第56話 語られたのは、リエラについて
前回のあらすじ
春風君、ユーリエさんに食事に誘われる(ただし、リエラを除いて)。
「『どういう関係』とは?」
春風は一瞬、何を聞かれたのか理解できなかった。
「ああ、ごめんね、深い意味はないの。ただ、リエラが随分とあなたに心を開いてたから、ちょっと気になってね」
「『心を開いてた』って……え、どういう意味ですか?」
謝罪しながら言うユーリエに、春風はますます理解が出来ないという表情を浮かべた。
ユーリエはそんな春風の様子を察したのか、順を追って説明した。
「うーん。私自身もそこまでリエラと仲が良いってわけじゃないんだけど。彼女、『紅蓮の野牛』に入るまで総本部で働いてたってのは知ってるよね?」
「ええ、本人に聞きました」
「その総本部で働いてた頃の彼女なんだけど、いつも1人で行動していて、誰かと組んで仕事に挑んだ事はあまりないのよ」
「そうなんですか!?」
「うん。それでも、他の人と組むことはあったけど、距離を置いているっていうか、なかなか心を開かないってことが多いの。そしてそれは、『紅蓮の野牛』に入った後も変わらなかった」
思わぬところでリエラの話を聞いた春風は、驚きのあまり少し呆然となった。
しかし、そんな状態の春風を前にしても、ユーリエは話続けた。
「だけどね、総本部にあなたを連れてきた時のリエラは、他の人の時と違ってとっても明るく見えたわ。あんなリエラ見たことなくって、まるで、あっちが本当のリエラって感じがしたの」
「……」
「ねぇ、ハル君。もう一度聞くけど、あなた、リエラとどういう関係なの?」
「それは……」
春風はしばらく考え込んだ。正直に全てを話してしまおうかとも思ったが、リエラがいない時にそんな事は出来ないし、証拠がないから今ここで彼女を納得させることも出来ないと考え、あらかじめ話し合った「設定」で通す事にした。
「俺の父と、リエラのお父さんが友人同士で、リエラとは幼い頃に何度か会ったことがあるんです。といっても、ほんの数回ですが」
「『ほんの数回』であそこまで心を開いた、と?」
ユーリエの目はかなり真剣だった。しかし、春風も負けんと言わんばかりの真剣な目で、
「ええ、そうですよ」
と、返した。
しばらくの間、真剣な眼差しによる睨み合いが続いた。
「……わかったわ。そういうことにしといてあげる」
先に根を上げたのは、ユーリエだった。春風はホッとしたが、
(あれ、きっとまだ疑っているなぁ)
と、心の中で呟いた。
「それじゃあ、昼休みも終わるし、戻ろっか。ああ、今日は私が奢るね」
「え、ですが……」
「付き合ってくれたお礼よ。お姉さんが奢ってあげるわ」
「……ありがとうございます」
その後、会計を済ませると、2人は喫茶店を出た。
総本部への帰り道、ユーリエが春風に話しかける。
「今日はごめんね、ハル君。変なこと聞いちゃって」
「いえ、別に気にしてません」
2人はゆっくり歩きながら話した。
「あのさ、ハル君」
「? 何ですか?」
「リエラのこと、お願いね」
「え、それってどういう意味ですか?」
「さっきも言ったけど、あの子が心を開いてるの、あなただけだから。もしこの先、彼女が困ったことになったら、多分、あなたしか助けられないと思う」
「……」
「だから、これは私からのお願い」
春風は少し俯いたが、すぐに顔を上げて、
「はい」
と、返事した。
しばらく歩いていると、ユーリエはふと立ち止まって、ある場所を指差した。
「ありがとう。あ、ほら、あそこ」
「え?」
ユーリエが指差したのは、ギルド総本部。その入り口では、
「ハールーッ!」
リエラが2人に向かって手を振っていた。
「行ってあげて」
ユーリエはそう言って春風の背中をトンと押した。
春風はバランスを崩しそうになったがなんとか持ち直すと、ユーリエにコクリと頷いて、リエラに向かって駆け出した。
その様子を見守ると、ユーリエもギルド総本部に向かって再び歩き出した。
本当なら間話と設定も書きたいところですが、残念ながら今回の話で本編の第2章は終了です。
また、本日はもう一本、重要なお知らせがあります。




