第47話 帰還、そして報告
前回のあらすじ
春風とリエラ、お互いに自身の失敗について謝罪する。
春風達がマイスターンに着いた時には、辺りはすっかり夕方になっていた。
あれから倒したロックボアはどうしたかというと、春風が「試したいことがある」と言って、それを試してみた結果、見事に成功したので、今、ロックボアは春風の手元にある状態だ。
門番のロナルドに挨拶して門を潜ると、春風達はまずギルド総本部に向かった。今回の仕事中に起きた出来事について報告するためだ。
総本部に入ると、2人は受け付けに向かった。そこには、仕事を引き受けた時と同じ女性の係員がいた。
「すみません、仕事が終わりましたので報告に来ました」
そう言って、春風は自身のギルドカードと、採取した薬草でいっぱいになった布袋を提出した。
「確認しました。それではしばらくお待ちください」
係員はそう言うと、カードと布袋を持って席を立ち、奥へと向かった。
それから言われた通りしばらく待っていると、
「お待たせしました。こちら、本日の報酬の700クルトンになります」
と、春風にカードと仕事の報酬金700クルトンを渡した。
春風はそれを受け取ると、
「あの、それともう一つ、報告したいことがあります」
と言って、リエラと共に昼間に起きた出来事について報告した。
報告を聞き終えると、係員は少し考えて、
「申し訳ありませんが、総本部長をお呼びしますので、しばらくお待ちください」
と言うと、再び席を立って奥へと向かった。
そして数分後、
「やあ、待たせてしまったね」
受け付けの奥から係員と共に、ギルド総本部長のフレデリックが、春風達のもとに来た。
「「こんばんは、総本部長さん」」
2人がフレデリックに頭を下げると、彼はニコリと笑って、
「ええ、こんばんは、2人とも。先程話は聞きましたけど、大変な目に遭ったようですね。特にハルさんは、昨日登録したばかりでしたのに」
「はい、いきなりのことでしたので驚きましたが、リエラも一緒でしたので、なんとか倒すことが出来ました」
「なるほど、そうでしたか。それで、肝心のロックボアは今どこにあるのですか?」
フレデリックに尋ねられた春風は、周りを見回すと、
「あの、それなんですが、実はちょっと特殊な方法で運んできましたので、出来れば人のいない所でお願いしたいのですが……」
と、申し訳なさそうに言った。
それを聞いて、フレデリックは「ふむ」と考え込むと、
「わかりました。では、小闘技場を使いましょう。あそこでしたら、人を近づけさせないように出来ますので」
と、提案したので、春風とリエラはお互い頷き合うと、
「「はい、それでお願いします」」
と、揃って返事した。
その後、春風、リエラ、フレデリックの3人は、その足で小闘技場に移動した。そして場内に入ると、フレデリックは係員の人に、
「しばらく誰も近づけないように」
と命じた。
小闘技場内に春風、リエラ、フレデリック、そして数人の係員だけになると、春風は腰のベルトに取り付けたポーチを外して蓋を開けて、中に手を突っ込んだ。そして、
「よいしょっと!」
と勢いよく突っ込んだ手を引き抜くと、小さなポーチから大きなロックボアが出てきた。当然、ロックボアに意識はない。
フレデリックは目を大きく見開いて、
「これは驚きました。それは魔導具なのですか?」
と、静かではあるが驚きに満ちた声を出した。
「はい。どこで手に入れたかにつきましては、出来れば聞かないでほしいのですが……」
春風は苦笑いしながら、フレデリックにお願いした。
それを聞いてフレデリックは、
「わかりました。では、その辺りのことも、いずれお話になるのを楽しみにしておりますので」
と、ニコリとしながら言った。
(うぅ、なんだろう、やっぱりバレてるんじゃないかなぁ)
春風は表情には出さないが、心の中では嘘がバレてるんじゃないかと不安になっていた。
その後、係員達によってロックボアの査定が行われた。多少傷はあったが、状態的には良いということで、春風とリエラに4000クルトンのお金が支払われた。
2人はそれを半分に分けると、フレデリック達と別れて、総本部内の食堂に向かった。2人が頼んだメニューはもちろん、昨日と同じ「ロックボアの焼き肉定食」だった。
食事が終わると、リエラは自身が所属しているハンターギルドへ戻ると言って、春風と別れた。春風も今日は疲れたと言って、総本部内の宿泊施設に戻った。部屋に入ると、装備品を脱ぎ捨て、ベッドにダイブ……しようとして、とあることに気付いた。なんとなく自身の体が汗臭く感じたのだ。
(これじゃあいけないな)
そう考えた春風がしたことは、スキル[魔力制御]の応用で、まず水の魔力で着ているローブごと体全体を包み、風の魔力でその水の魔力を落とした。当然、本物の水ではないので床はいっさい濡れてない。
臭いを嗅いで大丈夫と判断すると、春風は今度こそベッドにダイブした。
翌日、ギルド総本部の本部長室にて、
「あの、これは一体どういう状況なんですか?」
冷や汗を垂らしながら質問する春風の目の前には、フレデリック総本部長はもちろん、リエラ、アリシア、そして、いかにも歴戦の猛者と言わんばかりの雰囲気を持つ女性がいた。
次回、新たな人物の登場により、春風君の異世界生活は次の段階に進む……と思う。




