表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣使う美少女(脳筋)が相棒です  作者: 東雲 立風
Chapter 9 -Dream to see on The Eve 《戦前夜に歌響く》-
163/188

131

 「はあはあはあ……」


 何もない空間に青が一色無残に残る。

 誇るまでもなく、ここには立つは己だけ。

 猛々(たけだけ)しい心でシンクロの波を起こす。

 荒れた呼吸が風に乗る。

 

 「————上手くいかんのう」


 視界が一瞬だけシルバーアウト。

 アウトローではなく頼れる最強の友からの声。

 銀に染まった姿色合い、立つのは俺だけだが内面にはレネの存在がある。

 見かねて然りて現実に降臨する。

 

 「レネ……」

 「同調ではないのではないか?」

 「……」

 「これだけやって進展無し。新たな能力、そういう見解が正しいやもしれんぞ」

 

 もちろん魔風や魔法、神力の鍛錬はしている。

 ただメインで、ここ最近最も注力するのが同調。

 しかし結果は何一つも出ない。

 ここまで黙っていたレネも、流石に違うのではないかと説いてくる。


 「早めに見切りをつけるのも手じゃ」

 「……」

 「なにせ確証はないのだろ?」

 「……まあな」

 

 ホントに根拠は存在せず。

 温故(おんこ)御衣(おんぞ)のように被りっぱなし。

 そこをまるで蜻蛉切(とんぼきり)の鋭さ、レネが諭す。

 つまるところ、これ以上は無駄であると。

 進化ではなく、新たなものだと見込み開拓に移れと。


 「だけど、やっぱり俺は同調に懸けるよ」

 「理由を聞こうか」

 「訳なんて無い。ただ感覚はコレだって言ってる」

 「……戦神の経験からすれば無しじゃ」

 「分が悪い賭けだってことは分かってるさ」

 「はあ、大人しく言うこと聞いとけば良いものを……」


 溜息つかれるのも理解している。

 それに戦いの分野において、俺なんかよりレネの勘の方が信用に足るとも。

 ただ今回ばかりは自分自身、信用できないからこそ信用する。

 ここでブレたら己を鑑みる日は永久に来ない。

 

 「まあ、もう少し時間をくれ」

 「……相分かった。見守るとしようかのう」

 

 そう言ってレネは姿を幻だったかのように消していく。

 幾年も幾戦もの経験を蹴って、今を貫き通す。

 かるまは背負ってる、真っ暗な箱に鍵穴を開けて見せる。

 

 「————同調シンクロ


 300年以上も前の人物、チャールズ・ダーウィンは言った。

 最後の最後に生き残るのは、力ある者でも、賢い者でも無い。

 それは、変化出来る者である。

 俺は変幻、全ての道は自身に通ず。

 














 「極炎魔法!」

 「強化ミラータ!」


 この身に迫る巨大な炎の槍群。

 聖剣を強化、身体を強化、神経を強化。

 効果はどうか、魔女王を後悔させるぐらいフルパワーで。


 「ここから……!」

 「でたらめすぎるわよ!」

 「私にはこれぐらいしか取柄が無いのです!」


 迫りくる、廻り廻る魔弾を打破。 

 、剣一本で弾く。

 それが無理なら身体で、ある程度痛みはあるが気合で持ちこたえる。

 耐えて耐えて、至近距離で打ち込む重い一撃を。

 速さと腕力だけが生み出す王道スタイル。


 「唸れ聖剣(カリヴァーン)!」

 「ちょっと本気出すわ! 天獄魔法!」

 

 白と黒の破壊が接近、魔女王もだいぶ力をぶつけてくれる。

 ユウが相手にしてくれないからこその模擬戦。

 しかしその実、学ぶことは多い。

 なにせこの人は、こんなに強い人がいるのだから。

 

 「真向から勝負!」


 もはや魔女王相手に手加減は必要なし。

 周りも空間魔法とやらのお陰で配慮はしなくても。

 長く続いた手探りから脱却、勝負をかける。

 本能察知、本領発揮、筋肉にハッキングされる脳ミソ。

 全身に駆け巡る力の血液、考えることは捨て動きだけに集中する。

 

 「開闢強化(カルマ・ミラータ)!」


 剣と魔法が衝突。

 ただ流石の威力、ならもっと強くなればいいだけの話。

 こんなにシンプル、剣をこれ以上に強く振れば、敵は倒せる。

 

 「私は、最強、だ!」

 

 実際はエレネーガ様やゼウス様といった、私より強い存在はいる。

 だが口に出さねば始まらない。

 魔法に焼かれ火の車、フルスロットルのハイスピードバトル。

 重い重い魔法、踏んばって踏ん張って一点突破する。

  

 (穴が開いた! ここだ————!)


 全てを弾けず、身体に被弾するものの、この波の中に活路を見出す。

 リスクはどうでも良い、勝てば問題ない。

 そして私は————


 「原初魔法、乖離世界」

 「っ!」

 「まだ負けるわけにはいかない」

 「強化……!」

 「無駄よ」


 魔女王にもう少しの所まで迫るが、届かず。

 この剣、この身体は何かに阻まれる。

 勢い封殺、むしろカウンターの倍倍返し、阻まれてそのまま失墜。

  

 (っ受け身をとらないと————)


 ただあまりの衝撃に身体が緊張。

 思考判断とかではなく、肉体にとっての壁が行動を鈍らせる。

 意外とヤバい、そう思ったときには時すでに遅し。

 きっと骨が折れるだろう、ただ落下地点眼目にして、私は飛んだ。


 「っへ?」

 「転移魔法よ。怪我を治すのも面倒だから」

 「はあ、完敗ですね」

 「ふふ、貴方もなかなかだったわよ」

 

 完全敗北、首を救われてはこれ以上の足掻きはみっともない。

 潔く負けを受け入れよう。

 

 「というか動きが荒すぎる」

 「私ですか?」

 「貴方以外誰がいるのよ」

 「それもそうか……」


 そこからは戦った感想、アドバイスを幾つも貰う。

 ただ私のスタイル、そしてユウの立ち位置を理解した上でのだ。


 「支援をユウに全任せするのはいいけど、前衛の貴方が————」

 「た、確かに————」

 

 私でも分かりやすい説明。

 魔女王は何も魔法だけでなく、戦術においても優れていると分かる。

 ユウは良い師を持った、羨ましいぐらいだ。


 (ただ魔女王曰く、弟子はユウだけだそうだし)


 自分を師匠と呼ばせるのもユウだけらしい。

 まあそこまで頑なに断られたら致し方ない。

 これでも大事なところは抑えているつもり、人として最低限度は心得ている。


 「だけど、このままだと裁定者に勝てない」

 「勝てない……」

 「ユウも頑張っていることだし、貴方も新たな道を見つけるべきなのかも」


 反芻はんすう、珍しく頭を使う。

 ようは新たな決め手を、必殺技を編み出せと。

 

 「私の新たな道、か————」















 「————あれ?」

 

 ここは国連本部が観測室。

 世界に起こるあらゆる事象を観測する所である。

 今では国連の裁定者対策委員会が設置され、その力を一点に集中する現状となってはいるが。

 世界最高峰、各国のプロがその手腕を振るっている。


 「どうしたよ?」

 「なんか太平洋上に一瞬、本当に一瞬だけ複数の熱源を捉えたんだが……」

 「魔族か?」

 「分からない。すぐに消えちまったからな」

 

 長く積んだ経験の眼でも瞬間しか見えなかった。

 ただ確かに機材は感知し、そして己が瞳も捉えた。


 「座標は?」

 「ポイントは前回現れた裁定者のすぐ近くだ」

 「そりゃ……」

 「偶然って割り切るのは危険、そう思わないか?」


 この1人の観測員以外は異常を察知しなかった。

 だが経験と感覚が、黄色い信号を発信。

 そのまま捨ててはダメ、嫌な予感がすると感じている。


 「一応報告はしようと思う」

 「それが良いな。あとその付近は、アメリカの艦隊が警戒にあたっているらしいし……」

 「あわよくば現地で調べてもらえるかもな」

 

 変幻が人間サイドに銀神と魔女王を引き込んでから、人類には様々な進展があった。

 知り得なかった相手の情報が開示、戦略が進展していく。

 それと同時に大きな絶望を与えたのも事実だが。

 兎にも角にも、裁定者の出現ポイントは変わらない。

 そう踏んで、国連主導の精鋭艦隊がある程度の距離を保って警戒にあたっている。


 「とりあえず後でデータを見直してみるかね————」


 何もないことを願うばかり。

 はかりに疑問、これは正しく働いているのか、測っているのか。

 何とも言えない静かな緊張感。

 糸は張りすぎず伸ばしすぎず、ただ危うさを伝播した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ