第44話 女剣士、アリシア登場
前回のあらすじ
春風とリエラ、ロックボアに必殺キックをくらわせる。
春風とリエラの、ロックボアとの戦いが終わった。ロックボアは2人の必殺キックをくらって、未だに意識は戻っていない。
2人は勝利とお互いの生存を喜び合った。
その時だった。
パキリ。
「! 誰!?」
枝を踏んで折ったような音がしたのに気づいたリエラは、すぐに音がした方向を振り向いた。
「ま、待ってくれ! 私だ、リエラ!」
振り向いたリエラの視線の先にある大きな木。その後ろから慌てたように現れたのは、1人の20代くらいの若い女性だった。女性は良く手入れされた長い茶髪に青い瞳を持ち、動きやすさを重視した白い軽量鎧に身を包み、腰のベルトに鞘に収まった細身の剣を挿していた。
春風は「誰だろう?」と首を傾げたが、リエラはその女性を知っていた。
「アリシアさん?」
「そうだ、私だ、アリシアだ」
リエラとアメリアと呼ばれた女性とのやり取りを見て、春風は質問した。
「リエラ、知り合いなの?」
「うん、私と同じハンターギルドに所属している人だよ」
リエラの言葉にアメリアは、深呼吸して気持ちを落ち着かせると、春風の前に一歩出ると、
「はじめまして。私の名は、アリシア・ヘルミーナ・フィオーレ。ハンターギルド『紅蓮の野牛』に所属している剣士だ。以後、お見知り置きを」
と、自己紹介した。
「『紅蓮の野牛』……って、リエラ、ハンターギルド名前があったの?」
「あ、そういえばまだ言ってなかったね。マイスターンにはいくつものハンターギルドがあってね、今言った『紅蓮の野牛』もその一つで、結構大きなギルドなの。ちなみに、私も所属してるんだ」
「へぇ、そうなんだ」
リエラの説明に納得した春風は、アリシアを見て「コホン」と咳き込む。
「申し遅れました、俺は……」
「知っている。ハル、だったな?」
春風もアリシアに自己紹介しようとしたが、何故かアリシアに遮られた上に、春風のことを知っていたようだった。
「俺のこと、知っているんですか?」
「ああ、知っているさ。昨日、小闘技場でリエラと戦って勝った少女だろう?」
4秒の沈黙。しばし固まっていた春風が口を開く。
「……俺、男ですけど」
「何、そうなのか!?」
真面目な顔で驚くアリシアに、春風は表情には出さないが、内心ではショックを受けた。
「すまない、中々の可愛い顔立ちだったから、てっきり少女だと思って……」
春風、2回目のショック。しかし、それでもどうにか口を開く。
「あの、さっきから俺、自分のこと『俺』って言ってますけど」
「世の中には、自分のことを「俺」と呼ぶ少女などごまんといる。だから、てっきり君もそうだと思ったんだ」
春風、3度目のショック。一瞬よろけそうになったが、どうにか踏ん張った。
そんな春風を見て、リエラはすぐに話題を変えた。
「ところで、アリシアさんはどうしてここに? 確か、今日は仕事があったハズだけど」
「あー、そのことなんだが……」
リエラの質問に、アリシアは気まずそうに答えた。
「実は、今日の私の仕事というのは、とあるハンターのグループの、ギルド加入テストの審査兼護衛役なんだ」
「「とあるハンターのグループ?」」
「ああ、そいつらはつい最近マイスターンに来たばかりで、私達のギルドに入りたいと言ってきてな、それなら実力を試して貰おうというわけで、私が今言ったように、審査兼護衛役に任命されたんだ」
「なるほど。で、その加入テストって、一体何をやらせたんですか?」
「ギルドが指定した魔物の討伐だ。といっても、ただ単純に倒せば良いってものじゃない。状況に応じた効果的な戦術や、不足の事態に陥った際の対処も含まれている。今回はグループということもあって、チームワークの良し悪しも基準に含まれている」
「結構厳しいですね」
「ところが、今回私が引き受けることになったグループが最悪でな、動きがなってない、ステータスやスキル、装備に頼りすぎ、おまけにチームワークも全然ダメときた。指定した魔物であるスピアラビット一匹仕留めるのに、かなり時間がかかるときた」
「「うわぁ……」」
話が進むにつれて苛立ちが増しているアリシアに、春風とリエラは盛大に頬を引き攣らせた。無論、零号の中のヨルサも、同じように頬を引き攣らせている。
だが、アリシアの話は、そこで終わらなかった。
「おまけに、こちらが大人しくしているのを良いことに調子に乗った奴らは、指定したもの以外の魔物まで狩り始めて、挙句とんでもないのまで手を出してしまったんだ」
アリシアのその話を聞いて、2人はものすごく嫌な予感がした。
リエラはアリシアに質問する。
「それってもしかして……」
「そうだ、ロックボアだ。奴らは最初ロックボアの子供を見つけて、それを狩ろうとして親を含むロックボアの群れを呼び寄せてしまったんだ。そして、怒り狂う群れに恐れをなした奴らは私を置いて逃げ出したんだ」
「うわ、マジで最低」
「その後、数匹は私が倒したが、残りの一匹が奴らを追いかけてしまって、私も急いで追いかけていた時に……」
「その残りの一匹が私達に遭遇したというわけね」
「ああ、そうだ」
ここまでの話を聞いて、春風は理解した。
(なるほど、つまりその最悪なハンターのグループってのが、俺とリエラにロックボアをなすりつけた奴らで、今倒したのがその残りの一匹というわけか)
そう考えて気分が悪くなるのを感じた春風。一方、リエラはというと、顔を下に向けて、
「話はわかりました」
と低い声で言うと……、アリシアの喉元にフレイムローズの切先を向けた。
最近、1日遅れの投稿が多いと感じるので、次からは投稿したら1日置くようにしようと思います(出来たらすぐに投稿もしますけど)。
というわけで次回、真実を知った春風とリエラ、アリシアさんに怒ります……予定的には。




