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2,0 時間が止まる場所 Relativity・起


 あたしの地元って高校から電車で一時間ほど行った田舎町なんです。

 これは、あたしが地元の小学校に通ってた頃に体験した不思議な出来事のお話になります。


 突然だけど田舎ってさ、()()()つきだとか、所謂(いわゆる)”入ってはいけない場所みたい”なの、アルアルじゃないですか?

 ないか。

 でもコレって田舎アルアルなんです、個人的に。誰も同意してくれないケド。

 話がそれた。とにかくあたしの地元ではそーゆー場所が確かにあって、神社の裏山には誰も入ってはいけないと子どものころからキツーく言い聞かされてたんです。

 山の奥に進んだら、迷って出てこられなくなってしまうから、って。


 だけどさ。

 子どもって、「行くな」って言われたら逆に行く、みたいな生き物じゃないですか? だからあたしも、友だちを誘ってそこに行くことにしたんです。

 裏山に踏み入って、深くなる森林をかき分けるように前進しました。

 探検隊、レッツゴーって感じ。

 ちょっとしたひと夏の冒険って気持ちで、遭難するんじゃないかって危機感なんてハナからなくて。そうなんです、って感じ。

 脚が不思議と軽くて、あたしたちはどんどん奥へ踏み入っていました。

 友だちは「疲れたー」とか「暗いよー怖いよー」とか文句を言い始めたんですけど、ナニかに導かれてたみたいにその時のあたしはただひたすら奥へ進むことにこだわってた気がします。

 そのうち、当然だけどケンカになっちゃって、友だちは先に下山しちゃいました。


 それから独りで夜まで歩き続けたあたし。

 もう意地になっちゃってたんだろうね。だけど子どもだし、どこ進んでるかなんて全然わからなくて、でも何故か「迷った」なんてさらさら思ってなくて。

 何かに導かれる感覚にまかせて進んでたら、いつの間にか到着していたのです。


 ()()()()()


 そこは、木々が育ちすぎて日が当たらず足元の草木が育たなくなった深林にあって、なぜだかそこだけが背の高い草にビッシリと覆われた地面でした。

 背の高い草が生える地点の周囲を取り囲むように伸びた五本の大木があって、それらを結ぶしめ縄のようなモノがあって。

 よくわからないけど、五角形に囲われていたんです。

 あたしは何も疑問を抱かず、胴体くらいの高さのしめ縄の下をくぐって中に入っていきました。


 次の瞬間、誰かに腕を掴まれたました。

 止められた? ビクッと体が跳ねて、振り返るとそこには両親が立っていました。

 すごい剣幕てお父さんがあたしをしめ縄の外に引っ張り出したのです。

 周りにはいつのまにか、両親だけじゃなくて地元の大人たちが大集合していました。

 先に下山したハズの友だちもいました。なぜだかワンワン泣いてたっけ。


「勝手にいなくなって、心配したんだぞ!」


 震える声とともに、お父さんが私を抱きしめました。

 何言ってんだろう。なんでそんなに長いこと、あたしが遭難してたみたいな反応するんだろう? 大人たちの態度に、あたしの頭には大量の疑問符が浮かぶだけ。

 どういう状況かわからず、なんとなく空を見上げると、いつの間にか日が昇っていることに気づきました。

 その時、やっとあたしは気づいたんです。

 山をさまよっているうちに夜が明けてたんだって。あたしは遭難者として探されてたんだって。

 だけどあたしのそんな理解すら、()()()()()()()んです。


「本当に……()()もどこに隠れてたんだか!」

「え?」


 三日? あたしはお父さんの言葉に耳を疑いました。


「三日? 一晩じゃなくて?」

「何言ってるんだ。三日前に家を抜け出してからずっと山の中にいたんだろ?」

「お父さん、何いってんの? あたしは今ここに来たばっかだよ……?」


 あたしとお父さんの話は全く噛み合わないまま、結局あたしは大人たちに連れられて無事に下山しました。

 後になってわかったんだけど、あたしと友だちが出発してからホントに三日も経ってたんだって。友だちは先に下山してから、戻ってこないあたしを心配して大人たちに相談。

 そこから捜索隊が結成され、三日間の決死の捜索の末にあたしが発見されたというのが顛末らしいです。

 発見された時のあたしは、しめ縄の内側でボーっと立ってたらしいです。

 お父さんが腕を掴んでしめ縄の外まで引っ張ると、とたんにパッと目覚めたように動き出したんだとか。


 あれから10年は経ったんだっけ? 経ってないかも。どっちでもいいや。

 とにかくそれからは特に健康に問題もなく、フツーに学校生活やらしてもらってます! だけど時々あの不思議な体験が気になっちゃって、地元の大人たちや神社の神主さんに、例の”しめ縄に囲まれた場所”のことを聞いたんだけどみんな口をそろえて「何もない」ってさ。

 はぐらかしてるとかひた隠しにしてるとか、そんな様子も全然なくて、ホントにうちの村……あっ、村って言っちゃった。とにかく村には「神隠し」みたいな怪しい伝説とか言い伝えはないんです。

 「神社の裏山に入ってはいけない」という村の教えは、単に遭難しやすいからダメだよって、それだけの意味だったみたいです。


 だったら、あたしのあの体験は何だったの?

 あたしにとって一瞬だったあの時間が、他の人たちにとっては三日間だった。

 あの場所だけ、時間が止まってたとしか思えません。

 とっても、とぉーっても気になります!

 お二人は、こーゆー謎に詳しいと聞きました。

 どうかこの謎を解き明かして、あたしをスッキリさせてください。




   件名:時間が止まる場所

   投稿者:マナカ♡



 P.S. お礼は食券3枚で♡

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