第42話 春風とリエラ、初めての共闘へ
前回のあらすじ
リエラとのお昼ご飯が終わったら、ピンチになっちゃった。
大きな物体が春風達目掛けて、すごい勢いで突進してくる。
(だ、駄目、間に合わない!)
突然のことにリエラは背中に背負った愛用の両剣ーー「焰刃フレイムローズ」を構えようとするが、向こうが早くて間に合わないと感じた。
その時だった。
春風がバッとリエラの前に出ると、突進する物体に向かって、
「かぁっ!」
と、大声で叫んだ。
次の瞬間、衝撃波のようなものが物体を襲い、後ろの方へと吹き飛ばした。と言っても、今の位置より少し離れたところで、物体はその場に力強く踏ん張った。
冷静になった春風がその物体の正体を見ると、それは、岩のような装甲に身を包み、大きな鋭い牙を持つ巨大な猪のような生き物だった。春風はすぐに、その生き物を鑑定した。
ロックボア(獣種)……岩のような装甲と鋭い牙を持つ猪の魔物。高い防御力を誇り、その頑丈さを利用した突進と、鋭い牙で目の前の敵を薙ぎ払う。
「……って、俺らが昨日食った肉じゃねぇか!」
春風のそのツッコミに、「え、マジで!?」と言わんばかりにビクッとなる猪のような生き物ーーロックボアだが、すぐに春風をギロリと睨んだ。
その後、リエラもハッと我に返って、
「ちょ、ちょっとハル! 今、何したの!?」
と、春風の肩を掴んで問い詰めた。
春風はリエラの方を振り向かずに、目の前のロックボアに視線を向けながら、
「いや、気迫で吹っ飛ばそうとしたんだけど、今の俺の力じゃあ、あの通り少ししか飛ばせなかった」
と、悔しそうに答えた。
「いや、吹き飛ばしただけでも十分すごいと思うけど……」
「そんなことよりもリエラ、これってあれだよね? 『魔物の擦りつけ』ってやつ」
「え? あ、うん。間違いないと思う」
「やっぱそうだよな。で、リエラはもう動ける?」
リエラの言葉を遮った春風は、愛用の鉄扇ーー「戦扇メタリックフェザー」を構えて、視線をロックボアに向けたまま質問した。
「うん、もう大丈夫。いつでも動けるよ」
そう答えると、リエラはすぐに春風の隣に立ち、フレイムローズを構えた。
「春風、魔物との戦闘は?」
「残念なことに、これが初めてだよ」
「そうなんだ。怖い?」
「もちろん怖いさ。でもそれ以上に……」
「それ以上に?」
「またロックボアの焼き肉定食が食べたい!」
「うん、そうだね!」
2人がそんなことを話していると、ロックボアは怒りに満ちた形相で睨みつけた。
だが、そんなロックボアを前にしても、2人のやり取りは続く。
「春風、援護系の技とか持ってる?」
「ああ、こんなこともあろうかと思って、ちゃんと作ってある」
「わかった。それなら私が前衛で戦うから、春風は後衛からの援護を中心に、状況に応じて春風も前衛に出て一緒に戦って」
「了解した。それならまずは……」
春風は目を閉じてスキルを発動させる。
(スキル[力魔法]、発動)
すると、左腕のガントレットーー正確には左のガントレットに装着した零号が光った。春風は左手をリエラに向けると、その状態で魔法名を唱えた。
「響け、“力”の応援、“エール”」
次の瞬間、春風の左手から放たれた魔力が、リエラの中に入り込む。
(な、なにこれ!? 力がみなぎってくる!)
リエラに入り込んだ春風の魔力が、リエラの体の内側を駆け巡り、肉体を強化していく。
(ていうか、なんか体全体が、『頑張れ!』って応援されているぅ!)
「よし!」
その様子を見て、春風は自身の魔法の成功を確信した。
エール(力魔法(系統:支援))……属性を持たない純粋な魔力を体の内部に送り込み、内側から身体能力(攻撃力や防御力など)を強化する。制限時間は3分。消費魔力:7。初期魔法詠唱:「響け、“力”の応援、“エール”」
成功したのを確信すると、春風はリエラに質問する。
「リエラ、気分はどうかな?」
「うん、すっごい応援されている感じがする」
「そっか、それなら良し」
そんなやり取りをしていると、目の前のロックボアも戦闘態勢に入った。
「リエラ、こっちの準備はできた。いつでも行けるよ」
「わかった。それじゃあ……」
ーーぶおぉぉぉぉっ!
その時、ロックボアが雄叫びをあげて突進してきた。
しかし、リエラはそれに怯むことなく、
「行くよ!」
と、叫ぶと、ロックボアに向かって駆け出した。
ここで戦闘させたかったけど、準備で終わってしまいました。ごめんなさい。
というわけで、次回、初めて共闘が本当に始まります。




