第49話 スカウトの理由と、断る理由
前回のあらすじ
春風君、ギルドマスターのヴァレリーにスカウトに、「NO」と即答する。
「ぐふ。こ、これが、昨日アリシアを苦しめたというハルの『言葉の暴力』というやつか……」
片膝をつき、腹を押さえながらしゃべるヴァレリー。そんな彼女に、リエラとアリシアが駆け寄った。
「ハル! 昨日は止められなかったけど、女の人に言葉の暴力はダメ! ダメったらダメェッ!」
「ハル君! 君は昨日、『女の子や女性方面で、鬼とか悪魔とか腐れ外道になりたくない』と言っていたじゃないか! あれは嘘だったのか!?」
2人はヴァレリーを介抱しながら、怒って春風を責めた。
「あー、えーっとー」
春風は気まずそうに、「うーん」と唸ると、
「すみません。わけわからんことを言われましたので、思わず即答してしまいました」
と、ビシッと親指を立てて答えた。
「「親指を立てるなぁあああああ!」」
リエラとアリシアにツッコミを入れられた。
ちなみにフレデリックはというと、3人のやり取りを見て、必死に笑いを堪えていた。
しばらくして、ようやく言葉の暴力によるダメージから立ち直ったヴァレリーに、春風は質問する。
「それで、何故ギルドマスターさんは、俺をスカウトしようとしたのですか?」
「ヴァレリーで構わない。スカウトの理由はいろいろあるが、一番の理由は、君が欲しくなったから……かな」
その言葉を聞いて、春風は一歩下がった。
「待て、待て待て待て、引くな! 変な意味ではない! 君の『力』が欲しいという意味だ!」
「俺の『力』……ですか?」
警戒しながら質問する春風に、ヴァレリーは真剣な表情で答える。
「君のことは、小闘技場でのリエラとの模擬試合の時から知っていた。私も、あの戦いを見ていたからな」
春風は「え、マジで?」と言いたいのを我慢しながら話を聞き続ける。
「鉄扇などという男が使うには珍しい武器で、あれほどの戦いを繰り広げた君を凄いと思った。それと同時に、『なんて美しいんだ』とも思った」
「……」
「そして昨日、君とリエラのロックボアとの戦いぶりを見たアリシアの話を聞いて、ますます君を我がギルドにスカウトしたいと思ったんだ。ちょうど今は、封印から目覚めた邪神や魔物の動きも活発化し、ファストリア王国が別の世界から『勇者』を召喚したという情報も入ってきて、こちらも戦力を整えたいとも思っていたところだったし、な」
ヴァレリーの話を聞き終えて、春風は頭を掻きながら、再び「うーん」と唸った。
そして、「ふぅ」と息を吐くと、真面目な表情になってヴァレリーに向き合うと、
「ヴァレリー……さん、お気持ちは大変嬉しいのですが、やっぱりお断りします」
と、ハッキリと「NO」と言った。
「理由を聞いてもいいかい?」
ヴァレリーがそう尋ねると、春風は意を決して答える。
「あの戦いを見て、あなたがどう思ったかはわかりましたが、俺はあなたが思っているような凄い人間なんかじゃありません。もしもこの世に、『正義の味方』なんてものが存在しているとしたら、俺は間違いなくそれとは真逆の道を進んでいると言っていいでしょう」
「……その根拠は?」
「先ほどアリシアさんが言っていたように、俺は女の子や女性方面で、鬼とか悪魔とか腐れ外道になりたくありませんが、それ以外ならなってもいいと考えてます。必要だったら何度だって他人を踏み台にしますし、もっと言えば多くの人を不幸のどん底に叩き落としてやるとも思っています。ここに来る前にリエラから聞きましたが、ハンターギルドは元々魔物の脅威から人々を守るための組織でしたよね?」
「ああ、今でこそ要人の護衛や、簡単な素材採取といった仕事もしているが、本質的にはそれで合っているよ」
「それなら、そんな組織に俺のような考えを持った人間が入っていいはずがありません。ていうか、むしろこっちが排除されそうで怖いです」
「ハル……」
「ハル君……」
「……」
ハハハと苦笑いしながら話す春風を、リエラ、アリシア、フレデリックは心配そうに見つめた。
そんな3人をよそに、春風はさらに話し続ける。
「それに、仮にもしスカウトを受けたとしても、そのあとギルドに入るための加入テストというのがあるんですよね?」
その質問に、ヴァレリーは「おや?」とした表情で答える。
「ああ、その点についてなら問題ない。今回はこちらからスカウトしたいという話だから、君が望むなら、テストの方は免除しようとも思っている」
「それは……」
春風が続きを言おうとしたその時ーー。
バァンッ!
「ちょっと待ったーっ!」
『!?』
大きな音を立てて総本部長室の扉が乱暴に開かれた。そしてその後、どこかで見たような顔をした数人の男女が入ってきた。
(あ、コイツらは!)
春風はすぐにその男女を思い出した。
そう、彼らは昨日、春風とリエラにロックボアを擦り付けた、あのハンターグループだった。
次回、春風君、因縁の相手と対決する!?




