間話3 蠢く者、動き出す者
間話、第3弾です。
王族達がそれぞれの想いに耽る同時刻、この国ーー否、この世界の現在の宗教である「5神教会」の総本部では、
「以上で報告を終了します」
「うむ、ご苦労でした。下がりなさい」
「ハッ!」
報告を終えた部下をさがらせる、組織のトップと思われる少し派手な神官服を着た威厳のある男性。
その後、その側近と思われる若い男が問いかける。
「失礼ですが、ここを飛び出した「あの少年」はどうしますか?」
男性は一言「ふむ」と言うと、
「放っておきなさい」
「よろしいのですか?」
「勇者の称号を持たないただの少年に、なにが出来るというのですか?」
「……それもそうですね」
「もう何もなければ、あなたも下がりなさい」
「わかりました」
そう言って、側近の男を下がらせる男性。
その後、男性は窓の外の月を見上げる。
「『巻き込まれた者』ですか」
男性はしばらくの間考えていると、「フッ」と小さく笑って、
「まさか、な」
そして男性はドアを開けて部屋の外へと出た。
飛び出した少年ーー春風を何も出来ない少年と決めつけて放っておくと決めた男性。彼は後に、その選択を激しく後悔することになるのだが、それはまた別の話。
同時刻。
ファストリア王国よりはるか東に位置する大国、「ウォーリス帝国」。
その帝国で一番大きな建物、帝城。
その執務室にて、1人の男が書類仕事をしていた。
そこへ、トントンと部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「おう、入れ」
「失礼します」
ドアを開けて入ってきたのは、上下共に整った服装をした眼鏡をかけた青年だった。
「陛下、ご報告があります」
青年に陛下と呼ばれた男は、ピタッと仕事をする手を止めた。
「いいぞ、言ってみろ」
「ファストリア王国にて、『勇者召喚』が実行されました」
「ほう、そいつは本当か!? ウィルフの奴、やりやがったか!」
ウィルフリッド王をニックネームで呼ぶ男は、青年に質問をした。
「で、『勇者』ってどんな奴なんだ?」
「部下からの報告では、20代の女性が1人と、10代後半の少年少女が24人だそうです」
「多いな! 結構召喚したじゃねぇか!」
「ええ。ただ……」
「ただ?」
「その中の1人が、謁見の間で大暴れした挙句国の外へ飛び出してしまったようです」
「え、マジで!? ウィルフの奴何やってんだよ」
「報告では、その者は自分を『勇者じゃなくて巻き込まれた者だ』と言って騎士と神官を数名薙ぎ倒した後、リエラ・フィアンマというハンターの少女と共に外へ出たとのことです」
「ふーん。なるほどねぇ」
男はしばらく考え込むと、今度は青年が質問する。
「陛下、いかがいたしましょう?」
「その飛び出した奴っていうのも気になるが、まずは勇者とやらに一目会って見ねぇとな。ついでに、ウィルフの様子も見とくか」
男は再び考え込み、「よし」と口を開く。
「今は仕事を片付けなくちゃいけねぇから、三日後にファストリアに行くぞ。そのために、いろいろと準備をしておいてくれ」
「わかりました」
そう言って、青年は男に頭を下げると、執務室を出た。
「さてさて、じゃ、仕事の続きをするか」
そして、男は再び書類仕事を開始した。
(国を飛び出した『巻き込まれた者』……か)
仕事を進めながら男は考えた。
(ちょっと興味はあるな)
男は口元を歪ませて、ニヤリと笑った。
サブタイトルで悩みました。なので、なんとなくイメージで書きました(蠢く者=教会の人達で動き出す者=帝国の人達)。おかしいと感じたらごめんなさい。
というわけで、これで間話はひとまず終わりです。といっても、これからも本編と本編の間に書いて投稿する予定です。
そして、これで物語の第1章にあたる部分はお終いです。次の第2章にあたる部分は、主人公春風君の異世界生活が、本格的にスタートします。




