間話1 残された者達(担任&クラスメイト)
この物語を書いて初めての間話です。春風君はお休みです。
遅くなってこんな時間の投稿になってしまい、申し訳ありませんでした。
春風がリエラと共にファストリアを飛び出したその日の夜、担任の高坂小夜子は、現在ウィルフリッドが勇者用に用意した部屋のベッドの上でうつ伏せになっていた。
(……幸村)
小夜子は今日1日に起きた出来事を思い出していた。
今朝は普通に起きて、普通に朝食を食べて、普通に学校に行って、普通に授業をしていた。本当ならその後は普通に仕事をして、同僚と飲みに行って、家に帰ってのんびりして、明日の準備をして寝るハズだった。それが、小夜子にとっての「普通」だった。
だが、昼休みを迎えようとしたその時、その「普通」は終わりを迎えた。
突然教室の床が光ったと思ったら生徒達と一緒にその光に飲み込まれて、気がついたら日本じゃない別の世界のお城の中で、その城の主である国王から、
「今この世界は破滅の危機に瀕している。神に選ばれし『勇者』である其方達の力を貸して欲しい」
なんてことを言われて、そんな馬鹿なと思っていたら本当に自分と生徒達が選ばれし勇者のようで、訳がわからない状態なのに生徒の1人である前原翔輝がやる気になって、それにつられて他の生徒達もやる気になったと思ったら、同じ生徒の1人である幸村春風の突然の豹変からの騎士を相手に大暴れ。終いには突然現れたリエラという少女と一緒に、自分達の下を離れて外へ飛び出した。
(なんなのよ……この状況)
今日一日に起きた一連の出来事に、流石の気の強い小夜子も頭と気持ちの整理が追いつかず、今もこうしてベッドの上で落ち込んでいるという現実。
そんな中で、小夜子の脳裏に浮かんだのは、自分達の下から去った春風の後ろ姿だった。
「幸村……一体、どうして?」
ボソリと春風の名を呟く小夜子。その問いに答えられる者は、残念ながら誰もいなかった。
一方、小夜子の部屋から少し離れた部屋では、勇者の1人である桜庭水音が、ベッドの上で体育座りをしていた。
(春風……)
1人、春風のことを考えて塞ぎ込む水音。
その時、トントンと部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「……はい」
「水音、今いいかな?」
ドアの向こうから聞こえたのは、双子の姉である流水の声だった。
「うん。いいよ」
水音がそう返事すると、ガチャリとドアが開いて流水が部屋の中に入ってきた。
「……流水」
「隣、座っていい?」
「……うん」
そう言われると、流水はベッドの上に乗り、水音の横に体育座りをする。
「春風のこと、考えてたの?」
流水にそう聞かれると、水音は弱々しく、
「……うん」
と返事した。
しばらくの間沈黙していると、今度は水音が口を開いた。
「……流水」
「なあに?」
「今日の春風なんだけどさ……」
「うん」
「似ていたよね。2年前の、『あの時』に」
「……うん。似ていたね」
「……また、置いていかれたね」
「……そうだね」
「また、何も出来なかったね」
「……そう……だね」
再び沈黙。
「悔しいよ」
そう呟く水音の声は、とても震えていた。
流水がチラリと水音の横顔をみると、その顔は涙で濡れていた。
流水は何も言わずに、そっと水音を抱き寄せた。
さらに一方、
「くそ、くそ、くそぉっ!!」
水音の部屋から遠く離れた部屋の中で、同じく勇者の1人である前原翔輝が、部屋に備えられた机をバンバンと乱暴に叩いていた。
「幸村の奴ぅ、幸村の奴ぅっ!!」
そう叫ぶ翔輝の脳裏に浮かんだのは、昼間の謁見の間での春風だった。
春風が大暴れしてファストリアを飛び出したのには理由があるのだが、それを知らない翔輝にとって、春風がやったことは自分達に対する「裏切り」だった。
「許さない、絶対に許さないぞっ! あの裏切り者めぇ!!」
翔輝は強い恨みと憎しみを込めて、どこにいるのかわからない春風を罵った。
またさらに一方、女子のために用意された部屋の一室にて、同じく勇者の1人である少女が、窓の外に広がる星空を眺めながら椅子に座っていた。
「……」
少女は無言で着ている学生服の胸ポケットから、自分の生徒手帳を取り出すと、そこから1枚の写真を抜き取った。
そこに写っていたのは、小学生の時の自分と、同じく小学生の時の春風だった。
少女はその写真を見て、1人、涙を流した。ぽたぽたと、写真に涙が落ちた音がした。
そして、写真を見ながら、少女は呟く。
「……会いたいよ、フーちゃん」
少女は写真をそっと口もとに寄せた。
というわけで、今回は召喚された勇者達(担任&クラスメイト達)のお話となりました。最後に登場した少女の名前は、本編もしくは間話で明かす予定ですので、それまで楽しみにしていてください。
次回、2本目の間話です。




