第46話 リエラの謝罪と、春風の「失敗」
前回のあらすじ
戦いをずっと見ていたと言うアリシアに、リエラは怒り、春風は言葉による制裁を与える。
注)言うのが大変遅くなりましたがこの前、第32話のサブタイトルを変えました。
前:新しい、始まり → 後:それは、新しい始まり
アリシアからの謝罪を受けた春風は、
「謝罪の言葉、確かに受け取りました」
と、穏やかな表情で言うと、それ以降のやり取りを終了した。
その後、春風とリエラはまだやる事があるからもう少しここに残ると言い、アリシアは今回のことを報告するためにギルドに戻ると言って、弱々しくその場を後にした。
「さてと……」
アリシアを見送ると、春風はまず自身のステータスを確認した。レベルが20から21になり、称号「異世界(地球)人」の効果により、ボーナスポイントが1000追加されていた。
ステータスの確認を終えると、次に、新たに手に入れたスキルを確認した。
気迫解放……気迫を用いて敵を吹き飛ばすスキル。レベルが上がると吹き飛ばす距離が伸びるだけでなく、敵からの攻撃(物理、魔力両方)をかき消す事が出来る。
(なにこれ、こっわ……)
春風はスキルの説明を読んで盛大に頬を引き攣らせると、全てのウインドウを閉じた。
(それじゃあ、次は……)
確認を終えた春風が、リエラに振り向こうとしたその時、
「ハル……」
リエラの方から春風を呼んだので、すぐに彼女に振り向いた。
「どうしたのリエラ? なんか元気無さそうだけど」
振り向いた先にあるリエラの表情は、どこか落ち込んでいるような感じだった。
春風はどうしたんだろうと思って首を傾げていると、
「ごめんなさい!」
と、リエラは謝罪の言葉を言うと同時に、勢いよく頭を下げた。
「え、ちょ、いきなりどうしたのさリエラ!?」
突然の謝罪から4秒の沈黙後、ハッとなった春風は、驚いてリエラに質問した。
リエラは頭を下げた状態のまま答える。
「ロックボアが襲ってきた時、私、間に合わないとわかって、一歩も動く事ができなかった。動けずに、ハルの手を煩わせちゃった。ハル、魔物と戦うの初めてだったのに、本当なら、私が真っ先に動かなきゃいけなかったのに、だから……」
ごめんなさいと言うリエラの体は、すごく震えていた。表情も、下を向いている状態だからわからないが、きっと泣いているんだろうと春風は思った。
それを見た瞬間、グッとなった後、口を開いた。
「俺も、リエラに謝らなきゃいけない事があるんだ」
その言葉を聞いて、リエラはスッと頭を上げた。
「実は、アリシアさんを先に帰らせたのには、ステータスの確認の他に、これから言うことを他の誰かに聞かれたくなかったのと、リエラに謝らなきゃいけない事があるんだ」
「? どういうこと、ハル?」
訳もわからずに首を傾げるリエラに春風は続ける。
「俺のスキル構成は知ってるよね?」
「う、うん。知ってる」
「その中の1つに、危険を知らせる[警報]ってスキルがあるんだけど……ロックボアに襲われた時、そのスキルが発動しなかったんだ」
「発動しなかったって……どうして?」
リエラの問いに、春風は意を決して答えた。
「あの時、俺は、そのスキルを切っていたんだ」
「『切っていた』?」
春風のその言葉に、リエラは幾つもの「?」を浮かべた。
「ヘリアテス様のところでリエラと別れてからの1週間の間に、俺は自分のスキルを、使用可能の状態と使用不能の状態に切り替えることが出来るようになったんだ」
「……え、なにそれ!? そんなの聞いたことないんだけど!?」
驚くリエラをよそに、春風はさらに続ける。
「ああ、この技術については、ヘリアテス様はもちろん、精霊王様達も知らなかったんだって。まあ、それはさておき。そして今日、薬草採取の仕事を受けた時、俺はそのスキルの切り替えを使って、[警報]のスキルを切っていたんだ。薬草を採取するだけなら、切っても特に問題はないかな。もし危険が迫っても、他スキルで対処すればいいし、むしろスキル無しでも大丈夫だろって、思い上がってたんだ」
「……」
「だけど、ロックボアを擦り付けられた時、それが間違いだって思い知らされた。俺1人ならまだしも、リエラまで危険に晒してしまった。だから、リエラはなにも悪くない。むしろ悪いのは、俺の方なんだ」
「ハル……」
春風の話を聞いて呆然となったリエラに、今度は春風が頭を下げた。
「許してくれなくてもいい、そう思われても仕方ないことを俺はしてしまったから。だけど、それでも言わせてほしいんだ。本当に、ごめんなさい」
春風の謝罪から少し時間が経つと、リエラはなにも言わずに春風に近づき、その手を握った。
春風が恐る恐る顔を上げると、そこには穏やかな笑顔のリエラがいた。
「大丈夫。私はハルのこと、許すよ。ただ……」
「?」
「その、『スキルの切り替え』っていうの、私にやり方を教えてくれないかな? 教えてくれなきゃ、許さないってことで、ね?」
優しく笑いながら言うリエラに、春風は苦笑いしながら、
「うん、わかったよ」
と答えた。
その時だった。
「お2人とも、儂のこと忘れておらんかのう?」
「「あ」」
零号から恨めしそうにヨルサが出てきたので、2人は思わず間抜けな声を漏らした。
その後、2人からひたすら謝られて、ヨルサはすぐに機嫌を良くすると、
「さあリエラ様と春風殿、荷物をまとめてマイスターンに戻るのじゃあ!」
と、元気良く仕切り出したので、2人はやれやれと思いながらも、
「「おーっ!」」
と、ヨルサと同じように元気良く返事した。
ところが、
「ハッ!」
ヨルサがいきなり、「しまった!」と言わんばかりの表情で固まった。
驚いたリエラが、
「ど、どうしたのヨルサおばあちゃん!?」
と尋ねると、ヨルサは倒したロックボアを指差して、
「あれ、どうやって持って帰るのじゃ?」
「「あ」」
2人は再び間抜けな声を漏らした。
申し訳ありません。今回で仕事回を終わらせるつもりでしたが、ギルドへの報告も書かなければいけないので、もう少し続きます。
というわけで、次回、春風とリエラ、今日の出来事についてギルドで報告します。これで仕事回が終わりになると思います。多分。




