第39話 一晩過ごして、初仕事へ
前回のあらすじ
春風、ギルド総本部長フレデリックに、今後の予定を話す。
フレデリックとの会話の後、総本部長室を出た春風とリエラは、まず受け付けで宿泊施設の使用と、初期活動費の受け取りの申請をすることにした。理由は、宿泊施設は申請すれば無料で使用できるが、食堂の方はお金が必要になるからだ。
ギルドの新規登録と同じように書類を書いて、作ったばかりのギルドカードと共に受け付けに提出した。
しばらく待っていると、受け付けの係員がギルドカードとお金が入っていると思われる小さな布袋が運ばれてきた。
係員からカードと布袋を受け取った春風は、早速袋の中を見た。そこにはこの世界のお金と思われる硬貨がぎっしり入ってた。
「初期活動費の5000クルトンでございます」
と係員は言った。どうやら、この世界の通貨単位は「クルトン」というらしい。
お金を手に入れた春風達は、早速ギルド総本部の食堂へ向かった。そこはとても広く、ギルドの職員だけでなく、大勢の戦士や魔術師風の格好をした人もいた。さらにメニューも豊富で、料理の写真や絵はないが、説明文を読んで美味しそうな感じはした。
春風は悩んだ末に、480クルトンの「ロックボアの焼肉定食」にした。リエラも同じものにした。その後、それぞれお金を払って料理を受け取ると、空いているテーブル席に座って食事を開始した。春風曰く、とても美味しかったという。
食事が終わった後、夜も遅くなってきたので、リエラは春風と別れて自分が下宿している宿へと帰り、春風も宿泊施設へと向かった。係員に案内された部屋はそれなりに広く、ベッドの他にシンプルな机と椅子、それと明かりを灯すランプがあった。
春風はガントレットーーフォースギアを外して机の上に置き、ブーツを脱いでベッドに転がった。
「お疲れ様じゃ、春風殿」
仰向けになって、「ふう」と息を吐く春風に、フォースギアに装着された零号からヨルサが話しかけてきた。
「ああ、ヨルサさん、ずっと会話出来なくてごめんなさい」
「いやいや、気にすることはない、あの場では仕方ないことですじゃ。それよりも、今は無事にギルド登録出来たことを喜ぶべきじゃろう?」
「登録……」
春風はポーチの中にしまったギルドカードを取り出した。そしてそれを見て、春風は「ハァ」とため息を吐いた。
「どうかしたかのぉ?」
「……事情がどうであれ、俺は彼らを騙しているんだという事実に、罪悪感でいっぱいなんですよ」
「春風殿……」
ヨルサは零号から出てきて、春風に話しかけた。
「わかっておるとは思うのじゃが、お主は侵略者達を倒してヘリアテス様とループ様の力を取り戻し、世界を救うという使命を帯びておる。じゃからそのために……」
「わかっています。そのために肉体的にも精神的にも自身を鍛えるという目的の下に、こうしてギルド登録したんですから」
ヨルサは春風の頭にそっと手を置いた。そしてそのまま撫でようとしたが、幽霊であるためそれが出来ないことに気づき、手を頭から離した。それを見た春風は、申し訳なさそうにするヨルサに、
「ありがとうございます」
と、笑ってお礼を言った。
その後、ヨルサは再び零号の中に戻り、春風は寝る支度を整えると、ベッドに潜って眠りについた。
翌朝、起きて朝食を済ませた春風は、早速仕事を引き受けるために受け付けに向かった。
「ハールー!」
受け付けに着くと、そこにはリエラが待っていた。
「リエラ、おはよう。今日はハンターの仕事はないの?」
「これから受けるところだけど、まずはハルがどんな仕事を選ぶのかなと思って待ってたんだ」
「はぁ、そうなんだ」
そう言って春風は「ハハハ」と苦笑いした後、リエラと共に仕事紹介の受け付けに進んだ。
「すいません、昨日登録したハルと申します。仕事を受けたいので、紹介をお願いします」
春風が係員の女性にそう頼むと、
「かしこまりました、少々お待ちください」
と言って、女性は春風の前に幾つかの仕事が書かれた書類を用意した。
「こちらが、銅3級で受けることができる仕事になります」
春風は目の前に出された書類を一枚一枚見た。
「『薬草の採取』に『家の屋根の修理』、それに『食材調達の補佐』か……」
どれにしようかと考えた末、春風が選んだのは……、
「薬草の採取でお願いします」
「わかりました。それでは、ギルドカードを出してください」
女性にそう言われて、春風はギルドカードをポーチから出した。女性はカードを受け取ると、仕事の書類を持って受け付けの席を離れた。
しばらくすると、女性はカードを持って席に戻ってきた。
「お待たせしました。こちらにカードに、今日の仕事内容をインストールしました」
春風は女性からカードを受け取ると、
「ありがとうございます」
と、お礼を言った。
その時、
「よし、それじゃあ行こっか!」
とリエラが言ったので、春風は思わず、
「え、行くって、リエラも行くの?」
と、少し驚いてリエラに質問した。
「もちろん。ハルはまだこの辺りのことを知らないから、私が採取場所まで案内するね」
と言うと、リエラは足早に受け付けを出た。
「あ、ちょっと待って!」
春風は女性に頭を下げると、急いでリエラの後を追いかけた。
いよいよ、春風の本格的な異世界生活がスタートする。
というわけで、次回、春風君、初めての仕事に挑戦する。
ついでに、色々と実験する。




