション品』となるんですけどね。
先行販売しているみんなの装備は基本的に有用な『オプション品』で固められてますので。
今回は女子会はなしで解散となりましたので、読み終わった本を返却して新しいのを借りに行ってから生産するとしましょう。
図書館の閉館時間まではまだあるので、変装してゆっくりと歩いていきます。
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新しい本も借りて、いつもの南門の【レンタル生産施設】へとやってきました。
西門の【レンタル生産施設】とまったく同じなので、帰ってきた感じはまったくしないですね。
さっそく個室を借りて『鍛冶・改』のLv上げを兼ねた補充品の製作です。
ガンガン作っていけばどんどん『オプション品』が出来上がっていきます。
もちろんダブルよりはシングルの方が多いわけですが、それでも少しずつ多くなっているのは確かです。
こういうところでも自分の腕前が上がっているのが……あ、運ですか? ですよねー。
補充分の商品を作り終えた頃には、大分時間が経過していました。
でもいつものことです。大量に作っているのですからそんなもんですよ。
でもおかげでスキルLvはガンガン上がるのですから問題ありません。
さすがに進化した『鍛冶・改』は今までと比べてもなかなか上がりづらいですが。
でも『鍛冶・改』に引き続き、魔力系3種――『魔力操作』『魔力強化』『魔力回復力強化』がLv100になりました。
『鍛冶・改』に続いてLvが高かった『商人』は、自分で販売することがすくなったせいでLvの上昇速度が低下したことにより、追いぬかれたようです。
まぁそれでももうすぐLv100になりそうですけど。
魔力系3種が進化できるようになったのはいいんですが、この3つを進化させると溜まっていたSPが一気に減りそうです。
現在のSPは残り63ですが、進化するには多くのSPが必要ですからね。
さすがに『鍛冶・改』のように20も使うわけではないですが、3つ共15ほど使う必要があるので合計で45も必要です。
魔力は生産に必須ですが、はっきり言ってまったく困らないくらいには余ります。
でもせっかくLv100になったのですから進化させたいのが人情ってもんです。
それに初期スキルを育成すればSPは割りと簡単に回収できますからね。
新たなスキルの取得を検討するいい機会ですし、ここはさくっとやっちゃいましょう!
新たに取得すべきスキルは生産しかしない私でも上げることが出来るものが前提となります。
ですので基本的に戦闘系スキルは除外です。
スキル取得用のウィンドウをスクロールさせながら眺めていると、以前に掲示板で見直されていたスキルを発見しました。
まぁそのスキルの名前は『発見』なんですけど。
このスキル、βテストにはなかった本公開時に新たに追加された初期スキルです。
効果も低Lvでは今ひとつ意味がわからないものだったんですが、使い続けたモノ好きなプレイヤー開拓者が有用なスキルであることを証明したのです。
その効果というのが魔力を消費して「何かを見つける」という曖昧なものなのですが、戦闘で使うとMOBの弱点や動きの起点など様々なものを見つけてくれるのです。
弱点は言わずもがな、動きの起点を見つけるとその場所を攻撃することにより相手の攻撃をキャンセルさせたり、よろけさせたりとメリットがかなり大きいのです。
もちろん見つけた場所を狙い撃てる腕を持っていないとダメですし、魔力系スキルを装備していないと消費する魔力もバカになりません。
戦闘系スキルでも『アーツ』を使えば魔力が減りますので、魔力の配分はとても大事です。
そして最近わかったことは生産でも使えるということです。
なので実は取得を検討していたスキルでもあるので、いい機会なのでさくっと取得です。
続いて取得するのはいつの間にか取得できるようになっていた『集中』。
掲示板情報では集中力が高まる……なんてことはなく、様々なスキルを底上げしてくれるスキルのようです。
こちらも魔力を消費し、その間だけ使用しているスキルの底上げをしてくれる補助系スキルですので、『発見』と一緒に使えば相乗効果を得られるのではないでしょうか。
生産中にも鍛えられるスキルとなるとやはり限られてくるので、次で最後です。
最後の1つは『召喚』。
有名なスキルではありますが、【ふろんてぃあーず】の『召喚』は少し違います。
他のゲームでは戦闘系スキルに分類される『召喚』ですが、【ふろんてぃあーず】ではなんと生産にも利用できるのです。
利用というか、お手伝いといったところでしょうか。
つまり召喚した対象に生産のお手伝いをしてもらうことができるのです。
お手伝いをしてもらえるというメリットもありますが、もちろんデメリットも色々あります。
まず召喚するには召喚補助スキルという、『召喚』以外のスキルを装備している必要があります。
召喚補助スキルは幅広く対象となっているので、この辺は問題ありません。
『鍛冶・改』でも『裁縫』でも大丈夫ですし。
次に召喚中は召喚する対象ごとに最大魔力量が減少します。
減少した最大魔力は召喚を解除すれば戻りますので、魔力がなくなってしまうことはありません。
ですが、最大魔力が減少している間はそれ以上回復しませんので、最大で使用できる魔力量が減るというのがデメリットです。
低Lvのうちは出来ませんが、複数召喚するとどんどん最大魔力が減っていきますので、「召喚は計画的に」なんて言われているほどです。
さらに召喚できる対象も装備している召喚補助スキルによって変わってきますし、召喚中は召喚補助スキルは外せません。
召喚対象のLvも召喚補助スキルのLvの半分が基本となりますので、そこまで戦力として期待することは難しいみたいです。あくまでもお手伝いみたいですからね。
メリットはPTメンバーとしてカウントされない戦力が増えるということです。まぁ私には関係ないですけど。
それに召喚中は魔力系のスキルを常に鍛えることができるみたいです。
とはいってもその上昇率は低いみたいですけど。
さらに『召喚』自体のLv上げは召喚中であれば、常に微量ですが鍛えられます。
召喚対象の傾向に沿って行動させれば、さらに得られる経験値が増えるみたいです。
私の場合は生産系スキルを召喚補助スキルとして常に装備していますので、召喚した子に生産作業をさせればどんどんLvが上がってくれるはずです。
魔力系スキルもついでに鍛えられるし、製作したアイテムも手に入るので一石三鳥です。
あ、その代わり召喚対象が生産作業を行っても、対応したスキルに経験値は入りませんけど。
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魔力系3種を進化させ、さらに3つの新規スキルを取得しました。
さぁどんどんLvを上げますよー!
……その前に『召喚』だけは講習を受けられるので受けてきちゃいますかね。




