第55話 春風、誘われる!?
前回のあらすじ
春風君、二つ名を貰う(ただし、本人はいらないと思っている)。
(えー、皆さんこんにちは、ハルこと幸村春風です。今、ギルドの受付係員さんとランチに来ています)
と、頭の中でそんなことを呟く春風は現在、ギルド総本部の外にある食堂にて、ギルド総本部の受付係員、ユーリエとランチに来ていた。
(どうしてこうなった?)
ことの始まりは、バンデル達との戦いが終わった後のことだった。
戦いを終えた春風は、
「しばらく1人になりたい」
と言って、宿泊施設の自分の部屋に戻っていた。
ベッドに腰掛けると、春風はステータスウインドウを開いて、新たに取得した称号を確認した。
最初の冒険者……この世界「エルード」で、一番最初に冒険者になった者。新たな伝説を作るのか。それとも、何もなしえないまま終わるのか。それは、これからのあなた次第である。
「うわぁ、意味わからねぇ……」
春風は深くため息を吐いた。すると……。
ぐぅううううう。
「アハハ、お腹すいちゃったよ」
そう言うと、春風はベッドから立ち上がって部屋を出た。
(食堂で何か食べよう)
そう考えながら受け付けを通り過ぎようとすると、後ろから、
「おーい、ハルくーん!」
と、自分を呼ぶ声がしたので振り返ってみると、そこにはユーリエが手を振っていた。そして、ユーリエがタッタッタと春風に駆け寄って、
「ハル君、午前中はお疲れ様」
と、笑顔で言った。
「あ、どうも、ありがとうございます」
春風はぎこちない表情でそう返すと、ユーリエは、
「今からお昼ご飯かな?」
と、問いかけた。
「ええ、まぁ……」
「私も今からなんだ。それで、この近くに美味しい料理を出す喫茶店があるんだけど……」
「?」
「よかったら、一緒にお昼、どうかな?」
「!?」
それは、年上女性からの、まさかのお誘いだった。
「それって、どういう意味……」
警戒した春風が尋ねようとしたその時だった。
「ちょっと待ったーっ!」
怖い顔をしたリエラが、春風とユーリエの下に駆け寄りながら「待った」をかけてきたのだ。
「あら、リエラ。一体どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃありません! 何ハルを誘ってんですか!?」
「何って、別にいいじゃない。ちょっと2人で食事に行くだけだから」
「なっ!?」
意地の悪い笑みを浮かべながら話すユーリエと、そんな彼女にプンスカと怒るリエラ。その様子を見て、
(ああ、なるほど。これが『修羅場』ってやつなのかな)
と、春風は遠い目をしながら思った。
「とにかく、ハルを連れて行こうっていうなら、私も行きます!」
「うーん。私はハル君と2人だけで行きたいんだけどなぁ」
(うう、お腹すてるんだけど。あ、なんかヒートアップしそうな雰囲気)
中々終わらないリエラとユーリエのやり取りにイラっとなった春風が、2人を止めに入ろうとした時だった。
「なら、リエラは私と食事をしようか」
と、リエラの背後から現れたヴァレリーが、リエラの肩を掴んで言った。
リエラはビクッとなって、
「ヒェッ! マ、マスター!?」
と、震えながら悲鳴を上げた。
「ユーリエ。リエラは私に任せて、お前はハルと言ってこい」
「ありがとうございます」
ユーリエはヴァレリーにお礼を言うと、
「さぁ、ハル君。一緒に行こうか」
と、春風の手を取ってギルド総本部の外へと駆け出した。もちろん、訳もわからず戸惑う春風を無視して。
「ハ、ハールー!」
後ろの方で悲しげに春風の名を呼ぶリエラの声が聞こえたが、手を引かれている春風には、その声に答える余裕がなかった。
(で、今俺は、こうしてユーリエさんとお昼ご飯を食べに来ているわけなんだよなぁ)
そして現在、春風はユーリエと一緒に、ギルド総本部の近くにある喫茶店でお昼ご飯を食べている。ちなみに、2人が頼んだのは、は美味しそうなサンドイッチのセットだ。
美味しそうにもぐもぐと食べるユーリエに、春風は恐る恐る尋ねた。
「あの、ユーリエさん」
「? どうしたのハル君?」
「何故、俺を誘ったんですか?」
「あー、うん。それはね……」
サンドイッチを食べ終えたユーリエは、セットのコーヒーを一口飲むと、真剣な表情で春風の質問に答えた。
「理由が2つあって、ハル君に興味がわいたっていうのがそに理由の1つね」
「俺に興味……ですか?」
「ええ、ギルドに登録してからまだ日は浅いというのに、総本部長から二つ名を与えられた。これって、長いギルドの歴史の中で、ハル君が初めてなんだ」
「え、マジですか?」
「うん、マジ。で、2つ目の理由は、ハル君に聞きたいことがあるんだ」
「な、何でしょうか?」
たらりと冷や汗を流す春風に、ユーリエは質問する。
「あなた、リエラとどういう関係なの?」
次回、春風君、リエラについて聞かされる。




