第54話 春風、「二つ名」をもらう
前回のあらすじ
春風、バンデルに勝利する。
「ぼ、『冒険者』ってなんだ?」
「へ?」
春風が自身を「冒険者」と名乗ってすぐ、バンデルの口からそんな言葉が出たので、春風は「?」を浮かべて首を傾げた。
(あ、あれ? おかしいな……)
春風がそんなことを考えていると、周りから、
「オイ、冒険者ってなんだ?」
「お前、知ってるか?」
「知らないよ」
と、何やらざわめく声が聞こえた。
(な、なんだ? なんか、周りが騒がしくなってきたぞ!?)
春風はオロオロと焦りだしたが、とりあえず、目の前のバンデルに、自身が知る「冒険者」というものについて説明した。
「えっと、『冒険者』っていうのは、俺の故郷で読んだ物語に登場する職業で、俺たちみたいにギルドに所属していて、報酬と引き換えに魔物を倒したり、誰も見たこともない未知の遺跡や土地を調査したり、他にも小さな町や村に住んでいる困っている人を助けたりしながら、世界中を旅する人のことですけど……」
春風の説明を聞いたバンデルは、目が点になっていた。それは、周りの人も同じだった。ここにきて、春風は1つの結論に至った。
(ま、まさかこの世界って、『冒険者』って概念が存在してないのか!?)
そう考えて、春風は益々焦った。
と、その時、
「ふむ、それが『冒険者』というわけですか」
その声に春風が振り返ると、そこには考え込んでる様子のフレデリックがいた。
フレデリックはリエラ達から離れると、スタスタと歩いて闘技台に上がると、春風の方を見て、
「中々、面白い呼び名ですね」
と、ニコリと笑った。
春風は恐る恐るフレデリックに尋ねる。
「あの、総本部長さん、1つ伺ってもよろしいでしょうか」
「何かな?」
「ギルドに所属している人達って、一般的になんて呼ばれているのでしょうか?」
「ふむ。まずは、リエラさんのようにハンターギルドに所属している人は『ハンター』と呼ばれ、生産ギルドに所属している人は『生産者』、商人ギルドに所属している人は『商人』と呼ばれていますが、そのどれにも所属していない人は『ギルド登録者』と呼ばれているのが一般的なのですよ」
その言葉を聞いて、春風は戦慄した。
(う、嘘だろオイ……)
そんな春風を無視して、フレデリックは「クックック」と小さく笑いながら話を続ける。
「しかし、私自身はその呼び名はどうも気に入らないのですよ。だって、そのまんまじゃあないですか。もっといい呼び名があるかもしれないと私も考えているのですが、コレが中々難しくて……」
(いや待て、そんなことないだろ、なにわざとらしい動きで話してんだコラ!)
春風は心の中でツッコミを入れるが、
「しかぁし!」
ビシィッ!
「!?」
フレデリックは、勢いよく春風を指さした。
「先程、あなたが名乗った『冒険者』という呼び名、私は大変感動しました。報酬と引き換えとはいえ、世界中を旅しながら困った人々を助ける存在、カッコいいではありませんか、そうでしょう皆さん!?」
そして、さらに勢いよくギャラリー達に問いかけた。
(おいコラ! ギャラリーさん達を巻き込むなぁ!)
春風は心の中で叫ぶが、ギャラリーさん達の反応は、
「か、かっけぇ」
「ああ、いいじゃないか」
「ステキ」
「最高じゃねぇか!」
「そうだ! なら、俺達だって『冒険者』だ!」
『うおおおおおっ!』
(オイイイッ! なんか皆さん、気に入っちゃたんですけど!?)
沸き立つギャラリー達に春風が心の中で再びツッコミを入れると、フレデリックは春風に向き直って、
「さて、ハルさん」
「!? は、ハイ、何でしょうか?」
「今お話しした『ギルド登録者』についてなのですが、ある程度の功績を挙げた者には私どもの方で、『あるもの』が与えられるのです」
「あ、『あるもの』……とは?」
フレデリックはニヤリと笑って答える。
「『二つ名』です」
それを聞いて、春風は猛烈に嫌な予感がした。
「二つ名……ですか」
「ハイ。ちなみに、リエラさんも『白炎』という二つ名を持っていますよ」
(あ、そういえば称号にそんなのがあったな)
「本来なら銀2級になってから与えられるものですが……」
フレデリックは春風の肩をガシッと掴むと、
「おめでとうございますハルさん。あなたはまだ登録したばかりですが、たった今、あなたの『二つ名』が決まりました」
その瞬間、春風は滝のようにダラダラと汗を流した。
「あなたはギルドの歴史に、新たな1ページを刻みました。故に、あなたにはこの『二つ名』を贈りましょう」
ご、ゴクリ。
「『最初の冒険者』。それが、あなたの二つ名です」
『ウオオオオオッ!』
先程以上に沸き立つギャラリー達。
春風はふとリエラの方をチラリと見ると、リエラはうっとりと春風を見ていた。
春風は心の中で叫んだ。
(いらねえええええっ! 恥ずかしすぎていらねえええええ!)
その時、頭の中で声が聞こえた。
『新たな称号の取得を確認しました』
『称号[最初の冒険者]を取得しました』
(称号まで貰ってしまったあああああ!)
頭を抱えたい春風だったが、ギャラリーが沸き立つ小闘技場内でそんなこと出来るはずがなく、ただただ固まるばかりだった。
次回、困った二つ名を手に入れてしまった春風君。そんな彼に、ある人物が話しかける。
活動報告に、今後について相談したいことを載せましたので、そちらも見て頂けたら嬉しいです。




