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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第六章 白い迫撃
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第百四十一話……燃え上がる炎5

(なんや、お前の能力は火を出すことなんか。なんか意外やな)

(意外?)


 千堂に言われた事を思いだした。

 初めて千堂の前で能力を見せた時の事だ。蓮見は能力をかなりコントロールできていた上に、彼の能力は日常生活で使う機会などほとんどない。そのため、初めて見せたのは出会ってからしばらく経っての事だった。


(意外ってどういうことさ?)

(ああ、なんかな、俺はてっきり蓮見の能力は何かを知るタイプのものかと思ってたわ)


 千堂は蓮見と出会ってから、彼が何かとよく気がついたり、把握したりする力がある事に感心していた。そのため、千堂は蓮見がそのような「観察」や『リーディング』の類の能力者だと思っていたのだった。

 しかし、それは蓮見も意識していない彼の特技のようなものであった。

 あの時は千堂が言ったことに実感がわかなかったけど……。

 今は千堂の言葉を信じたい。

 蓮見は祈るような気持ちで、千堂の言葉を胸に抱く。

「いくぞっ!」

 巨人は走り迫る蓮見に胸部を拡張させ、衝撃波の準備に入った。

 衝撃波の発射のタイミングを計り、蓮見は必至に一撃目を避けると、足を止めずに巨人へと向かう。

 間髪入れずに巨人の周囲に瓦礫が浮かぶ。

 やっぱりそうだ……!

 先ほどもこのパターンだった。

 そして次は……。


「浮かんだ瓦礫が落ちた時に発射!」


 蓮見の言葉と同時に瓦礫がわずかに空中で落ちると、弾かれたように発射された。

 来た……!

 蓮見は思わず笑みを浮かべた。

 予測が的中し楽々とその瓦礫を避けた。

 圭祐の能力で引き寄せ、茜の能力で遠ざける。つまり、巨人は二つの能力を使っている。二つの能力を切り換える瞬間、瓦礫に対して能力が作用していないために、僅かに落ちているのだろう。とすれば……。


「一度に使える能力には制限があるんだ」


 能力を一つしかもたない蓮見や神楽達などにはその感覚はわからない。だが、そうでもなければわざわざ間を置く理由はない。

 問題はそれが幾つなのか、一つなのか、二つなのか、という事だ。


「きっと……」


 神楽の弾丸が当たった事を考えると、おそらく一度に一つだけ。

 瓦礫を飛ばそうとしていた時に、神楽は背後から狙撃している。その弾丸に当たっているのだ。

 それからもう一つ、衝撃波のあとに巨人の動きは緩慢になる。それをカバーするために瓦礫を飛ばしているように思えた。

 おそらく動けないんだ……たぶん、あの衝撃波……三村の『ボイス』だな。

 あの衝撃波は声だ。胸部の膨張は、そのために深呼吸のような事をしているに違いない。


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