間話2 残された者達(王族)
お待たせしました。1日遅れの間話第2弾です。
小夜子達がそれぞれの思いに耽る中、ファストリアの王族達はというと、
「ふぅ……」
現在、国王であるウィルフリッドは、寝室のベッドに座っていた。その表情は、疲れの他に色々な感情が混ざり合っている様だった。
そこへ、トントンとドアをノックする音がした。
「陛下、私です」
「ああ、入ってくれ」
ドアを開けて入ってきたのは、ウィルフリッドの妻である王妃マーガレットだった。
マーガレットは部屋に入ると、ウィルフリッドの隣に座った。
「昼間のことを、考えていたのですか?」
「……うむ」
マーガレットの質問に弱々しく答えたウィルフリッドは言葉を続ける。
「『自分らのために戦って死ねなんて言うこいつらが信用できない』」
「それは?」
「あの少年が言った言葉だ」
「……」
「言えなかった」
「?」
「『そんなつもりは無い』と言えなかった」
そう言って、ウィルフリッドは両手をグッと握った。
「情けない。私は、自分が情けない」
ウィルフリッドは悔しそうに言うと、マーガレットはソッとその手に触れた。
「でしたら、もう一度会った時に、ちゃんと言いましょう?」
マーガレットにそう言われて、ウィルフリッドは握った手をほどいた。
「ああ、そうだな」
ウィルフリッドがそう決意すると、マーガレットは穏やかに頷いた。
2人は少しの間見つめ合っていると、マーガレットから口を開いた。
「それにしても……」
「? どうした?」
「彼、ものすごい子でしたね」
「どういう意味だ?」
「あの暴言」
「! ああ、あれか」
その言葉を聞いて、ウィルフリッドは春風から受けた暴言を思い出した。
「あれは……痛かったな」
「ええ、本当に殴られたような感覚でしたわね。ただ……」
「ただ、なんだ?」
恐る恐る問うウィルフリッドに、マーガレットは顔を赤くして、
「ちょっと……感じてしまいましたわ」
と、恥ずかしそうに言った。
「なに!? そうなのか!?」
どうやら王妃様は、目覚めてはいけない「なにか」に目覚めてしまったようだった。
とんでもない答えに驚くウィルフリッド。もしもここで普通だったら、
「おのれ幸村春風、絶対に許さん!!」
と、激しく怒りの炎を燃やすだろう。
だが!
「……じつは、私もなんだ」
「まあ!」
どうやら国王様も目覚めてしまったようだった。
そして、2人はひしっと抱き合った。
ところ変わって、国王の寝室から離れた部屋では、その部屋の主である第2王女のメルフィアナが、
「ハァ……」
と、ため息を吐きながらベッドの中で考え事をしていた。
(あのお方、『春風』っていいましたっけ)
考えていたのは、謁見の間で見た少年、春風のことだった。
(あの戦いぶり、すごかったなぁ)
メルフィアナは、騎士を相手にした春風の戦いを思い出していた。
(それに、すごく綺麗だったなぁ)
その戦い方に、メルフィアナは「美しいもの」を感じていた。
(それに、お父様とお母様を前にしたあの物言い)
そして、その戦いの前に出した春風の3回にわたる暴言を思い出して、
「ちょっと……キュンとなってしまいました」
そう言うと、メルフィアナは頬が熱くなったのを感じた。
どうやら、第2王女様も、目覚めてしまったようだった。
さて、さらにところ変わって、メルフィアナの部屋から少し離れたところにある部屋では、
「おのれ、幸村春風!」
と、部屋の主である第1王女ユリアンナは、1人、春風に怒りを燃やしていた。
「よくもこの私だけでなく、お父様、お母様、メルフィアナにまであんな暴言を! そして騎士や神官達にあんな暴力を! 挙句仲間である勇者様達を置いてここを去るなんて!」
そう叫んで、部屋に置かれた小さなテーブルをバンバン叩きながら怒りをあらわにする。
「絶対に、許せない!」
どうやら、まともなのはユリアンナだけのようだった。
今回は王族達が主役の話をしました。第1王女ユリアンナ以外、目覚めてはいけないものに目覚めてしまった、国王ウィルフリッドと王妃マーガレットと第2王女メルフィアナ。春風はこの事実を知って頭を抱えることになるのですが、それはまた別の話ということで。
というわけで、次回で間話はひとまず終わりです。




