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【書籍化&コミカライズ】悪役令嬢なので、溺愛なんていりません!  作者: 美依
第三章

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 改めて訊かなくても察してはいるはずだ。

 軽やかな吐息をアレクシアはこぼす。隠す必要もない。


「もちろん兄ですわ」


 最高のファンサまでもらったのだから当然だ。

 他に、この機会に応援していますと伝えたい人もいない。


 だいたい義理チョコならぬ義理薔薇であろうとも、レイモンド以外にアレクシアが渡せば不幸の薔薇になる予感がする。祝福とは真逆だ。


「お兄様なのですね」


 落胆をわずかに滲ませるジェイニーは、違う人の名を期待していたらしい。なぜ? と思いながら、アレクシアは話題をさっと順位予想へと変えた。


「全員の順位を予想するって難しいですよね」


 用紙を眺め、アリアーナが軽く眉尻を下げる。確かに、三位以下が難しい。


 そのせいか、オッズがどこからともなく出回っている。こういうところは世界が違っても変わらない。一部の生徒がこっそり賭けをしている可能性もあるが、アレクシアには関係ないことだ。


 三人で雑談を交え話し合い、順位予想の紙を埋めていく。

 書き終えると、投票に行くのにいい頃合いになっていた。


 大講堂で待ち合わせることにして、アレクシアは二人と別れる。白い薔薇を手にレイモンドの待つ場所へと向かい、ふと不安がよぎった。


 さりげなく、周囲に視線を走らせる。


(まさかまたヒロインと遭遇とか……さすがにないか)


 渡す相手が違うだろうから、会うことはないはずだ。

 それでもつい警戒してしまったが、待ち合わせ場所に現れたアレクシアの姿を見た途端大げさに喜ぶレイモンドへ薔薇を渡し、その後も誰かに絡まれることなく大講堂にたどり着く。


 先ほど別れた二人と合流するとほっとした。

 残すところ、どきどきわくわくの結果発表だ。


 予定していた時間ぴったりに、仮面をつけた司会がステージに現れる。挨拶から始まり、生徒たちの期待を煽り、再び候補者がステージに並んだ時には講堂内は盛り上がっていた。


 司会を務める生徒会役員は、普段は物静かで控えめな性格なのにうまく回している。こんな才能があったのかとアレクシアは感心したが、最下位で予想していたヘルベルトがまさかの七位だった。


 売約済みであろうと関係ないらしい。

 貴族社会の忖度があった可能性もある。そこを見誤ったのが敗因だった。


(軽い気持ちだったのになんか悔しい!)


 同じように一喜一憂し、固唾を呑んで次の発表を待つ姿があちらこちらで見られる。早々の脱落にアレクシアは落胆したが、レイモンドの名がまだ呼ばれていなかった。


 気を取り直してステージを注視すると、渋々付き合っている感が強いルイジが呼ばれる。よく知らない人にはクールなインテリ眼鏡に見えるが、くだらない行事など早く終わってほしいと顔に書いてあった。


 続いて、ステファノが呼ばれる。紹介の時と同じく、ルイジと対照的に愛想の良い笑顔を浮かべた。


「薔薇、いっぱいありがとう!」


 はしゃぐ女生徒の声から、ステファノに対する好感度が上がったのがわかる。親しみやすさから、今後人気が出そうだった。


「さて、結果発表も残すところあとわずかですね。皆様の予想は当たっていたのでしょうか? 注目の第三位は――レイモンド・ロシェット公爵令息」


 シスコンは周知の事実なのに、公爵家嫡男の肩書きが強いのか、紹介の時の台詞が効いたのか、驚きの三位だ。


(お兄様すごい)


 アレクシアは盛大に拍手を贈る。やはりペンライトが欲しい。全力で振りたい。

 そんな気持ちに応えるかのように、レイモンドが笑んだ。


 当然女生徒の歓声が大きくなる。私のお兄様だから! とアレクシアは鼻を高くしたが、こりごりしたばかりの縁談話が家に殺到しそうだ。


「緊張の瞬間が近づいてまいりました。いよいよ二位、そして一位の発表となります。多くの薔薇を手にした貴公子には、皆様が染めた祝福の花びらが降り注ぎますのでどうぞご注目ください」


 司会に促され並び立つのは、大方の予想通りにジェフリーとイアンだ。

 表情も態度も正反対ではあるが、二人が並んでいるだけで目の保養になる。予想はすでに外していて、アレクシアにはもうどんな結果も関係ないのに周囲の雰囲気もあってか、どきどきしていた。


「それでは、一番多く花が贈られたのは――」


 司会が言葉を切り、期待を煽る。策略通りに、アレクシアは固唾を呑んだ。


 パチッと指を鳴らした合図で、薔薇の花びらが舞い、ステージに降り注ぐ。

 色は白、そして黒、二色だった。


「なんと同数でした!」


 わああ、と場が盛り上がる。アレクシアも驚いた。

 順位に仕込みはない。本当に同数のはずだ。


 にこやかなジェフリーと、相変わらず表情を変えないイアンとの対比がすごい。


「これ、アレクシア様がお兄様へ薔薇を渡さなければ違う結果だったかもしれませんね」

「あ、そうかもしれませんね」


 ジェイニーの呟きに、アリアーナが同意する。確かに兄へ渡したのはアレクシアだけであり、家族は駄目だと規定があればその可能性が――と考えて気づく。


 トップ二人のどちらかに薔薇を渡さなければ、その仮定は成立しない。


「違う方へ渡しても、結果は変わらなかったかもしれませんわよ?」


 アレクシアの主張は、緩い笑みで流される。ジェイニーの中では元彼今彼の扱いになっていそうなのだが、はっきり言われていないせいで否定できなかった。


 もどかしさはあるが、アレクシアは目を背けることにする。結果として、同票一位で盛り上がる最高の結果だった。

 

 ただこの順位予想は困難を極める。正解者はいないかもしれないが、集計にアレクシアは関与しない。


 無事に花の祝祭日の行事が開催され、フィナーレを迎えたのでお役御免だ。


 今夜は家族で花の祝祭日を祝い、その後フェルナンドの食事に付き合いながらご褒美スイーツを堪能しようとアレクシアは決める。王家から届いた品はまだ残っていた。


 振り返って見ると、すっかり食いしん坊の思考だ。


 今後は美味しいスイーツに釣られる魚にならないように気をつけようと、アレクシアは心に決めた。


三章おしまいです。

残り一章、お付き合いよろしくお願いいたします。

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