129 『だめですよー』
ハロウィンイベント終盤で解放された『カボチャの迷宮』。
たくさんあるミニゲームから三つがランダムで選ばれ、『カボチャの迷宮』内でそれらをこなすことにより『カボチャコイン』が貰える。
この『カボチャコイン』と交換でイベントアイテムが貰えるわけですが、貰えるイベントアイテムは結構魅力的です。
交換に『カボチャコイン』の数がそれほど必要ではないものが大半で、ほとんどがお菓子ですね。
中にはハロウィン衣装なんかもあるようですが、基本的に装備としての性能はお察しのコスプレ用品です。
私はもちろんお菓子目当てで『カボチャの迷宮』に通っています。
とはいってもイベント終了までもう数日しかありませんので、お菓子を大量に確保するのは難しいでしょう。
お菓子は通常の料理などよりは賞味期限が長く設定されているようですが、それでも『ゲーム内時間』で三週間程度です。『現実時間』なら一週間ですね。
イベントMOBに見つからないように行動しなければいけないミニゲームばかりですので、正直なところ私はとても苦手です。
隠密系のスキルもイベントMOBには無意味なようです。
お菓子がたくさん欲しい甘ロリさんとるーるーさんと一緒に今日も『カボチャの迷宮』に足を運びます。
ミカちゃんと姫ちゃんは景品にあまり魅力を感じないようで、ある程度PTメンバーや『クランメンバー』と『カボチャコイン』を集めたあとは普段通りの行動に戻ってしまいました。
まぁまた新しいフィールドエリアが開拓されたので、ミカちゃんたちとしてはそちらの方を優先させたいようです。
何か良い素材があれば私も動きたいところですね。今は情報待ちです。
ちなみに甘ロリさんと私は食べるために『カボチャの迷宮』に挑戦していますが、るーるーさんは違います。
なんとかしてこのお菓子たちを再現しようとサンプルとして数を集めているのです。
るーるーさんがお菓子の再現に成功すればいつでも食べられるようになるのですから、当然私たちも大歓迎です。
交換するお菓子もみんなバラバラのものを交換してサンプル集めに貢献しているくらいですから。
まぁもちろんサンプル分を渡したあとは食べるんですけど。
美味しいんです、ほんと。
もっと長くイベントしませんかね?
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毎日時間を作って『カボチャの迷宮』へと通い、るーるーさんへのサンプルとして全ての種類のお菓子を交換し終わる頃にはハロウィンイベントも終了です。
結局最後の最後まで私はイベントMOBに見つかりまくっていました。
足を引っ張りまくってはいましたが、高難易度の製作品が納品対象の時などは活躍しましたから大丈夫です。大丈夫です、たぶん。
「もう終わりなんですね~。もっとお菓子を確保しておきたかったです~」
「ララルさんはすぐ食べちゃうからですよ。少しずつ食べればもう少し楽しめるのに」
「だ、だって美味しいんですよ~! 気がついたらなくなっちゃうんですよ~!」
「まぁ気持ちはわかりますよー。気持ちはー」
「るーるーさんも頑張ってるんですけどね~。やっぱりイベントの景品だけあって再現はかなり難しいみたいですよ~」
「そうですかー。やっぱり難しいですかー。あ、だめですよ、ララルさんもうあげません」
「そんな殺生な~! あと一つだけ! あと一つだけですから~!」
時間的に最後の『カボチャの迷宮』への挑戦を終えて、今は工房のリビングでお菓子を堪能しているところです。
るーるーさんも一緒だったのですが、何か思いついたらしく研究がしたいと自分のお店に戻ってしまいました。
なので今いるのは甘ロリさんだけです。
その甘ロリさんも自分の分のお菓子をあっさりと食べ終えてしまい、私のお菓子を分けてあげていたのですが、あまりにも食べる速度が早いのでもうあげません。
甘ロリさんは本当にお菓子に関しては目がないですね。
まぁこのお菓子が美味しすぎるのも悪いと思いますけど。
るーるーさん早く再現してくれないですかねー。
「うぅ~美味しそう……じゅるり」
「だめですよー」
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ハロウィンイベントも無事終わりましたが、月が変わってもイベントが始まる気配がありません。
今日まで毎月必ずイベントがあったのでどうしたのだろう、と掲示板でも結構騒がれています。
毎月必ずイベントがある、と公式で告知されているわけでもないのですけどね。
でもイベントがないのはちょっとさびしいですね。
まぁイベントがあろうがなかろうが私のやることは変わりません。
未だにスティール系装備の『オプション品』製作が出来るのは私だけですし、需要は尽きません。
新しく開拓されたフィールドエリアでは新素材である『魔鉄鋼』が入手できるようです。
今更ですがマジックインゴット系がレシピを使わずに比較的簡単に製作できるらしいです。本当に今更ですね。
でも製作難易度が高いマジックインゴット系を簡単に作れるのなら有用かもしれません。
シルバーやスティールのマジックインゴットレシピはないわけですし、私もこの『魔鉄鋼』で挑戦してみるのもいいかもしれません。
属性系の装備は特化装備として有用ですが、防御力が圧倒的に不足します。
ですがマジックインゴットで製作する防具は特化装備ほどではありませんが、全ての魔法攻撃を軽減することができます。
広く浅く、そこそこの防御力もある。
それがマジックインゴットで製作できる防具ですね。
特化装備の運用が難しいけれど魔法攻撃に対して備えが必要な場面などでは特に有用でしょう。
さらに『オプション』で底上げできれば特化装備に勝るとも劣らないものができる可能性だってあります。
まぁ何が言いたいかといえば、需要があるってことです。
スティール系装備ばかり作っていては飽きますからね。気分転換にはもってこいでしょう。その上売れるとなれば言うことはないです。
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ハロウィンイベントで手に入れたお菓子ももう賞味期限が限界なので、今日の女子会で全部消費してしまいました。
るーるーさんの研究は未だにつづいていますが、やはりイベント限定アイテムだけあって再現するのは難しいようです。
それでも諦めずに挑戦を続けるるーるーさんはさすがです。
姫ちゃんの活躍によって『魔鉄鋼』の供給は安定どころか余るくらいです。
おかげで、シルバーマジック系装備どころかマジックスティール系の装備もたくさん製作することができています。
『魔導人形:獣型・大狼』は魔改造の結果のアームとその巨体、姫ちゃん自身が有名人ということもあってあっという間に掲示板で情報が共有されています。
でも私ですら素材集めに時間がかかったほどですから、当然ながら二体目が現れたという話は聞きません。
まぁ製作依頼がお店の方に来ていたりはしますが、出禁を食らってあっという間に沈静化してましたけど。
フィールドエリアの開拓は少しずつ進んでいるようですが、アフターケアもあるのでなかなか思うようにはいかないみたいです。
でも日々プレイヤー開拓者の数は増えています。
女子会でも新規プレイヤー開拓者の話題は出ていました。
『Works』にもそういった新規プレイヤー開拓者から加入申請がきているみたいですが、未だに甘ロリさんのお眼鏡に叶う人は出ていないようです。
そういえばこの間、店員さんから『メール』で弟子になりたいという人が来ていたと報告がありました。
まぁ別に珍しい話ではありません。
私だけではなく、甘ロリさんにもるーるーさんにも、向田さんにもミーとムーの双子にもそういった弟子志望の開拓者は何人か現れています。
設備目当て、素材目当てであることは火を見るよりも明らかです。
実際に弟子になっても設備の共有や素材の融通はない、と説明すると舌打ちや罵詈雑言を残していく人ばかりでした。
掲示板でも一時話題にあがったくらいでしたが、甘ロリさんが本人チェックを入れて書き込んだことにより火消しはスムーズでした。
まぁそんなこともあって今では弟子希望の人たちは門前払いです。
中には設備や素材目的ではない、純粋な弟子希望の人たちもいたでしょう。残念ですがトラブルを招くことは明らかですから仕方ありません。
今だって掲示板での批判や有る事無い事書かれていますしね。
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ハロウィンイベントが終わってから『現実時間』で二週間が経過しようとしていたある日、ついに公式で動きがありました。
それも今までにない大きな動きです。
『ユリ、姫! 見た!?』
『はいはい見たよー』
『ん。大型アップデート』
そう、【ふろんてぃあーず】で初めての大型アップデートの告知です。
今までこまめにバグ修正やイベントなどがありましたが、大型アップデートというほどでは決してありませんでした。
ですが今回は公式で事前に告知を出すほどの大きな出来事なのです。
『やっとっていうか、ついに他の国とつながるわけだね!』
『ん。新しいスキルも楽しみ』
『私は師弟システムに興味あるなー』
『フィールドエリアのアフターケアにも緩和が入るって書いてあったし、開拓が加速しそうね!』
秘密主義な運営だけに事前の告知にたくさんの情報が載せられていたのは掲示板でも話題になるほどでした。
当然ながら私たちもその告知をしっかり読んでいます。
アップデート内容が書かれた告知でしたが、全てが書かれているわけではないと明記されているのに内容はかなり多いです。さすがは大型アップデート。
明記されていたアップデート開始まで『現実時間』で一ヶ月以上もあるようです。
それまでは色々な準備期間となるでしょう。
アップデート直後は新素材や何やらでお金がいくらあっても足りない状態になりそうですし、今からアップデート資金を集めておく必要があるでしょう。
まぁ私は普段からお金には余裕がありますから、そこまで急ぐつもりもないですけどね。
他の国――サーバーとゲーム内でつながるという話ですし、生産系トッププレイヤー開拓者としての地位をどこまで維持できるのかちょっと不安でもあります。
でも今まで私のライバルとなるような人はまったくいませんでした。
他サーバーの情報はあんまり調べてもいなかったのですが、その辺も楽しみですね。
ミカちゃん、姫ちゃん、『Works』やフレンドのみんな。
たくさんの人たちに囲まれてまだまだ私は【ふろんてぃあーず】で開拓を続けていくのです。
完




